2015年8月28日7:24
NTTドコモが採用した「NNL S3 Authentication Suite」とは?
パスワードが不要なオンライン認証のための技術仕様の標準化を提唱する非営利団体「FIDO Alliance」の創設メンバーでもある米国・Nok Nok Labsが日本でのビジネスを開始した。国内ではNTTドコモがFIDOを使用したサービスを発表しており、同社のオンライン認証システム「NNL S3 Authentication Suite」を採用している。
NNLは、FIDO Allianceの創設メンバー6社のうちの1社
FIDOには決済関連企業も多数参加
NNLは2015年8月27日、日本オフィスを設立。同社はFIDO Allianceの創設メンバー6社のうちの1社であり、モバイル・アプリケーションやウェブ・アプリケーションに対し、組織が強力なFIDOベースの認証インフラを導入することを支援している。現在、FIDOアライアンスには、NTTドコモ、サムソン、Lenovoに加え、PayPal、AliPay、Visa、MasterCard、Discoverなど、210社以上のメンバーを有している。FIDOでは2014年12月から、技術仕様1.0を公開。すでに数多くの適合製品が発表されている。
FIDO は、パスワードレス認証の「 UAF(Universal Authentication Framework )」、パスワード補完型認証の「U2F Standard(Universal Second Factor )」の2つのプロトコルがある。プロトコル、実装の標準化により、認証手段を追加することにより、セキュアな認証の装備が可能となり、現在は採用や導入のフェーズに入っているそうだ。
Nok Nok Labs 社長兼CEO フィリップ・ダンケルバーガー氏によると、FIDOの仕様は、ユーザーの使い勝手を改善することができるように設計されているという。また、より自然な形で強固な認証を実現可能だ。さらに、音声認識やセキュアなPINの入力のように、使い慣れている形でのやり取りが可能だ。企業にとっても、セキュリティの強化に加え、エコシステムの標準化により、コストを削減できるという。
Nok Nok Labsが日本に参入した理由としては、スマートフォンの普及率が高く、ユーザーの要求要件も高いことが挙げられる。さらに、日本ではいち早く新技術を採用する傾向にあるため、マッチしたそうだ。
海外ではPayPalとAlipayで採用
認証強化をデバイス、サーバ双方のアプローチで実現
海外では、PayPalとAlipayの決済会社で採用。両社ではインターネット決済の認証の仕組みにNNLの技術を利用しているそうだ。また、2015年5月には、NTTドコモがFIDO Allianceへの参加を発表したが、同社は「NNL S3 Authentication Suite」を採用している。NTTドコモでは、5月27日から、dゲーム、dミュージック、dブック、dデリバリー、ドコモのペット保険など、ドコモのサービスにおいて、docomo IDやspモード パスワードの入力に加え、指紋や虹彩などの生体情報を利用したログインや決済ができるようになった。また、富士通のARROWS NX F-04G、SamsungのGalaxy S6 SC-05G/S6 edge SC-04G、シャープのAQUOS ZETA SH-03Gの4機種がFIDOの仕様に対応している。
すでに、スマートフォンには、顔認識、指紋認証、生体認証など、パスワードによる認証に代わるような機能が備わっている。NNLはユーザーが普段使用しているデバイスに搭載されている機能など、既存のセキュリティ機能を利用したクライアントおよびサーバ・ソリューションを提供しており、どのようなアプリケーションに対しても、ユーザーが対応しやすい強力な認証環境の実現を支援しているそうだ。また、プロトコルが統一されているため、将来実現する可能性のある新たな認証方式にも対応できるとしている。
NNLでは、デバイスでユーザーの認証を行うステップ、それに成功したらサーバで認証を行う2ステップに分けている。デバイスでユーザーを認証し、認証成功時にアプリケーション用の秘密鍵を作り出す。サーバに対する認証でデバイスが秘密鍵を使用して認証を行い、ユーザーがきちんとアクセスしているかを確認する。
Nok Nok Labs 事業開発ディレクター 宮園充氏は、パスワード不要の認証システムを実現する「NNL S3 Authentication Suite」を利用することにより、FIDOプロトコルに簡単に対応できるとした。また、ユーザーにサービスを提供している企業にサーバ用のSDK「Nok Nok Authenticator SDK」やアプリのSDK「Nok Nok App SDK」を提供している。
NNLでは、東京に拠点を置くことによって、日本企業からのニーズに応えると同時に、FIDOベースの認証ソリューションの導入を加速できると期待する。すでにNTTドコモでの採用は発表されているが、他のキャリア、決済業界などへの展開も含め、戦略はこれから詰めていくそうだ。
「NNL S3 Authentication Suite」の提供価格は、スマートフォンを利用する1ユーザー25セント以下となる。ただ、大きな案件になると1億人が利用するケースもあり、その場合、ボリュームディスカウントがあるという(2~3年の契約期間)。また、特定の企業が社員用に使用する場合、20~25ドル程度となっている。さらに、OEMの場合は、別の価格形態で提供するそうだ。