2015年11月2日8:30
ジェーシービーおよびジェーシービーインターナショナルは、2015年10月21日、22日の2日間、インドネシアのバリ島にて、「第14回JCB世界大会」を開催した。同会議の目的は、「ビジネスパートナーとJCBブランド戦略を共有」、「ビジネスパートナーとの関係強化」となった。同会議では、「世界の決済市場における大きな流れ」について、ジェーシービー 代表取締役兼執行役員社長 浜川一郎氏が講演した。
世界の決済の成長の核となるアジア
近年、決済の世界では、大きな変化が起こりつつある。大きな潮流として、1つが市場の拡大とリージョナルプレイヤーに台頭、もう1つが技術進化と新たなプレイヤーの参入が挙げられる。
世界の経済は必ずしも好調とは言えないが、カード決済市場は着実に成長している。世界のペイメントカードの取扱高はこの4年間で2倍に拡大し、24兆ドルの規模となっている。そして、その成長の核となる地域がアジアとなる。主要なアジア18カ国の総人口は37億となり、中国とインドはもちろん、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンといった国も1億人以上の人口を抱えている。アジアの総人口は2020年には39億人に達すると予想されており、さらに魅力的であるのは、これらの国々の多くは若い世代が多いことだ。インド、インドネシア、ベトナム、マレーシアでは総人口の3割は14歳以下で、65歳以上の人口は6%に過ぎない。フィリピンやバングラデシュでは子供の人口比率がさらに高くなっている。今後も経済成長に伴い、こうした若い層が各国の消費拡大の原動力なるだろう。さらに、東南アジア・西アジアの多くでは、クレジットカードの普及率は成人一人当たりに対し1枚以下であり、カード決済市場の拡大余地が大きい。
この事実に加え、eコマースや海外旅行の市場についても急激な成長がみられる。グローバルなeコマースの市場規模は2014年で1兆5,000億ドルとなっており、2020年までに約2倍のマーケットに成長すると予測されている。なかでもアジアの成長は顕著で、年率25%で成長し、他の地域を大きく上回ると見込まれている。アジア・太平洋地域を出国地とする海外旅行者数はこの4年間で世界平均の19%を大きく上回る30%の増加率となった。2020年には39億人の人口を抱えるアジアでは、若年層が多く、旅行やインターネットショッピングに興味のある層が多いため、JCBやそのパートナーのビジネスの成長はさらに期待できる。
インド、ミャンマー、ロシアなどのリージョナルプレイヤーとWin-Winの関係構築
ローカルな決済スキームを構築する流れが、さまざまな国や地域で起こっているのも重要な動きとなる。決済は国の経済活動における重要なインフラであり、自国の決済は海外資本のスキームに依存せず、自国のコントロールに置くべきという考えは、経済的な利益と安全保障の観点から当然と言えるだろう。近年、インドのNational Payments Corporation of India(NPCI)、ロシアのRussian Natioanl Payment Card System(NCPS)、ミャンマーのMyanmar Payment Union(MPU)など、各国の当局や中央銀行がイニシアティブを取り、独自の決済スキームを構築しているが、同様の動きは国や地域を問わず拡大するとみられる。この動きに対して、JCBはそれぞれのパートナーによるコントロールを最大限尊重しながら、グローバルアクセプタンスや技術ソリューションを提供し、ウィン・ウィン(Win-Win)の関係を柔軟に構築している。こうした取り組みはインド、ミャンマーなどでパートナーシップとして結実し、着実に実績を積み重ねている。最近ではロシアでもこうした実績を積んできた。
テクノロジの進化の中心的役割となるスマートフォン
グローバルなマーケットに関する決済のテクノロジの進化として、クレジットカードは100年を超える歴史があるが、近年の情報通信技術の発展は、その長い歴史で初めてといっていいほどの本質的な変化をもたらしている。そこで、中心的な役割を果たしているのはスマートフォンなどのモバイルデバイスとなる。スマートフォンがもたらす変化として、1つはプラスチックから決済の媒体が変わること、もう1つはオムニチャネル・リテイリングやCLO(Card Linked Offer)といった、新しいコマースやマーケティング手法が登場していることだ。スマートフォンの普及は今後も着実に進むと見込まれ、それに伴い各国で消費と決済の在り方に大きな影響を及ぼしていくと思われる。
中でもNFC(Near Field Communication)技術を活用した、スマートフォンによるモバイル決済は大きく動き出している。昨年「Apple Pay」がスタートし、「Android Pay」や「Samsung Pay」も米国で開始されたことで、今後非接触IC決済は拡大すると思われる。また、一昨年、米国などで発生した大規模なカード情報流出事件は、加盟店やカード会員のセキュリティ意識を高める契機となったが、モバイル決済におけるトークナイゼーション(Tokenization)はこの問題に対する有効な解決手段だという認識が広がりつつあり、今後着実に普及していくと思われる。
決済時における本人認証技術も進化している。従来の店頭でのサインや暗証番号、PINによる認証に加え、モバイルデバイス上でのパスワードや生体情報を使った決済が実用段階に入っている。これらはスマートデバイスが急激に進化するICT(Information and Communication Technology)を決済環境で即座に容易に実現させていく事例となっている。これからも引き続き、同分野において技術革新がなされていくと思われる。