2015年11月4日8:30
ジェーシービー(JCB)は日本のカード会社で唯一の国際ペイメントブランドとなる。「第14回JCB世界大会」では、加盟店網と会員基盤が拡大するJCBの国際事業戦略について、 ジェーシービー・インターナショナルの代表取締役社長 三宮 維光氏(兼ジェーシービー取締役兼常務執行役員)が講演した。
海外の加盟店は2,000万店を突破
アジアを中心に海外会員も2,000万に到達
JCBの海外での加盟店ネットワークは順調に拡大し、日本を除いて2,000万店を突破した。地域有力プレイヤーとの提携により、2010年比で+80%増となった。会員もアジアを中心にカード発行が拡大し、日本を除く会員数は2,000万を突破し、2016年度末には3,000万会員の到達が見えてきた。「第14回JCB世界大会」が開催されたインドネシアでも6行の大手銀行、2社のATMネットワーク事業者と提携している。
JCBでは、国や地域ごとにアライアンスモデル、ライセンスモデルという複数のビジネスモデルを組み合わせて事業拡大に取り組んでいる。アライアンスモデルの拡大としては、2013年のミャンマーのMyanmar Payment Union(MPU)との提携に続き、2014年12月にパキスタン最大の決済会社である1LINK(Guarantee)Limited(ワンリンク)のメンバー銀行であるBank of Khyber(BOK)と、JCBデビットカードの発行を開始した。また、インドの国内決済ネットワーク運営会社であるNational Payments Corporation of India(NPCI)とは、今年契約に至り、2016年にはデビットカード、2017年以降にクレジットカードの発行を予定している。モンゴルでは国内決済ネットワークを有する中央銀行のBank of Mongolia(BOM)との提携により、モンゴル国内専用カードである「T-card」との一体型カードの発行がスタートする。
ライセンスモデルの展開においてもバングラデシュ、ロシアなど、新たな市場での事業拡大が加速している。また、アジア以外でも欧州では、オーストリアのカード会社、card complete Service Bank AG(カードコンプリート)と契約し、クレジットカード発行を開始した。これは高付加価値サービスを付帯したユニークなカードとなる。また、今年終わりにはドイツでもプリペイドカードの発行を開始する予定だ。
このように、JCBのネットワークは順調に規模を拡大している。過去の「JCB世界大会」で、「2020年にJCBはアジアでVisaやMasterCardと肩を並べる存在を目指す」と発表したが、一つ一つ実績を積み重ねている状況だ。
国内独自決済システム構築が活発化
国際ブランド、イシュア、アクワイアラの経験を活かしトータルサポート
今後、2020年までの5年間の取り組みとして、まず『ネットワーク戦略』が挙げられる。新興国の経済成長を1つの契機として、決済システムの国際汎用性のニーズが高まりつつある。従来は国際決済ネットワークとの提携だったが、もう1つの流れとして国内独自決済スキーム構築の動きが活発している。これは、“自国内の取り引きは自国のブランドで完結させるべき”というポリシーによるものだが、このニーズに対してはグローバルに統一的なポリシーのもと運営されているカードネットワークとの提携は必ずしも良いものではない。この点においてJCBとの提携は実績が示すように最も優れたソリューションとなっている。加えて、JCBはEMVCoの出資メンバーとして培った決済の経験と深い知識がある。セキュリティの観点は、モバイルや非接触決済の利便性においても、自国ブランド内取引においても重要になってきている。JCBはブランドとしてのみならず、イシュア(カード発行会社)、アクワイアラ(加盟店開拓)としての経験を踏まえたトータルなサポートが可能だ。提携ポリシー面での柔軟性に加え、技術面でのノウハウを合わせて提供することで、アライアンス先のニーズに応え、共にネットワークの拡大を図っていきたいと考えている。
JCBならではの価値の創造を目指す
トップレベル ドメイン「.jcb」による発信力強化へ
『プロモーション戦略』としては、会員の着地地点での価値を如何につくるか、その価値をどうつなぎ、どう伝えるかが重要であるが、空港ラウンジ、世界60カ所で海外旅行をサポートする「JCBプラザ」など、JCBならではの価値を積み重ねてきた。
例えば、「第14回JCB世界大会」が行われたバリ島の「グランド ハイアット バリ」に隣接する商業施設「バリ・コネクション」では、さまざまな優待プロモーションを目にできる。
また、トップレベルドメイン「.jcb」については、申請・承認などのプロセスに想定以上の時間がかかったが、今後誰にでもたどり着きやすいトップレベルドメインを使ったウェブサイトを活用し、発信力を高めていきたい。
ウェブサイトに加え、日本については、英語、韓国語、中国語に対応した「JCB Japan Guide」というスマートフォンアプリケーションを用意しており、好評を得ているため、他の地域での展開も検討していく方針だ。
JCBの価値をどう伝えるかについては、PULL(プル)からPUSH(プッシュ)への展開も力を入れている。グアムでは新たな試みとして加盟店にWi-FiとBeaconを整備し、Wi-Fiへの自動接続機能とクーポンをリアルタイムにプッシュ通知する機能を有する渡航者向けアプリケーション「JCBお得クーポングアム」をスタートした。「第14回JCB世界大会」では、バリ版の試行アプリケーションを作成し、来場者に手渡したスマートフォンにインストールした。