2015年12月4日8:00
NCBレポート12月号は継続してフィンテックベンチャーの特集を組んできた。
本号もその趣旨は踏襲するものの、少し趣向をかえてみよう。
これまではNCBのメガネにかなうスタートアップをとりあげた。
今回はMasterCardのメガネでフィンテックを眺望することにしよう。
フィンテックに対してどんな取組みをしているのか。
投資先はどこか。
買収したフィンテックはどういう企業なのか。
MasterCardはきわめて積極的にかかわっている。
フィンテックへ関心のある金融機関にとって学ぶべき点が多いはずだ。
■フィンテックへ果敢にチャレンジ
2014年から2015年10月までにMasterCardが発表したニュースから、フィンテックに関与した記事を抜きだしてみた。それをジャンルでわけると3つにくくれる。支援、買収、そして開発だ。
「支援」では、フィンテック育成プログラムとハッカソンを世界規模で実施している。フィンテック育成プログラムには、世界中のスタートアップを対象にしたスタートパス(Start Path)と、米国に限定したコマースイノベーティッド(Commerce Innovated)がある。これに選ばれたベンチャーは、投資や専門家のアドバイス、パートナー企業の紹介が受けられる。
ハッカソンは、ハッキングとマラソンの合成語。ハッカーの育成プログラムではない。ウェブやモバイルの開発者を対象にした技術競争イベントである。ユーザーインタフェイスが今後の金融サービスを左右する。MasterCardは「マスターズオブコード」と銘打って、世界中から優秀な開発者を発掘する算段だ。
この2年弱の間にMasterCardが「買収」したフィンテックは7社と意欲的だ。投資会社のようにキャピタルゲインが目的ではない。新技術の取込みや、ノウハウの蓄積が目的だ。買収したフィンテックはいずれも成長ステージの堅実なところである。
自社リソースを活用した「開発」にも積極的だ。新サービス開発やセキュリティ強化のため、テクノロジーハブやラボを世界主要地域に開設している。次ページ以降でさらに深掘りしていくことにしよう。