2019年12月19日8:30
国際ブランドのVisaでは、コンシューマ(利用者)を中心に捉えて、より良い経験とサービスを提供するためにFinTech(フィンテック)に取り組んでいる。Visaのプラットフォームを提供して、ネットワークを構築していくことを大きな目標に掲げている。同社のFinTech分野の取り組みについて、Visa Head of Fintech Engagement and Delivery Asia Pacific Tasneen Padiath(タスニーン・パディアス)氏に話を聞いた。
Niumと即時送金を提供、RazerやGOJEKと連携
VisaのFinTechの具体的な例として、2019年11月11日に、デジタルクロスボーダー決済プラットフォームであるシンガポールのNiumと連携し、ユーザーがVisaのリアルタイムプッシュ決済ソリューションである「Visa Direct」 を利用して、東南アジア全域のVisaデビットカード所有者にリアルタイムで送金できるようにするとした。これは、半年以上をかけて構築した取り組みだという。
また、マレーシアのRazerは1,700万人のゲームユーザーを有しているが、「Razer Pay e-wallet」として利用できるVisaプリペイドソリューションを開発した。これにより、5,400万を超えるVisa加盟店での支払いが可能となり、最大6,100万のユーザーに利便性を提供できるとした。さらに、インドネシアのGOJEKは東南アジアの交通分野で有名な企業だが、GO-PAY Visaによりドライバーの支払いができるようにしている。東南アジア有数の企業であるRazerとGOJEKとの連携はVisaのユーザーを拡大することに貢献するとした。
「Visaパートナー・ポータル」を開設
VisaのAPIではFinTechの技術を開発して、オープンに展開していきたいとしている。新たな取り組みとして、「Visaパートナー・ポータル」を開設したが、その目的は3つあるとした。1つは学ぶ場で、透明なプラットフォームを提供して、学習する機会を提供している。2つめは、デジタルアプリケーションの提供だ。3つめは、発行者プロセッサー(イシュア・プロセッサー)、BINスポンサー(BIN Sponsors)、プログラムマネージャー(Program Managers)、エンドツーエンドパートナー(End-to-End Partners)といったパートナーを募集しており、今後さまざまなアナウンスが行われるとした。
AP地域はFinTechにおいてエキサイティングな市場
日本については、現金決済が中心だが、「大きな可能性を秘めている市場である」とPadiath氏は期待する。日本政府も2025年までに現状の20%強から40%のキャッシュレス化を目指している。また、VisaのFinTechの取り組みも進んでおり、Kyashやカンムが「Fintech ファストトラックプログラム」に参加している。「Fintech ファストトラックプログラム」は、パートナー企業が、Visaの決済ネットワークを利用した新たな決済体験のより迅速かつ簡潔な構築と提供を可能にするものだ。
なお、近年では、中国などをはじめ、銀行と直接連携した決済サービスが登場しているが、金融機関とは長い期間協力してビジネスを展開しており、「消費者を中心としたイノベーションを開拓していくことで、今後もパートナーとして展開していける」とPadiath氏は話す。
最後に、Padiath氏はアジア・パシフィックエリアは、欧米諸国と比べてもエキサイティングな市場であるとした。2018年をみても54%の投資が実際にアジアで行われており、ウォレットの分野でも特徴のあるサービスが登場している。また、シンガポールや台湾、オーストラリア、日本など、政府などがFinTechに好意的であるとした。
※取材はSingapore FinTech Festival会場にて