2015年12月10日8:42
5年後には日本のPontaを超える規模の展開を目指す
日本を代表する共通ポイントサービスの1つであるロイヤリティ マーケティングの「Ponta」がインドネシアでも展開されているのをご存知だろうか? インドネシアでは、開始から10カ月と日は浅いが、すでに同国全土をカバーする最大級のポイントサービスに成長しているという。同国においてビジネスを展開する共通ポイント事業会社「PT. Global Loyalty Indonesia(GLI)」に話を聞いた。
6社8ブランド、1万2,180店舗でサービスが利用可能
2015年中に8社10ブランドでの採用が目標
インドネシアで2015年2月から本格スタートした共通ポイント「Ponta」は、2015年10月現在、6社8ブランド、1万2,180店舗でサービスが利用可能だ。同国では、2014年12月にヘルス&ビューティストア「DAN+DAN」で試験運用を開始。2015年1月より、ミニスーパー「Alfamidi」、コンビニエンスストア「Alfa express」、「LAWSON」にて順次サービスを展開し、2015年2月より、インドネシア国内にて1万店舗以上展開しているミニマートの「Alfamart」でサービスが開始されたことにより本格運用開始となった。PT. Global Loyalty Indonesia ヴァイス・プレジデント・ディレクター 福田朗也氏は、「2015年度中に1,000万会員、年内に提携社8社10ブランド達成を目指しています」と意気込む。
現在、インドネシアでは、百貨店やスーパーマーケットなど、各社固有のポイントカードやスタンプカードは展開されている。ただ、「本格的に全土をカバーするポイントサービスとしては初となり、規模感で競合する共通ポイントは現時点でありません」と福田氏は自信を見せる。
Pontaカードのデザインは、日本のローソンやゲオ同様に、Pontaのロゴを入れるのは基本だが、提携社が独自のカードを採用することが可能だ。ポイント付与については、基本的に日本の仕組みを踏襲しているが、インドネシア・ルピアの場合、円より3桁多い数え方となっている。たとえば、Alfamartは10,000ルピアで50ポイント(還元率0.5%)、「SOLARIA」は10,000ルピアで200ポイント(還元率2%)、「GROSIS」は100,000ルピアで500ポイント(還元率5%)と、業種・業態によって還元率は異なる。レストラン業界は2~5%とやや高め、スーパーマーケットは0.5~1%の還元率となるそうだ。
ポイントの付与と還元のバランスは、まだスタートしたばかりのため、付与の比率が多いが、還元の割合が想定以上に高くなっている。GLIの収益については、ポイントを発行することに対してのポイント原資と手数料となる。また、ポイントが利用された提携社には、ポイント付与分の金額をバックしている。
ロイヤリティの高い会員からPontaを利用する傾向に
提携社ではPonta会員のデータを積極的に活用する動きも
Ponta会員への告知は、主に提携社店頭のポスターやレジ、ネットを活用して行っている。Pontaへの入会を希望するユーザーは、店員にその旨を告げると、入会申込書が手渡される。名前や住所といった入会申込書の記入は必要だが、カードのポイントはその場から貯めることが可能だ。
まだ、本格的なサービス開始から10カ月程度が経過した段階だが、会員データを見ると共通ポイント導入の成果は着実に表れているそうだ。たとえば、ミニスーパーのAlfaMIDIで、会員とそれ以外のユーザーの購買データを比較した際、Ponta会員は導入初月から25%単価が高かった。また、「3月以降は倍近い単価となっており、AlfaMIDI以外でも同様の傾向があるため、ロイヤリティの高い方からPonta会員になっていたただいている感触があります」と福田氏は笑顔を見せる。
レストランのSOLARIAでは、Ponta会員の件数ベースでは、同社で発行されたカードの割合が65%となり、残りの35%が他社で発行されたPontaカードを利用していた。また、売り上げベースでは他社発行のカードが37%の比率となっているため、より単価の高い提携社のPonta会員を取り込めていることとなる。
インドネシアの提携社でも、Ponta会員のデータを積極的に活用したいという動きも出てきているそうだ。
「店舗側では、今までどういったお客様が来店していたかが把握できませんでしたが、年代や性別などの平均単価や来店頻度など、個店レベルで把握可能です。たとえば、40代、50代のお客様が単価を引き上げている場合、特別にポイントを付与するなど、新たな取り組みを展開することができます」(PT. Global Loyalty Indonesia マーケティング・マネージャー熊澤研次氏)
インドネシア現地でのプロモーションとしては、Webサイト「Ponta.co.id」を立ち上げており、月間40万PVのアクセスとなっている。また、インドネシアは、FacebookやTwitterの普及率が高い国としても知られるが、Facebookの「いいね!」は49,000いいね!を超え、Twitterのフォロアーも1万2,000弱となっている。さらに、インスタグラムやスマホアプリをリリース。また、インスタグラムやFacebookでPontaをアピールする企画を実施。キャラクター「ポンタ」もローカライズされた衣装を身にまとうなど、現地での浸透を図っている。
カード提示で優待を受けられる店舗も
「お試し引換券」や「ボーナスポイント」もスタート
Pontaは、提携社6社8ブランドでポイントを貯めたり、使ったりすることが可能だが、インドネシア独自の取り組みとして、Pontaカードを提示するだけで優待や割引が受けられる店舗や施設もある。たとえば、映画館「ブリッツメガプレックス(BLITZ MEGAPLEX)」のチケット50,000ルピアがPonta会員であれば、半額以下の20,000ポイント(20,000ルピア相当)で鑑賞できる。
また、理容チェーンの「kiddy cuts(キディーカッツ)」、インドネシアで有名なテーマパークの「デポック・ファンタジー・ウォーターパーク(Depok Fantasi Water Park)」、「アンチョール・オーシャン・ドリーム・サムドラ(Ancol Ocean Dream Samudra)」などで割引が受けられる。福田氏は、「今後もPontaカードを持っているとお得だという施設を増やしていきたい」と口にする。
課題としては、ユーザーへのさらなる認知向上が挙げられる。同社では、これまでの展開の中で、提携社店舗及びSNS等の自社メディア以外で、積極的な広告は行っていない。そのため、提携候補先の営業担当者などは、Pontaについて認知していない人も多いそうだ。今後は、さらに便利に利用できるシーンを増やしたり、イベントに出展するなどして、認知度を高めていきたいとしている。福田氏は、「たとえば、日本のローソンで展開している『お試し引換券』や、対象の商品を買うと、通常のお買い上げポイントに、さらにポイントが加算される『ボーナスポイント』といった取り組みも始まります。会員数の伸びは日本のPontaと遜色ないため、ポイントが貯まりやすい仕組みを整え、告知活動を強化すれば自ずと認知度は高まります」と語気を強める。
なお、Pontaの処理は、ほとんどの提携社がPOSで行っているが、クレジットカードの決済端末を利用している店舗もあるそうだ。システム的な課題としては、インドネシア全体でネットワークインフラの整備が追い付いていない部分もあり、地域全体でのシステム停止などが頻繁に起こることもある。その場合でもバッチ処理でポイントの付与漏れが発生しない様に工夫しているが、サービスの安定性においては日本と大きな開きがある。
人口の多いインドネシアのポテンシャルは高い
また、現状は、現金ポイントカードのみの発行となり、提携クレジットカードは発行していない。その理由として、インドネシアではクレジットカードのイシュア(発行会社)が銀行となり、発行上位は国営企業のためハードルが高いという。また、クレジットカードに加え、電子マネーとの連携も今後は検討していきたいとしている。さらに、FacebookやTwitterなどを利用する人も多く、モバイルの普及率も高いため、「日本よりもカードレスのポイントシステムが根付く可能性はあります」と福田氏は期待する。
当面は、2015年中に8社10ブランドとの提携が目標となるが、毎年コンスタントに提携社を増やしていきたいとしている。提携社を増やす上での課題は、インドネシアで各業種の大手企業は、高いシェアを誇っているため、上位ランクの企業と提携できなかった際、他に営業する企業があまりないことだ。
福田氏は、「会員数、提携社数にしても、インドネシアは日本の倍の人口がいますから、少なくても5年のスパンで日本のPontaの規模を超えていきたいです」と意気込みを語った。