2016年3月8日0:00
■大日本印刷株式会社
ID情報と決済情報を連動した新たなマーケティングを展開へ
「DNPマルチペイメントサービス」がいよいよ稼働
大日本印刷は、決済情報に加え、さまざまなID情報を活用した新たなマーケティング展開である「VRM(Vendor Relationship Management)」事業の展開を準備している。VRMは、自分にぴったりの提案を求めて主体的に情報を開示した生活者に対して、複数の企業から回答を提示する、CRM(Customer Relationship Management)をさらに発展させた事業となり、生活者が自身のパーソナル・データの提供先を管理可能だ。また、クレジットカード、プリペイドカードなどあらゆる決済手段にワンストップで対応する「マルチ決済ゲートウェイサービス」と、決済情報に基づき効果的な販促活動を実施する「決済情報を活用した販促サービス」からなる「DNPマルチペイメントサービス」を提供する。
IDを基軸としたマーケティング・プラットフォームを構築
印刷業界最大手であり、ICカードの製造・発行においても国内トップシェアを誇り、ICカードに関連する多様なサービスを実現するASPソリューション「CDMS(Card Data Management Service)」を提供している大日本印刷。
大日本印刷には決済情報やPOSデータを集約するゲートウェイセンターがあり、一方には豊富なソリューションのラインナップがある。これらを最大限に生かしてCRMを実現するために、大きなカギを握っているのが、顧客のID管理だ。
「われわれDNPは、情報の利活用を活性化させるため、顧客IDを基軸としたマーケティング・プラットフォームの構築を進めています。その要となるのが、サービス間をつなぐ横串とも言うべきIDセンターです」(大日本印刷 C&I事業部 プラットフォームサービス本部 ペイメントプラットフォーム事業開発室 室長 西田真氏)
例えば自社のポイントカード会員が、A社のクレジットカード会員でもあるといったことは、往々にしてあり得る。本来はこれらの会員は同じ顧客としてみることが必要なため、顧客に対して複数のカード情報を登録できるようにすることが必要だ。また、前述したように、オムニチャネル化にも対応しており、店舗とネットの両方で購入した場合でも、同一顧客であることを認識して、データを統合管理することが必要だ。IDセンターはこれをもう一歩進めたもので、顧客情報の精度をより一層、高めることによって、マーケティングの可能性をもう一回り広げようとする試みだ。
「複数のカードから得られる情報を統合することによって、より鮮明な顧客のプロファイルを得ることが可能になります。この情報をもとに、趣味嗜好や行動パターンに合致したマーケティング施策を実施することもできますが、優良顧客かそうでないかということもより正確に判断できるようになりますので、不正検知、リスク管理にも役立てることができるのです」(西田氏)
そして、さらにその先に同社が見据えているものは、CRMの発展形としてIDセンターを支える、VRMビジネスの展開である。
他社に先駆けCRMの発展形
「VRMビジネス」のシステム開発に着手
VRMとは、Vendor Relationship Managementの略称。従来のCRMが、個別の企業が個人情報の開示に同意した生活者に向けてレコメンドを行うものであるのに対し、VRMでは、企業からの提案を求めて主体的に自らの情報を開示する生活者に向けて、複数の企業から回答を提示する。データを管理・コントロールする主導権を、個々の生活者が握るという点が、CRMとの最も大きな違いである。
同社が描くVRMビジネスのイメージは、以下のようなものだ。
まず生活者は、VRMポータルにアクセスし、必要な情報を入力してID発行の手続きをとる。そして発行されたIDを用い、PDS(パーソナルデータストア)のアプリに自分自身の情報を登録する。また自身が利用したサービスの利用履歴のインデックス情報が自動的に登録される。一方、生活者の情報がほしい企業は、例えば「あなたの○○に関する情報を提供してくだされば、▽▽のクーポンを差し上げます」といったオファーを提示。データを提供することによって、ほしい情報が得られたり、価値の高いサービスが受けられたりすると判断した生活者は、その取引に応じ、情報を提供する。
ここでも核になるのは個人を特定するためのID(アイデンティティ)であり、そのID(アイデンティティ)によって管理されるPDSがVRM事業の起点となる。同社ではこれを、マイナンバー制度とも連携した確固たるシステムとして構築・運営していきたい考えであり、それに向けてプロジェクトを始動させているという。
「銀行に例えるならば、PDSは、口座にお金を預けて運用を銀行に任せるのではなく、銀行の貸金庫を借りて自分自身でお金を管理するというイメージです」(大日本印刷 ABセンター 第2本部 生活者情報ビジネス開発ユニット VRMビジネス企画開発室 室長 勝島史恵氏)
企業側がどのように連携して生活者にメリットを提供していくのかについては、さまざまなパターンが考えられる。その一例は、自動車会社と損保会社。自動車会社の顧客に走行距離のデータを提供してもらい、それに対して保険会社が、最適な料率の自動車保険を提案するといったことだ。
また、グループでホテル、店舗小売業、不動産業など幅広い事業を展開している電鉄会社が、沿線に住む顧客の意見を吸い上げ、グループ全体でその要望に応えていくということも可能だろう。
PDSはアプリなので、スマホなどに情報を格納して携帯することができる。具体的な利用イメージとしては、例えば小売業の店頭に設置された端末に、生活者がPDSアプリを搭載したスマホをかざして生活者の意思で開示している情報を読み込ませると、特典やサービスが提供されるといったことが考えられる。
インバウンド対応においても、活用が期待されている。例えば訪日外国人旅行客が一度PDSにパスポート情報を登録しておけば、買い物をするたびに同じ情報を書き込んだり入力したりする手間を省いて、免税手続きを行うことができる。また、宗教上食べられないものやアレルギー情報をあらかじめPDSに登録しておいて、それを飲食店の店頭端末に読み取らせることによって、スムーズな情報伝達が可能になる。
「最近ではウェアラブル・コンピュータが普及するなどして、生活者が刻一刻と貴重なパーソナル・データを取得・蓄積する世の中になっています。これらのデータを、生活者自身が主体的に管理・活用することによって、データの流通が加速し、より価値の高いサービスの展開が可能になると考えています」(勝島氏)
VRMシステムと「DNPマルチペイメントサービス」のゲートウェイセンターは、連携して稼働する予定だ。これによって、より広範かつきめ細かいサービスの提供が可能になると期待されている。
■お問い合わせ先
大日本印刷株式会社
〒162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
TEL : 03-3266-2111
http : //www.dnp.co.jp/