Apple Payは日本に来るのか? 世界のモバイル決済にみる日本市場の将来像

送金から実店舗決済へ

モバイル決済の枠組みで、送金についても触れておきたい。なぜなら、決済と送金は表裏一体。加盟店への送金は、そのまま決済になりうるからだ。

実際に米国では、送金を決済に転用した例が見られる。Dwollaだ。創業者のベン・ミルン氏は、ECサイトを運営していたとき、年間55,000ドルに上るカード手数料に不満を抱えていた。どこよりも安い手数料を実現したい、との思いが創業の契機となった。だから手数料は無料。ダイレクトデビットのネットワークで実現した。米国民はDwollaを歓迎した。2010年のサービス開始からわずか半年で、週の取扱高が100万ドルを突破。その後も着実に数値を伸ばしている。飛躍の要因としては、環境要因もあるだろう。いかにカード大国の米国でも、個人間取引は現金か小切手だった。ただそれ以上に、優れたUI(ユーザー・インターフェース)で新しいUX(ユーザー・エクスペリエンス)を生んだことが挙げられる。メールアドレスを宛先に、送金額とメッセージを打ち込めば指示は完了する。Facebookと接続すれば、友人が宛先として表示されるからなお便利だ。送金にはDwollaアカウントがいるが、受取側には不要だ。通知が来てから作ればよいし、作らなくても受け取れる。アプリ送金でも、対人取引に限りなく近づけた点が妙技だ。

Dwolla決済は、法人やNPO、政府機関に利用されている。送金の、決済への転用だ。法人は商品やサービスの支払いにDwollaを受け付ける。店頭に貼られた「Dwolla Accepted Here」のステッカーは、まさに加盟店そのものだ。NPOは募金や投資に、政府機関は税金の徴収に役立てる。国際ブランドを通さないから、金額そのままを届けられる。募金や税金には最適だ。手数料体系にはフリーミアム(Freemium)モデルを採用する。個人間の送金はいくらでも無料。法人の場合は、機能の追加にしたがい月額25ドルから1,500ドル程度を徴収している。

▲Dwolla公式プロモーション動画よりNCB作成
▲Dwolla公式プロモーション動画よりNCB作成

同じく送金アプリのSquare Cash。シンプルで機能的なUIで人気を博し、アプリの評価も高い。手数料もデビットカード間なら無料だ。これも決済に活用されている。

工夫したのは宛先の入力。メールアドレスや電話番号、デビットカード番号に加え、独自の宛先、キャッシュタグを開発した。これは送金先の住所のようなもので、頭の「$」に任意の英数字を組み合わせる。あえて文字に表すことで、利用シーンは劇的に増えた。例えば路上アーティスト。キャッシュタグを掲げておけば、カンパを受け付けられる。例えばEC運営者。商品画像と共にSNSに投稿すれば、世界中に公開できる。

思い返せばSquareは、加盟店開拓をすべてセルフサービスにすることで、業界に革新をもたらした。今では全米で400万加盟店を抱えるまでに成長している。今回の手法も、これと同様ではないか。加盟店自らがキャッシュタグを発行し、告知して、受け付ける。一貫したビジネスモデルが、またも新しい世界を生んでいる。

▲送金アプリのSquareCash
▲送金アプリのSquareCash

この流れをただ黙ってみていないのが、Appleだ。2015年末にAppleが申請した特許の中に、個人間送金のモデルが含まれている。プリインストールされているメッセージアプリ、iMessageを通じた送金を想定しているようだ。併行して、JPモルガンやウェルズファーゴといった銀行との提携も噂されている。Appleもまた、国際ブランドを通さない決済を実現するのだろうか。

東京五輪に向けて
――鍵は訪日外国人

ここまで、世界で勃興するモバイル決済について触れてきた。いずれもスマートフォンを武器に、新しい体験を生み出したものばかり。既存のビジネスモデルを破壊する動きは、同業者にとって脅威となろう。

さて、新しい決済手段が生まれると、やはり気になるのが東京五輪への対策だ。欧米からはNFCが、中国からはバーコードがやってくる。世界の人々が日常的に使う決済手段が、日本で使えないということはあってはならない。しかし、インフラ整備には時間も資金も要するからしっかり動向を見極めたい。そんなジレンマに悩まされる。本稿で触れたNFC、バーコード、そして送金を活用した決済に備える必要はあるのだろうか。

まずはNFC。日本でモバイル決済といえばおサイフケータイ、規格ではFeliCaが主流だ。近年は電子マネーが好調で、取扱高も右肩上がり。加盟店も増えつつある。こうなるとNFCの入る余地はないようにみえる。しかし、FeliCaの台頭はNFCも加速させるのだ。これはどういうことか。

FeliCaの本格導入が進んだのは2004年から2010年にかけてのこと。当時一斉に導入された端末はいま、法定耐用年数の7年目を迎えている。買い替えのタイミングだ。実は、今日販売されているFeliCa端末の一部は、NFC機能も搭載している。ソフトウェアのアップデートだけで、すぐにNFC加盟店になれる。「潜在的NFC加盟店」は、ひっそりと、着実に、街中に広がっているのだ。

この環境に、NFC利用者が押し寄せたらどうだろう。鍵を握るのは訪日外国人、特に中国人だ。2015年は1,974万人もの外国人が日本を訪れた。うち四分の一を中国人が占める。強い消費牽引力でAlipayを呼び込んだように、Apple Payが持ち込まれることはないだろうか。今年初旬には、中国にもApple Payが上陸。50億枚流通する銀聯ブランドにも対応する。中国の動向次第では、連鎖的に「潜在的NFC加盟店」が姿を表すことも考えられる。

バーコード決済はより優位だ。既存のスキャナですぐに対応できる。店員もオペレーションに慣れている。無印良品や東急ハンズなど、すでに実装している日本企業もある。セブン-イレブンやローソン、近鉄百貨店がAlipayの導入を決めたのも自然な流れだ。中国経済の減退が囁かれるが、加盟店は今後も増え続けるだろう。

送金を活用した決済は、インフラへの投資がほぼ不要だ。モバイルひとつあれば良い。移動販売や屋台にも適している。Dwollaのような独自ネットワークが整備されれば、手軽に始められる。

いくつか課題は残るものの、モバイル決済に対する関心は高い。金融庁もモバイル決済を念頭に、銀行法や資金決済法など関連法令の改正に向けて舵を取る。参入障壁が取り除かれる日も近いであろう。欧米に先を越され、未だ胎動期にある日本のフィンテックであるが、その萌芽は近い。

カード決済&セキュリティの強化書より
kyoksho1

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