2016年4月26日8:30
カード会員の購買データを分析し、SCMとCRM施策を強化
ローソンでは、2010年3月からロイヤリティマーケティングが運営する共通ポイント「Pontaカード」を導入しているが、2015年12月からは、NTTドコモが運営する「dポイント」を貯めたり、使ったりすることもできるようになった。国内有数の顧客基盤を有するポイントサービスとの連携により、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)する方針だ。
Pontaカードの利用者は客単価がアップ
カード会員の購買・行動データとPOSデータを組み合わせて分析
ローソンでは、6年前から共通ポイント「Ponta」に加盟し、来店客への付加価値の高いサービスを目指している。Pontaカードは、2016年3月末で7,547万会員となり、国内トップクラスの会員基盤を有している。また、「Pontaカード」を提示する会員の売り上げは5割あるように、「ローソンの利用者にとっても認知度が高く、店舗でもお声がけしていただくことで、利用率は高まっています。客単価を見ても、カードを提示されている会員の方がそれ以外のお客様よりも高くなっています」と、ローソン カード・サービス担当 坂井建夫氏は笑顔を見せる。
カード会員のデータについては、ローソンにおける購買情報のみが把握可能だが、同社ではそれを商品戦略等に活用している。カード会員の購買データとPOSデータを組み合わせて分析することで、商品の需要予測を行い、店舗にあった最適な商品の開発や、売上の関与率が高い商品の発注につなげている。また、そのデータが蓄積されることで、さらに分析の精度が高まり、より店舗にあった条件を抽出可能だ。さらに、Pontaカードから得られたデータは広告・販促活動にも有効活用されているそうだ。
「おさいふPonta」の発行で客単価や来店頻度の向上を目指す
モバイルサービスにも力を入れる。おサイフケータイ対応のスマートフォンやフューチャーフォンを利用したモバイル会員証「ローソンモバイルPonta」に加え、2015年7月からリニューアルした「ローソン公式スマートフォンアプリ」でもQRコードを利用してPontaの機能が利用できる。ローソン公式スマートフォンアプリでは、 ローソンIDとPonta会員IDを連携することで、利便性を向上させている。
Pontaカード提示の傾向をみると、ローソン発行のカードの比率が多い。まだまだ他社発行のPontaカードの割合も徐々に高まっているそうだ。また、Ponta会員に対する提携社合同のキャンペーンについてはロイヤリティマーケティングが主催し、年に数回実施している。
ポイントの「付与」と「利用」のバランスは、年々よくなっている実感があるという。ローソンで付与した多くのポイントが自社で利用されている。また、お得なポイント数でローソンの商品と引き換えることができる「お試し引換券」を提供しており、好評を得ている。坂井氏は、「『お試し引換券』によりお得な特典を提供できていますが、一方で調査によると消費者への認知度がそれほど高くありませんでした。今後はさらにそのメリットを理解していただくことで、さらにポイントを便利にご利用いただける機会を増やしていきたいですね」と意気込みを見せる。
さらに、Pontaカード会員の中でも来店頻度に差があるため、来店頻度の低い人に如何に来てもらうかを試行錯誤しながら行っているそうだ。2015年11月より、JCBプリペイド機能を搭載した「おさいふPonta」の発行を開始。ポイントカードに決済機能を付加することによって、1枚のカードを提示するだけで済むため、会員の利便性をさらに向上し、客単価や来店頻度のアップを目指す。また、国内外のJCB加盟店で利用でき、“日常使いのカード”として便利に使ってもらいたいとしている。
「dポイント」により新規客の来店を目指す
dカード支払いで3%引きにより主婦層の来店が増える
2015年12月からはPontaに加え、NTTドコモが提供する「dポイント」のポイント付与および利用もスタートした。
「ローソンをはじめとしたコンビニエンスストアの顧客層は30代、40代が中心ですが、NTTドコモ様の加入者はより高年齢の方が多いです。また、ローソンの来店者は男女比が同比率で、Pontaカードの男女比率も同比率だが、dポイントにより、まだ弊社で取り込めていない層の方にご来店いただくきっかけを作るのが目的です」(坂井氏)
ローソンでは、2015年5月にNTTドコモとの提携を発表。ローソンで買い物する際、ドコモのクレジットサービス「dカード」「dカード mini」で支払うと割引が最大5%適用される取り組みを行っている。具体的には、ローソン店舗でのdカード、dカード miniを利用した決済において、決済金額の3%を割引、2015年12月1日から、ローソン店舗での買い物の際にdカードで決済し、「dポイントカード」を提示することで、買い上げ1回につき、購入額100円ごとに提示と決済でそれぞれ1ポイントを付与している。「dカード支払いで3%引きを2015年6月からスタートしましたが、これまでローソンをご利用いただけなかった主婦層等がご利用いただけるなど、成果が生まれています」と坂井氏は口にする。
ローソンではPonta、dポイントカードのいずれかを選択して利用できるが、それぞれ異なった会員基盤を持つ企業と提携することで、自社ではリーチできない顧客層の来店を促すことができる。今後も同社にとってメリットが見いだせれば、新たな提携も考えられるそうだ。
「月刊ローソンポイントカード」を配布
将来的に会員売り上げ比率7~8割を目指す
ただし、複数のポイントサービスを導入すると、会員情報が分散するため、データ活用の面で問題はないのだろうか? 坂井氏は、「ポイントカードに関しては、お客様のニーズに合わせて自由にお選びいただける環境を提供していきたいです。会員情報の管理については先方企業と調整の上最適化し、CRMや販促に活用していきます」と話す。ローソン側でデータの活用方法を工夫することで、販促に役立てることは可能とみている。
なお、以前はお得情報が掲載された「月刊Ponta」をローソン各店舗で配布していたが、ポイントアライアンスが増えたため、現在は「月刊ローソンポイントカード」を独自で配布している。
坂井氏は、「現在は半数の方にカードをご提示いただいていますが、将来的には7~8割くらいの売上を占めるようになればと考えています」と目標を口にする。当然、会員の売り上げ構成比が増えると店舗やローソン本部の原資負担が増えるため、そのバランスをどうするのかは経営的な判断が必要となる。しかし、会員の提示率が6~7割ある東北地方の店舗では、販促活動などでの成果も高まっており、より売り上げに貢献できるとしている。