2016年5月17日9:25
ドイツのインフィニオンテクノロジーズは、ICカードやNFC対応のチップを世界中に提供している。同社では、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2016」において、OSPTアライアンス(Open Standard for Public Transportation)が策定した「CIPURSE(サイパース)」について紹介した。同社では、ウェアラブル向けの展開も強化している。
バルセロナでは2016年10月に磁気チケットがIC化の予定
南米でもさまざまなプロジェクトが進行
「CIPURSE(サイパース)」は交通機関向けのICカードの仕様に加え、モバイルやウェアラブルを活用した取り組みが行われているという。CIPURSEは、システムの拡張性、自在性があり、セキュリティの高さも特徴となる。また、暗号方式については、「AES128」を使った認証方式を採用。もともとは、交通機関向けに策定されたが、現在はよりオープンな仕様に変わってきているそうだ。
インフィニオンのCIPURSE対応セキュリティソリューションは、バルセロナの電子運賃回収システム「T-Mobilitat」で採用され、2016年10月に従来の磁気カードからICカードに切り替えが行われる予定だ。まずは鉄道の乗車券からスタートするが、今後はパーキングなどへの展開も順次行われるという。また、「南米では、ブラジルをはじめ、さまざまなプロジェクトが進行しています」とインフィニオンテクノロジーズ AG セキュア・モバイル&トランザクション ヴァイス・プレジデント&ゼネラルマネジャーのThomas Rosteck氏は説明する。
Samsung Electronicsの「Gear S2」で採用
MPSとウェアラブルデバイス向けのNFCセキュアモジュールを開発
また、ウェアラブルデバイス向けの展開も強化しており、韓国・Samsung Electronics(サムスン電子)のスマートウォッチGear S2向けにCIPURSEの仕様に対応した「組み込み型セキュアエレメント(eSE:embedded Secure Element)チップ」を供給している。同製品は、EMVCoの仕様をサポートしている。
さらに、中国・北京のMobile Payment Solutions Co. Ltd.(MPS)と協力して、時計やリストバンドなどに使用できるNFCセキュリティモジュールを開発している。同モジュールのベースはインフィニオンのブースト型NFCセキュアエレメントとなり、機器内でカードエミュレーションを行うセキュアレメントが不要だ。また、NFCアンテナとアンテナマッチングのためのコンポーネントがパッケージに内蔵されており、基盤面積も大幅に縮小したそうだ。
なお、CIPURSEは、ブラックリストがないため、希望した企業が参加でき、ISO/IEC14443 TypeA/B、乗車券の国際標準仕様となる「CALYPSO(カリプソ)」等の仕様に対応できる。また、「FeliCaも技術的にサポートは可能です」と同社 NFC,Transport and MNO ビジネス・デベロップメント・マネージャー Dr.Joerg Schmidt氏は話す。
NFCモバイルペイメント向けの仕様については、各標準化団体によって異なる部分がある。Rosteck氏は、「現在14443 TypeA/Bを規定したISO(国際標準化機構)、NFCフォーラム、EMVCoがモバイルの仕様について議論を開始しており、プロトコルなどベースとなるものはCIPURSEでも取り入れていきたい」としている。
年間30億のICカード用チップを出荷
日本ではペイメントやオートモーティブに期待
なお、インフィニオンテクノロジーでは、グローバルでは年間30億のICカード用セキュアチップを出荷。これは、NXPセミコンダクターズに次いで世界第2位の出荷量となっている。
インフィニオンテクノロジーズでは、日本を重要なマーケットと捉えている。日本ではペイメントの分野に加え、オートモーティブ(自動車)の分野でチャンスがあるとみている。
※取材は2016年2月22日~25日までスペイン・バルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2016」にて