2016年12月22日11:43
マルチアプリケーション(Multi-Application)のスマートカード用(ICカード)・プラットフォームのOSである「MULTOS(マルトス)」は、世界45カ国から高セキュリティなカードが発行されている。近年では、カードに加え、microSDカードやウェアラブルへの搭載も実施。フランス・カンヌで開催された「TRUSTECH2016」では、IoT(Internet of Things)分野への取り組みも紹介された。
ウェアラブルやmicroSDカードにMULTOSのOSを搭載した製品も
「MULTOS」の技術は、さまざまなアプリケーションに高いセキュリティと相互運用可能なプラットフォームを提供している。現在、800万の機関からサービスが発表されているという。現在、MULTOSはさまざまなサービスで採用されているが、EMVでの利用が80%を占めている。米国での採用実績が伸びているが、中近東でのニーズも増えているそうだ。
1998年に設立された「MULTOS協議会(マルトスコンソーシアム)」には、世界的な企業が名を連ねており、日本からも日立製作所と大日本印刷が参加している。
近年では、ウェアラブルやmicroSDカードにMULTOSのOSを搭載した製品が発表されている。MULTOS コマーシャル・マネージャー Paul Wilson氏は、「ウェアラブルは、リストバンドに搭載するパッシブタイプ、スマートウォッチなどに搭載するアクティブタイプなどがあり、EMVアプリケーションもサポートできる状態となっています。microSDカードについては、スマートフォンによっては使えない機種もあり、AppleやSamsungなどがeSEを搭載した製品を発表する流れもありますが、サービスを供給する準備はできています」と説明する。
MULTOSの製品はこれまで、個人認証などを中心に利用されてきたが、IoT(Internet of Things)におけるモノの管理でも利用可能となっており、コマーシャルを強化している。今後は、IOTによるさまざまなデバイスが接続され、その量も膨大になると予想されるが、その際に各デバイス間を安全に接続する信頼性の高い認証方法が重要となる。MULTOSのアプリケーションは、IoTやM2M環境で要求される高セキュリティと、安心できるプロビジョニングのニーズを満たせるとしている。
電力消費のモニタリング、インダストリ分野での利用も想定
「MULTOSは、IoTに力を入れており、セキュリティとフレキシビリティにより、どんなモノにも順応できるようになっています。利用者が身につけるデバイスはもちろん、電力消費のモニタリング等にも力を入れています。また、製造、工業といったインダストリでも活用いただけるのは強みとなります」(Paul Wilson氏)
「TRUSTECH2016」では、MULTOSのチップをIoTで活用したデモを実施。MULTOSのチップを小型のコンピュータに入れ、ウェブカメラで画像を撮影。画像の情報は暗号化されて保存しており、暗号化した情報を呼び戻すためには、当該利用者のMULTOSカードと同じキーである必要がある。
また、コミュニケーションモジュールが付いているICチップを使用して、リモートでスイッチを付けたり、消したりすることができるデモも実施。さらに、電力などの消費モニタリングと制御を可能にし、無駄な消費を削減することができるという。
MULTOS テクニカル・マネージャー Chris Torr氏は、「複数のコンピュータを使いながらコミュニケーションを図ることができます。たとえば、距離や角度などをはかることも可能です」と説明する。
「MULTOS Trust Anchors」では、外部から確実な情報を得ることはもちろん、高セキュリティなチップにより、マルウェアやデジタル攻撃からスマートメーターを保護することができるとしている。
※取材は2016年11月29日~12月1日まで、フランス・カンヌで開催された「TRUSTECH(トラステック)」にて