2018年1月10日9:30
MULTOSは、マルチアプリケーション(Multi-Application)のスマートカード用(ICカード)・プラットフォームのOSだ。MULTOSコンソーシアムは、MULTOSの開発とプロモーションを行うグローバルな組織となる。非接触ICカード化により出荷個数が順調に伸びているというが、近年はIoT分野での活用にも力を入れている。
非接触ICカードが出荷増を牽引
2017年はMULTOSにとって、記念すべき年となった。MULTOSコンソーシアムは、3月の初めに、MULTOSのセキュアデバイスの出荷数量が10億個を超えた。また、2017年に20周年を迎えた。同社では、20周年を記念して、歴史や開発者などを紹介したプロモーションビデオを作成している。
MULTOS コマーシャル・マネージャー Paul Wilson氏は、「MULTOSのICカードは銀行、IDカード向けを中心に利用されていますが、近年は非接触テクノロジの開発が進んでおり、各地域で広がっています」と説明する。
2017年はさまざまな企業がコンソーシアムに参加
新たな取り組みとして、フィンガープリント付きのカードもメンバーが開発した。また、2017年8月には、トークン化されたデータをスマートフォンに送信するなど、プロビジョニングサービスを提供するDIGISEQがメンバーに加わった。また、クレジットカードとプリペイドカードを発行するAllpay Limited、ICカード関連製品の実装を行うUniversal Smart Cards Limited、米国の17州に支店を持つコミュニティ・バンクであるWoodforest National BankなどがMULTOSコンソーシアムのメンバーに加わっている。
MULTOSチップをソーラーパネルの管理に活用
2017年にフランス・カンヌで開催された「TRUSTECH2017」では、MULTOSコンソーシアムのメンバーであり、再生可能エネルギー、炭素削減、スマートメーターを専門とするTrusted Renewables Limitedの技術 “Harvesting Sunshine from Solar Gardens with Smart Solar Panels”がSESAMES AwardsでInternet of Things(IoT)部門のアワードを受賞した。MULTOSチップを活用し、スマートソーラーパネルをIoTスマートエネルギーエコシステムに結びつけている。これは、ソーラーパネルを数多く利用しているシーンにも適用可能だ。各チップで実行されるアプリケーションは、スマートコントラクトを使用したエネルギー取引を可能にし、「原産地証明書」による再生可能エネルギーの支払いの有効性を示すことができるという。現在はプロトタイプの段階だが、グリーンエネルギープロジェクトのための堅牢で安全性の高いテクノロジーソリューションを提供することを可能にした。
今後もIoT分野に注力へ、ICカードのボリュームも期待
MULTOSでは、IoT分野に力を入れており、高セキュリティとフレキシビリティにより、さまざまな製品に適用可能できる点が強みであるという。現在は、他のIoTプロジェクトでも活用が進んでいるそうだ。また、ウェアラブルやmicroSDカードにMULTOSのOSを搭載した製品も開発されている。
Paul Wilson氏は、「MULTOSでは、今後もますますIoT方面に向かっていくと思います。インターネットよりもエンベデットプロダクト(Embedded Product)の方向に進むと考えられ、さまざまなタイプの商品に適用されていくでしょう。もちろんICカードはこの先も重要な位置づけであり、テクノロジも接触から非接触に移行しているため、これからのボリュームも期待できます。将来的には、ICカードから新しいモノに代わっていく可能性も考えられます」と語った。
取材は2017年11月28日~11月30日までフランス・カンヌで開催された「TRUSTECH(トラステック)2017」において。