2017年1月11日8:19
日本ならではの優待サービスを提供し、地方活性化につながるサービスを提供へ
JCBは、日本発の国際カードブランドとして、海外のイシュア(金融機関等のカード発行会社)と協力し、アジアを中心にJCBブランドのカード発行を強化している。現地では日本に関連したカードを数多く発行。また、爆買いブームが落ち着いたものの、海外JCBブランド会員の国内消費(以降、「JCB会員のインバウンド消費」)は好調に推移している。
※所属部署、役職は取材当時のものとなります。
世界23カ国でJCBカードを発行
経済成長が著しい東南アジアでも発行を強化
JCBブランドのカードは現在、世界23カ国・地域で発行されており、中国、台湾、韓国などに加え、東南アジア、ロシア、パキスタンなどの会員も増えている。海外の会員数は2016年9月末時点で約2,300万。中国は大手10行、台湾では28行で発行。韓国ではシンハン(新韓)カードといったカード会社など計6社で発行されている。
また、タイ、ベトナムなども40万枚以上を発行。JCB ブランド事業統括部門 ブランドマーケティング部長 杉山宏彦氏は、「中国、韓国、台湾に加え、経済成長が著しい東南アジアで発行を強化しています。インドネシア、タイ、ベトナムなどは特に会員数が伸びており、たとえばベトナムではJCBのブランドシェアが1割を超えています」と説明する。
東アジア・東南アジアの国々とは経済的な交流は深く、現地のイシュアにとっても日本発のブランドであるJCBと提携する意義は大きい。また、日本のブランドとして、日本にちなんだ優待サービスを強く望まれている。なお、特に台湾、タイからの訪日客のJCBカードの携帯率は高いという。
2016年はJCB会員のインバウンド消費が3割増
台湾会員の消費が約6割を占める
インバウンド消費としては、2016年は前年比約3割増を見込んでいる。
「渡航者数は順調に伸長しているものの、消費額全体の伸びは鈍化の傾向です。その一方で、JCB会員のインバウンド消費額は3割強増加しています」(JCB 加盟店事業統括部門 加盟店事業統括部 次長 市場開発グループ担当)花田信人氏)
なお、JCBの海外カード会員の地域別消費額をみると、2015年度で東京が4割強、大阪、九州、北海道は1割前後だが、少しずつ東京から地方に移っている傾向がある。また、日本にリピートして訪れる人も増えており、それに伴い、地方での消費も拡大傾向だ。
日本の加盟店からインバウンド消費の取り込みを求める声も
海外では日本にちなんだカードが人気
JCBでは、2016年6月に海外会員に対してアンケートを実施したが、日本での要望として、Wi-Fiのサービス、割引優待などを求める声が多かった。また、日本の提携先(加盟店)からもインバウンド消費拡大に向け、海外会員の誘客をはかりたいという要望がある。
海外で発行されているカードを見ると、アニメの「ワンピース」、「トランスフォーマー」や「ハローキティ」といったデザインカード、JALやANAの航空会社との提携カード等、日本にちなんだ券面が多い。たとえば台湾では「ドラえもん」がデザインされたカードが人気だという。また、楽天やイオンなど、日本の大手企業と提携して海外で発行するカードも見受けられる。日本と親和性のあるカードの発行に期待する提携先は多く、カードホルダーも現地の人に加え、現地の日本企業に勤務する日本人が保有するケースもある。
「国内でも2年位前までは海外カードといえば銀聯(中国)が多かったのですが、徐々にいろいろな国の方が決済されています。特にここ数年は台湾人の方が多く、JCBは現地でも人気の高いカードですので、日本での消費も伸びています」(杉山氏)
地方銀行と協力し、台湾のJCB会員を日本に送客
インバウンド消費を全国地域の活性化につなげる
実際、JCB会員のインバウンド消費をみると、日本での利用の半数以上が台湾会員の決済となっている。台湾の28行が協力し、日本での利用促進を図るための夏祭りキャンペーンを2016年8月、9月で実施。JCBでは、加盟店とともに台湾からのインバウンドで送客させる取り組みに協力した。
さらに、九州フィナンシャルグループ、肥後銀行、鹿児島銀行の九州FGの3社、ジェイティービーとの合弁会社であるJ&J事業創造と、訪日観光客の誘致に関する協定書を2016年3月に締結し、11月には台湾のJCB会員を熊本県、鹿児島県を中心とした南九州エリアに誘致するモニターツアーを実施した。
また、 大分県、宮崎県、大分銀行、宮崎銀行、大分カード、宮銀カード、J&J事業創造と2016年5月に地域観光振興に関する協定書を締結し、10月から12月にかけて「台湾からの訪日観光客誘致プロジェクト(モニターツアー)」を3度実施している。大分銀行は台湾・台中市と観光に関する協定を締結しており、現地の金融機関の推進協力も得て、親日で富裕層のJCB会員を大分県および宮崎県に誘致した。
「地方銀行がインバウンド施策を行う目的は、過疎化が進み、少子化の影響もある中で外国人観光客の消費を取り込みによる地域の活性化をはかることです。自分たちが応援したい地域でルートを作り、実際に食べて、体験してもらうことで地域の消費活性化をはかります。今年度か来年度はより多くの台湾JCB会員へ販売を行い、これをモデルケースとして他の国・地域にも広げていきたいですね」(花田氏)
今は試験的に西日本で取り組みを行っているが、「東北をはじめとした他エリアの金融機関にも提案しています」と、JCB 業務推進本部 業務推進部 地方創生支援室 副主事 浜辺武志氏は話す。
IoT活用おもてなし実証事業でJCBプレモカードを配布
新宿での実験はチャージも想定以上の成果
2016年1月には、JTB、NTT、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会とともに、訪日外国人旅行者に対してスマートフォンアプリを活用したショッピング、 飲食情報、 優待サービスなどの情報提供とカード型商品券「JCBプレモカード」による消費促進策を通じて、 滞在中の移動情報と決済情報を解析し、マーケティングに利活用する実証実験を実施した。その結果、たとえば新宿ではアプリ登録者の7割が外国人となった。また、スマホアプリとJCBプレモカードの決済データと紐付けて実験を実施。新宿・京王プラザホテルでは500人以上にJCBプレモカードを配布したが、半数近くが利用した。
また、JTBが委託を受けた経済産業省の公募事業「IoT推進のための新ビジネス創出基盤整備事業(IoT活用おもてなし実証事業)」において、2016年10月1日~2017年2月28日まで、福岡市を中心とした九州エリアで同様の取り組みを行っている。
昨年は、日本のプリペイドがどのくらい訴求できるか、オペレーション検証の色合いが強かったが、今年度は決済データに加え、国別のデータ、移動ログ、実際にプレモカードを使った加盟店をマッチングさせ、地方への誘客サービスにつなげていきたいとしている。たとえば、台湾からの観光客は個人旅行が多いため、旅行者の導線を把握することで適切なサービスにつなげることが可能となる。今回の実験により、地方自治体の観光戦略の立案等への活用による地方創生、地域活性化への貢献を目指す。
なお、JCBプレモカードでは、地域独自の券面の発行が可能であり、地域活性化のツールとして活用を勧めている。
国内外にアライアンスパートナーを有する強み
2020年までに900億円のインバウンド消費を目指す
今後は、旅行者の決済情報を活用したマーケティングにも力を入れる方針だ。JCBの強みとして、訪日している回数やカードのグレードに応じて、提携先の金融機関と協力し、属性に応じたアプローチが可能な点だ。これは、「国内外にアライアンスパートナーを持っているJCBだからできることです」と杉山氏は自信を見せる。
今後もJCBではインバウンド向けのサービスを強化する方針だ。JCBの海外会員の国内消費は堅調な伸びが続いているが、「2020年までに900億円を目指したい」と杉山氏は意気込みを見せた。