2017年1月18日8:30
EMVCoのフレームワークに沿ってApple Pay対応を実施
JCBでは、2005年から非接触電子マネー「QUICPay(クイックペイ)」を展開している。同社では2016年10月からの「Apple Pay」サービス対応、デビットカードやプリペイドカードとして利用可能な「QUICPay+(クイックペイプラス)」をリリースしたことで、幅広い会員にサービスを利用してもらえる体制が整ったと捉えている。QUICPayの現状やApple Pay対応の仕組み、非接触ビジネスの今後の展開について話を聞いた。
ここ数年、会員の利用件数や稼働率は順調に推移
異形状タイプの稼働率は50%を超える
2016年9月末現在における、QUICPayの決済端末台数は50万8,000台、利用者数は489万会員となる。提携企業と連携した取り組みにより、会員の利用件数や稼働率は順調に推移していたが、Apple Payへの対応開始でさらなる利用増につながった。
「コンビニエンスストアについては一段落しましたが、ドラッグストアやスーパーマーケット、飲食チェーン店などについてはまだまだ取り込みが可能です。また、加盟店では、キャンペーンを実施していただくことで、取扱金額も順調に伸びています」(JCB QUICPay事業推進室長 山田浩之氏)
現状、QUICPayを取り扱うイシュア(カード発行会社)は13社だが、今後はさらに増える予定だ。また、クレジットカードサイズ以外の異形状タイプとして、エクソンモービルの「スピードパスプラス」、ANAの「ANA QUICPay+nanaco」、LDHと連携した「EXILE TRIBE QUICPay(コイン型)」、ウォルト・ディズニー・ジャパンと提携した「QUICPay for ディズニー★JCBカード」等を発行しており、約100万会員を有している。
山田氏は、「異形状タイプの稼働率については50%を超えるなど、順調に推移しています。特にスピードパスプラスは、これまでガソリン給油が中心だった利用が、スーパーマーケットやドラッグストアなど利用可能な加盟店を認知いただけたことで稼働率だけでなく取扱高も伸びています」と成果を口にする。また、「異形状タイプの最大の特徴は、お財布を出さなくても支払いができるということ。これはモバイルでの決済にも通じる話です」と続ける。
なお、これまでQUICPayモバイルに対応したスマートフォンは、Androidのみだったが、Apple Payの対応により、今後は大幅な増加が見込まれる。
「2005年からQUICPayのモバイル対応は始まりましたが、おサイフケータイの商品性自体は優れており、ひとたび慣れた方は手放せなくなりますが、フィーチャーフォンからスマートフォンになっても閾値が変わりませんでした。また、iPhoneに対応していないことは、そのシェアの拡大とともに課題となっていましたが、Apple Payの開始により、お客様への認知が一気に広がると期待しています」(JCBブランドインフラ推進部長 渡辺貴氏)
日本でのApple PayもEMVCoのフレームワークがベース
「QUICPay+」はデビットカード、 プリペイドカードに対応可能
現行のQUICPayはEMVCoのトークナイゼーションのフレームワークができる前からサービスを行っており、トークナイゼーションの先駆けと言えなくもないが、「米国や英国でのApple Pay同様に、今回の日本でのApple PayはEMVCoのフレームワークに沿った形で実装されています。EMVCoのメンバーでもあるJCBブランドとしては、JTP(JCB Tokenization Platform)というトークンプラットフォームをリリースしており、EMVCoのフレームワークをベースに運用を行っています」と渡辺氏は話す。
なお、JCBがサードパーティのトークンサービスプロバイダとして認めている日本カードネットワーク、IBM、大日本印刷は、国内のイシュアに対してフレームワークに沿ってトークンに関するサービスを提供しているそうだ。
「EMVトークナイゼーションフレームワークでは、プロビジョニング、ライフサイクル管理などがわかりやすく記載されており、国によらずグローバルで適用が可能なものとなっています」(渡辺氏)
国内におけるApple Payの推進では、イシュアによるキャンペーンに加え、わかりやすく、シンプルな仕組みとして会員に紹介することが重要であると考えている。JCB カード事業統括部 次長 森田亮氏は、「おサイフケータイを使っている方の中心はITリテラシーの高い会員層でしたが、Appleはお客様がシンプルに簡単に体験できることをすべてのプロダクトで意識されており、登録のハードルが下がることにより、さらにモバイルユーザーの裾野が広がると期待しています。弊社としても普及を後押しするプロモーションを売っていきたいですね」と意気込みを見せる。
QUICPayの新たな取り組みとして、クレジットカードに限らず、 デビットカード、 プリペイドカードに紐づけての利用も可能となるオンライン決済「QUICPay+(クイックペイプラス)」を開始している。従来のQUICPayでは上限金額が2万円となっていたが、QUICPay+ではそれを超える支払いも可能だ。また、「弊社がトレッサ横浜で展開しているモバイルウォレットではポイントやクーポンなどとの親和性が実証されており、その点からもQUICPay+の可能性は非常に大きいと考えています」と渡辺氏は話す。
海外では「J/Speedy」の発行、HCEの展開を強化
プロモーションを重ね、さらなる利用拡大につなげる
JCBでは、非接触型IC決済サービス「J/Speedy(ジェイスピーディー)」をグローバルで展開しているが、国内で普及しているFeliCa規格のQUICPayがApple Payに対応したのは意義があると感じている。渡辺氏は、「JCBとしてはType A/BもFeliCaもNFCの一部と捉えています。市場に合ったテクノロジーをサポートしていくことが重要だと考えています」とした。
なお、J/Speedyについては、ジャックスが「ジャックスカード J/Speedy」を発行している。また、海外でも台湾で「J/Speedy」が発行されている。今後は、海外の加盟店を拡大するとともに、インバウンド決済として国内で広がる可能性もある。さらに、クラウドで機密情報を管理するHCE(Host Card Emulation)に関しては、デンマークにおいてNetsが提供しているデビットカード機能付きキャッシュカード「Dankort(ダンコート)」に対応したモバイル決済の導入が予定されている。
山田氏は最後に、「おサイフケータイ、Apple Pay、異形状、QUICPay+など、プロダクトは埋まりましたので、プロモーションを重ね、さらなる利用拡大につなげていきたいですね」と語り、笑顔を見せた。