2017年3月10日6:10
デビットカードでは取り込めなかったユーザー、利用シーンを開拓へ
楽天銀行はジェーシービー(JCB)と提携し、2017年1月16日より「楽天銀行プリペイドカード(JCB)」の発行を開始した。日本の銀行が、国内外で利用可能なプリペイドカードを発行するのは、初めての例となる。同行は「楽天銀行デビットカード」も発行しており、こちらもまだまだ利用拡大が見込める。口座保有者にはプリペイドカードとデビットカードの両方を持って、シーンや用途によって使い分けてもらいたい考えという。
決済方法のバリエーションを拡充
口座利用のメリットを高める
楽天銀行がプリペイドカードの発行に踏み切ったのは、決済手段のバリエーションを増やすことで、同行に口座を持つメリットを高めるため。後払いのクレジットと、都度払いのデビットをラインナップしている銀行は少なくないが、前払いのブランドプリペイドカードに関してはノンバンクが先行しており、この機能を搭載した銀行系カードはこれまでなかった。楽天銀行はこれをいち早く取り入れることによって、他行との差別化を図り、ブランド価値を向上させたい考えだ。
「楽天銀行プリペイドカード(JCB)」の年会費は永年無料。発行手数料も無料だ。16歳以上の楽天銀行の個人普通預金口座保有者であれば、申し込みができる。
国内および海外のJCB加盟店(インターネット上でのオンラインショップを含む)で利用でき、繰り返しチャージ可能だ。
チャージは、楽天銀行口座からの振り替えによって行われる。1,000円以上30万円まで、1円単位でチャージできる。あらかじめ設定した残高以下になると口座から自動的にチャージされる、オートチャージ機能も付帯している。
チャージ金額に応じてプレミアムバリューが付く仕組みで、1回のチャージ金額が5,000円以上9,999円以下の場合は25円分、1万円以上2万9,999円以下の場合は70円分、3万円以上4万9,999円以下の場合は240円分、5万円以上は500円分が付与される。
ただし、「楽天銀行デビットカード」やクレジットカードの「楽天カード」とは異なり、利用時に楽天スーパーポイントは付与されない。決済方法によって特典を変えることで、幅広い層のさまざまなニーズに応えていきたいとしている。
デビットカードとの使い分けを推奨
利用単価は電子マネーとデビットカードの中間
スタートから間もないため、利用動向の分析などはこれからといったところだが、新規口座開設者をはじめ、「楽天銀行デビットカード」の会員など、さまざまな顧客から好反応を得て、入会者数は順調に拡大しているという。
「楽天銀行プリペイドカード(JCB)」は、16歳から申し込めること、万一紛失するようなことがあってもチャージされている金額以上のリスクがないことなどから、デビットカードやクレジットカードよりも入会のハードルが低い。
「これを“入門編”と位置付けて、幅広い層の会員を獲得し、段階的にデビットカードの利用などにも結び付けていければと思っています」(楽天銀行 営業統括本部 営業企画部 カードチーム 余語圭介氏)
デビットカード自体も、まだまだ伸び盛りだ。どちらか一方ではなく、プリペイドカードとデビットカードの両方を持って、シーンや用途によって使い分けてもらいたいと同行では考えている。
さらに楽天グループでは、前払方式として電子マネーの「楽天Edy」の運用も行っている。同決済手段と比較すると、「楽天銀行プリペイドカード(JCB)」の利用単価は、電子マネーとデビットカードの中間。これは当初の想定通りであったが、他ブランドのプリペイドカードと比べると平均利用単価が高いのが特徴だという。
チャージの都度、プレミアムバリューが付与されるため、こまめにチャージする人が多く、これが利用促進にも結び付いている模様。オートチャージ機能を利用している会員も少なくない。
同行では会員の利便性向上のため、チャージチャネルの拡大を検討したいとしているが、一方で収益性の確保も重要な課題だ。例えばコンビニ店頭でチャージできるようにすれば、コンビニでの少額利用が増えると予想され、現状では高めで推移している利用単価が低下することも考えられる。同行ではこれらを併せながら、今後の方向性を決定していく意向である。