2017年3月27日8:00
札幌の玄関口で地元客・観光客双方の利便性を充たす決済環境を
JR札幌駅に直結する大型の商業施設「JRタワー」。売上規模952億円(2015年)を誇る4つのショッピングセンターには、なんと600超のショップが並ぶ。そのバラエティの豊かさと便利さから、地元客から観光客にまで人気の高いスポットだ。運営会社の札幌駅総合開発は、共通ポイントや電子マネーの普及等を通じ、買い物環境の整備に日々邁進している。
4施設共通のポイントやクレジットカード事業が好調
カード売上も順風な伸び
札幌のランドマーク、JRタワーは、札幌駅の高架化にともなう南口再開発事業により2003年に開業。アピア・エスタ・パセオ・札幌ステラプレイスの4つのショッピングセンターを含む複合施設だ。もともと4施設はそれぞれ別の会社が運営していたが、JR北海道のグループ会社である札幌駅南口開発が2005年10月に他の3社を合併し、社名を札幌駅総合開発と変更。施設総称は「JRタワー」とし、包括的なマネジメントを行っている。
2006年にはポイント機能や電子マネー機能を組み込んだ「JRタワースクエアカード」を発行開始。Kitaca一体型の「JRタワースクエアカード Kitaca」、iDとQUICPayを搭載した「JRタワースクエアカード iD QUICPay」、KitacaとANAマイレージクラブ機能をプラスした「JRタワースクエアカード ANA Kitaca」の3種をラインナップしている。「2016年10月末で計24万4,000枚を発行しています。JRをご利用のお客様が多いので、やはりKitaca提携のカードが人気です」と、札幌駅総合開発 執行役員 営業本部 営業企画部長 田名部政弘氏は語る。
なかでも「JRタワースクエアカード ANA Kitaca」には、ANA国内線の「スキップサービス」を搭載。事前にウェブサイトで航空券を予約・購入しておけば保安検査場でカードをタッチするだけで搭乗できるサービスだ。同カードはポイントとANAマイルのどちらを貯めるか選択でき、相互交換も可能。年会費は初年度無料、次年度以降は1,000円(税別)だがメインカードとしての人気が高く、「2016年6月の実績で、稼働率はANAのカードが最も高く60%を超えています」と、同部 カード事業チーム サブ・リーダー 平林雄一氏は表情を和ませる。
なお、カード会員属性は25~35歳が中心と比較的若く、8割以上が女性だ。JRタワー内でのクレジットカード利用時には、通常の2倍の100円につき2ポイントが付与される。年間のカード利用金額に応じたポイントプレゼントのほか、優待セールなどの会員還元にも積極的だ。年間20万円以上の利用で進呈している、地上160mから市内を一望できるタワー38階の展望室「T38」の年間パスも好評だという。今後も会員優待をより手厚くし、カードを使うメリットを拡張したいと考えている。
2016年には銀聯カード決済サービスを一挙導入
nanacoとWAONの取扱開始
2016年には電子マネー決済へのポイント付与を開始し、同年12月からはほとんどのショップにWAONとnanacoも導入。先行のKitaca、iD、QUICPay、楽天Edyと合わせた売上は今のところ全体の1%強に過ぎないが、「電子マネーと現金のポイント付与率は同じなので、nanacoやWAONをお使いのお客様に、新たにスクエアカードをつくっていただく契機になれば」と田名部氏は期待する。
ちなみに2016年10月の売上実績では、楽天Edyが電子マネー全体の27%と高比率だ。「館内にEdyチャージャーを3台設置しています。そこでチャージしてご利用いただいているお客様も多いですね」(平林氏)。興味深いのは交通系ICの比率で、地元のKitacaが11%なのに対し、JR東日本のSuicaが15.2%と高い。PASMOなども含めると交通系は約3割を占め、旅行等で道外や海外から訪れる客が少なくないことを端的に表している。
道の調査では、道内への2015年度の外国人客数は前年度比35%増の約208万人と、統計開始以来初の200万人を突破。電通の「ジャパンブランド調査2016」では、中国、香港、韓国、台湾といった東アジアの国々で、行きたい日本の都道府県として北海道が1位に挙がっており、人気は一向に衰えない。同社でも免税対象店舗の拡大や通訳サービスの導入、Wi-Fi環境の整備などを通じ、インバウンド向けサービスの充実に努めている。
また札幌市のデータでは、2015年度の中国人宿泊者数は55万人を超え、対前年度比約77%の大幅増となっている。こうした動向を受け同社では、2016年10月から11月にかけての決済端末等の刷新に合わせ、銀聯カード決済サービスの一斉対応に踏み切った。2020年に向けて、他の決済サービスや、カードのIC化およびそれに対応できるシステムの導入も検討していきたいとしている。