2017年9月15日7:40
増え続けるインバウンド消費に対応し、決済手段の多様化を図る
開港から20年以上が経過し、近年ますます外国人の利用者数が伸びている関西国際空港では、決済への多様なニーズに応えるためにさまざまな決済手段を導入している。従来から対応していたクレジットカードや銀聯カードに加え、各種電子マネー、Alipay、さらには国際ブランドの非接触決済である「Visa payWave」、「Mastercard コンタクトレス」などを採用することによって、利用者の利便性を向上。さらなるインバウンド消費の活性化を狙う。
アジアからの玄関口として旅客数は年々増加
国際線利用客の3分の2を外国人が占める
1994年9月の開港から23年が経過した関西国際空港(関空)を利用する旅客数は、現在も順調に伸び続けている。2016年度の旅客数は、国内線・国際線を合わせて2,570万人。そのうち約4分の3の1,915万人が国際線の利用者であり、その3分の2が外国人。国際線利用者の7割が日本人だった10年前と比較すると、日本人と外国人の比率は逆転している。
外国人のうち9割以上が、アジアからの旅行客。国別に見ると最も多いのが韓国で、増加率も最も高いという。次いで、中国、台湾の順となっている。
インバウンド観光は2020年に向けて今後ますます増加すると見られ、日本旅行の最後の消費地となる空港においては、外国人、特にアジアからの旅行客の決済の利便性を図ることが急務となっている。
外国人の利用額が最も多いのは銀聯カード
顕著な伸び率を示すAlipay
旅客数では韓国人が最も多いものの、購買額が最も多いのは中国人。2015年度上半期にピークを迎えた“爆買い”ブームが沈静化した後も、中国人が消費をけん引する傾向に変わりはない。
関空ではかねてより、Visa、Mastercard、JCB、American Expressといった国際ブランドのクレジットカードに加え、銀聯カードに対応し、中国人旅行客の利便性を図ってきた。銀聯カードは客単価の高い免税店での利用が多いこともあり、関空内の商業施設においては全決済手段の中で最も利用額が高くなっている。
中国人旅行客の利便性をより向上させる目的で、2016年9月にオリックスから導入したのが「Alipay」だ。関西エアポート ターミナル営業部 管理グループ グループリーダー 森裕嗣氏は、「Alipayではクーポンやキャッシュバックなどの特典を提供するプロモーションを数カ月に1度の割合で実施していることもあり、ここ数カ月で急速に利用が拡大しています。導入している国内空港の中でも非常に利用が多いと伺っています」と成果を語る。Alipayは銀聯カードと比較すると、若年層の利用が多く、免税店などに加え、コンビニや喫茶・軽食などの少額決済にも利用されている。QRコードを用い、サインレスで利用できるため、レジの混雑緩和にも貢献している。
「中国人のお客様については銀聯カードとAlipayで、韓国人のお客様については国際ブランドのクレジットカードでほぼ利便性を確保できていると考えています」(森氏)
「Visa payWave」、「Mastercard コンタクトレス」導入
関西統一交通パス「KANSAI ONE PASS」を販売
一方、台湾、ヨーロッパ、オーストラリアからの旅行客の利便性を考慮して導入したのが、国際ブランドの非接触決済である「Visa payWave」、「Mastercard コンタクトレス」だ。三井住友カードから導入した。森氏は、「まだまだ利用は少ないのですが、2020年に向けて世界各国からの旅行客が増え、それに伴ってこれらの利用も伸びていくだろうと見ています」と期待する。
また、日本人向けに導入を進めているのが、各種電子マネーによる決済。従来からPiTaPa、iD、楽天Edyの3種類を導入していたが、2016年3月末に交通系電子マネー(ICOCA、Suicaなど)とWAONを追加した。現在はnanacoを除くほぼすべての電子マネーが利用可能だ。同社では、JR西日本、阪神電気鉄道、阪急電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、大阪市交通局、神戸市交通局、京都市交通局の鉄道9社局、関西経済連合会とともに、関西への訪日外国人旅行者の受入環境整備の一環として、訪日外国人旅行者向け関西統一交通パス「KANSAI ONE PASS」を販売しているが、同空港で購入してから鉄道や電子マネーとして利用されるケースが多い。
現在、関空内の商業施設における決済の約7割が、キャッシュレスとなっている。同港では利用者のニーズをリサーチしながら、今後も一層の決済手段の多様化を図っていきたい考えだ。また、それとともに、店舗が便利に利用できるマルチリーダーの導入を検討していきたいとした。