2018年1月23日11:15
STマイクロエレクトロニクスは、世界を代表するチップベンダーの1つである。同社では、時計や指輪などのウェアラブル機器への適用が可能なboostedNFC技術を搭載した小型非接触モジュール「ST53G」を発表した。
NFC無線通信とセキュア決済用ICを1つのモジュールに集積
「ST53G」の非接触モジュールには、「STS3922 RFブースタ」と「ST31G480セキュア・エレメント」の2つを集積。NFC無線通信と、セキュア決済用ICを1つのモジュールとして提供している。
同社は2016年7月にオーストラリアのamsのNFCおよびRFID事業を買収。これにより、boostedNFC技術を活用可能となった。「STS3922 RFブースタ」は、アクティブ負荷変調(ALM)を使用して、カード・エミュレーション・モードでの通信範囲と無指向性無線通信の性能を最大化させるという。
また、「ST31G480セキュア・エレメント」は、EMVCo、ISO/IEC 14443 TypeAアプリケーション(MIFARE)を搭載している。これにより、Visa、Mastercard 、JCBのアプリケーションを動作可能だ。
腕の反対側でも読み取り可能な通信距離を確保
同モジュールは、小型のため、リストバンドや時計・ジュエリーといったウェアラブル機器への搭載に適しているそうだ。STマイクロエレクトロニクス(Rousset)SAS マイクロコントローラ ,メモリ&セキュア(MMS)グループ セキュア・マイクロコントローラ・ディヴィジョン セントラル・マーケティング ビジネス・デベロップメント・マネージャーのAnne-Laure SIXOU氏は、「boostedNFC技術を活用することにより、非接触ICカード等に比べ距離を確保することが可能です。たとえば、時計などのウェアラブル機器での読み取りの場合、腕を動かし、チップをリーダ側に向ける必要がありますが、腕の反対側でも認識可能です」と説明する。
また、ウェアラブル機器の場合、小型のアンテナを使用する制約が求められる場合もあるが、そういった場合の通信性能を補うことができる。
2018年第1四半期に量産開始、ウェアラブル展開をサポートへ
現在、「ST53G 」はサンプル出荷中となり、「WFBGA64パッケージ」(4 x 4mm)で提供されるという。また、量産は2018年第1四半期に開始する予定だ。STではすでに、複数のカードメーカー、ウェアラブルメーカーと話を進めている。
Anne-Laure SIXOU氏は、「現状、ウェアラブルメーカーの製造工程が追いついていない状態で、本格的な搭載はもう少し先になると思います」と話す。ただし、将来的に、ウェアラブル機器に同モジュールが搭載される機会は増えてくると予想しており、「使い勝手の良い製品ですので、拡大する市場のメジャープレイヤーになりたいですね」と意気込みを語った。
※取材は2017年11月28日~11月30日までフランス・カンヌで開催された「TRUSTECH(トラステック)2017」において。