2018年2月6日9:20
TIプランニングでは、レポート「クレジットカードビジネス市場要覧」を発行する。同レポートではこうした3つのペイメントカードのうち、最も長い歴史を有するクレジットカードについて、その歴史や種類、カードブランドを概観するとともに、各地域での状況について取り上げている。今回は、【はじめに】から、クレジットカードとデビットカード、プリペイドカードの3つの決済方法のペイメントカードについて紹介する。
3つの決済種別の形態と決済方法は?
クレジットカードには、自店のみで使えるハウスカードと、VisaやMastercard、JCBブランドなどのサードパーティのクレジットカードがある。デビットカードにはATMカードをベースにバンクPOSデビット機能が搭載されたオンラインデビットのほか、国際ブランド搭載のオフラインデビットカードがある。プリペイドカードには自店のみで使えるクローズドループのプリペイドカードのほか、国際ブランド搭載のオープンループのプリペイドカードがある。
3つのペイメントカードによる決済方法は、CP(Card Present)ベースでカードを提示し、POSカード決済端末機を通じて決済する手段のほか、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードをモバイル財布と紐づけて、NFC(Near Field Communication)を用いて行うモバイルペイメントやQRコードによるモバイルペイメント、あるいはPay Palに代表される電子財布に紐づけてCNP(Card Not Present)ベースで行う代替オンラインペイメントといった多様な決済手段がラインナップされている。
クレジットカードの資金ソースは銀行など金融機関のクレジット口座に設定されたクレジットラインであり、欧米のVisaやMastercardなどのバンククレジットカードの多くは、一般にこのクレジットラインに併せてリボルビングというファイナンス機能が付帯されている。一方、デビットカードは、オフラインデビットは主として小切手口座と、オンラインデビットカードは主として預金口座とリンクして発行される。デビットカードの資金ソースは、小切手口座や預金口座の資金+当座貸越というファイナンス機能である。プリペイドデビットカードの資金ソースは、プリペイド口座へロードされた資金で、その多くは銀行のプリペイドカード専用口座にリンクして発行されている。オン・オフのデビットカードのように公的な預金保険が付帯された小切手口座や預金口座を持つ必要がないので、Underbankedと呼ばれる銀行口座を有しない低所得者層や移民、未成年者にも発行が可能である。
クレジットカードの決済限度額は、与信審査によってカードホルダーごとに与えられるのに対して、デビットカード決済限度額は小切手口座や預金口座の資金の範囲内で、別途定められるケースが多い。プリペイドカードでは、ロードされたバリューの範囲で、プリペイドカードプログラムごとに、年間決済限度額や月次の決済限度額が設定されるケースが多い。
クレジットカードは与信を行うため、新規カード発行時やカードの更新時期、その他途上与信調査時などに信用情報チェックが行われるのに対して、デビットカードはカード発行にかかわる審査などは行われないものの、小切手口座開設時などには信用情報チェックなどの審査が行われる。プリペイドカードは、信用情報チェックは行われない。
EMVスタンダードのクレジットカードは、カード決済時の認証(本人確認)をPIN(暗証番号)またはサインの照合で行う。デビットカード認証(本人確認)は、EMVスタンダードのオフラインデビットカードやプリペイドカードの場合はクレジットカードと同様にPIN(暗証番号)またはサインの照合で行われ、オンラインデビットカードの場合はPIN(暗証番号)による。
クレジットカードのATMへのアクセスはキャッシングサービス(キャッシュアドバンス)の利用が大半で、その頻度は低いが、デビットカードはATMからの預金引き出しができるATMカード機能が付いているため、ATMへのアクセス頻度は多い。プリペイドカードは、プログラムによりロードされたバリューをATMから現金で引き出すことが可能である。
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クレジットカード |
デビットカード |
プリペイドカード |
支払いのポイント |
Pay After後払い |
Pay Now同時払い |
Pay Before後払い |
請求の有無 |
請求に基づいて決済 |
請求なしに口座決済 |
請求なしに決済 |
クレジットカードでは提携カードによるマーケティングも
クレジットカードでは、企業などと提携し、カスタマー・ロイヤリティ・プログラムを付帯したコブランディドカード(企業や団体と発行するマーケティングを主な目的とした提携カード等)の発行によるマーケティンが盛んである。一方、デビットカードは、通常特定の銀行口座にリンクして発行されるため、コブランディドカードの発行はクレジットカードに比べて少ない。プリペイドカードは、特定の銀行預金口座などにリンクすることなく、与信審査なしで発行することが可能であり、今後多くのコブランディドカードの発行が見込まれる。
同窓会や慈善団体、組合など各種団体とタイアップしてオリジナルの提携カードを発行するアフィニティカードは、コブランディドカードと同様にクレジットカードでは見受けられるが、特定の銀行口座にリンクして発行されるデビットカードではその例は少ない。プリペイドカードは、特定の銀行預金口座などにリンクすることなく、与信審査なしで発行することが可能であり、今後多くのアフィニティカードの発行が見込まれる。
イギリスやカナダ、オーストラリアではEMV化が進む
クレジットカード、デビットカードのEMV ICカード化が進められ、イギリスやカナダ、オーストラリアなどにおけるVisaやMastercardなどのクレジットカードやオフラインデビットカード、ナショナルデビットカードのほぼすべてはEMV ICカードへの移行が完了している。プリペイドカードについても、EMV ICカードへの移行が進められている。欧米やアジアの国を中心にクレジットカードやデビットカード(オフラインデビットカード)、プリペイドカードに、Visa pay WaveやMastercard Contactlessなどのコンタクトレスペイメント機能の搭載が進められている。
クレジットカードは紙ベースの請求書またはオンラインベースの請求に基づいて、ダイレクトデビット(口座振替)による代金決済が行われるのに対し、デビットカードやプリペイドカードは請求の通知なしに、口座から資金の振替が行われる。また、利用履歴はクレジットカードが請求書で開示されるのに対して、デビットカードは口座の取引明細で開示し、プリペイドカードの多くはウェブサイト上で無償で照会することが可能なほか、有償で紙の利用履歴を請求するオプションが提供されるケースもある。