2018年5月7日8:00
クラウドサービス・POSレジ販売事業を展開するデジジャパンは、クリーニング業界に向けたスマートフォンアプリサービスやカード決済サービスを強化している。専用アプリ「ASTEMPO SMART(アステンポ スマート)」を通じてスマホで会員情報を一本化し顧客の利便性向上や囲い込みにつなげるほか、これまで業界で浸透していなかったネット経由のクレジットカード決済を導入。並行して無人の「受付・返却ボックス」設置サービスも強化していく。
ネット宅配需要高まるクリーニング業界
危機感抱く実店舗に利便性を提供
クリーニング業界では大手ネットモールなどを通じたネット宅配が伸びていて、実店舗を運営する一般のクリーニング店は危機感を抱いている。さらに同一エリアに店舗が乱立し固定客を掴むことが困難ということもあり、ネット宅配と同様の利便性を提供したり、店舗独自のサービスで顧客を獲得・維持できるような施策やツールが求められていた。デジジャパンはこれらを踏まえ、2015年6月に業界初のスマートフォンアプリサービス「アステンポ スマート」の提供を開始。デジジャパン クリーニング営業部 シニアマネージャー 一柳和彦氏は、「実店舗経由のため事業者の顔が見えるという優位性に加え、会員証・預かり証・ポイントカードなどをスマホで一元管理し利用客の利便性向上につなげることで、売り上げ・集客アップに貢献できるようにしました」と説明する。
企業独自のスマホアプリを提供するサービスであり、複数のクリーニング店舗を持つチェーンの場合は利用客情報の一本化も可能。アプリには会員証をはじめデータで送られた預かり証情報も搭載され、返却履歴も確認できることから、引き取り忘れ防止にも役立つ。またスマホのログイン画面など目に付く箇所にセール情報やクーポン、ポイントなどの情報をプッシュ通知で配信できるため、利用客を囲い込むコミュニケーションツールとして威力を発揮。アンケート機能で利用客ニーズを分析し、サービス改善や顧客満足度向上につなげることもできる。情報をアプリに集約するため、会員証や預かり証、セールハガキなど紙ベースツールのコスト削減も果たせる。
クレジットカード決済機能を追加可能
利用客のカード決済ニーズに対応
「アステンポ スマート」の利便性をさらに高めることになったのが、2017年5月に追加されたオプション機能のオンライン決済システムであり、導入店舗はオンライン上でクレジットカード決済ができるようになった。冬物衣類をまとめてクリーニングに出す時期などは代金がかなり高くなるため、もともと利用客側のカード決済ニーズは高かったという。
またシーズンの変わり目には店舗が混雑しスピード受付が求められるので、衣類をバッグに入れたままカウンターに置いて帰ってもらえるようなシステムを検討していた。店員が対応できないため料金の支払いがネックだったが、アプリへのカード決済機能の導入で解消した。置かれた衣類を後で店員が検品し、染み抜きなど加工オプションをした際の加算料金も含めて金額を表示してアプリに送付。利用客が確認して承諾すれば作業に回し、合計金額を請求してカードで決済してもらう。利用客は預かり証や引き取り可能期日をアプリで確認し、店舗に取りに行く仕組みだ。
デジジャパンでは、スマホアプリを使ったカード決済運用は今後さらに進むとみている。最近増加している店舗や店員を介さない「無人受付・返却ボックス」を利用する人が増えれば、カード決済の利用客も増すからだ。同社は「無人返却ボックス」の設置サービスも実施。クリーニング店舗前などに置くことで、営業時間外でも利用客が引き取れるようにした。5扉仕様からのロッカータイプで、引き取り日に応じて店舗のレジが制御して各扉に利用客ごとの衣類を収納、スマホの専用バーコードで取り出してもらう。
2018年春には「無人受付(預かり)ボックス」もリリース。業界で無人ボックスサービスはまだそれほど多くはないが、定着すれば人手不足解消や時間外利用客の利便性向上につながる。「無人受付・返却ボックス」の場合もアプリの活用により、検品・料金情報や預かり証の発行、さらにカード決済までの一連作業が非対面で完結する。
一柳氏は、「ハウスプリペイドカードを使ったサービスにも着手しており、企業独自の電子マネーを利用客があらかじめクリーニング店舗でハウスプリペイドカードにチャージしておき、無人ボックスに預けた際に同カードでクリーニング料金を支払う仕組みとなっています」と話す。
約100店がアプリを導入
2018年は200店舗の開拓を目指す
現在、約100店舗が「アステンポ スマート」を導入しており、2018年は新たに現在の2倍となる200店舗の開拓を目指す。利用客がアプリ会員になる割合は多い店で40~50%で、こちらも増やしていきたい考えだ。決済サービス機能を追加した店舗はまだ10%程度にとどまるが、クレジットカード決済手数料はかかるものの店舗独自で契約するよりは安価であり、顧客ニーズや社会の流れから増加を見込んでいる。また、顧客単価が高いビジネスマンなどのヘビーユーザーの囲い込みにつながることに期待している。