2018年9月25日8:00
銀行・カードブランドとの連携拡大、イン&アウトバウンド・サービスの拡充、決済にとどまらない新機能の追加も予定
スマホ決済サービス「Origami Pay」を展開するOrigamiは、9月20日、同社の事業戦略を発表する「Origami Conference 2018」を、東京・六本木ヒルズのアカデミーヒルズにて開催した。2016年にスタートした「Origami Pay」のこれまでの歩み、現状、目指している未来が、Origami 代表取締役社長の康井義貴氏などから具体的に語られた。
スマホ決済普及に弾みをつけるため投資ファンドから新たな資金を調達
Origamiは2012年の設立以来、「お金、決済、商いの未来を創造する。」とのミッションのもと、モバイル上の金融プラットフォームを提供することによって、キャッシュレス化を推進してきた。主要サービスの「Origami Pay」は2016年より展開。全国のコンビニ、ファストフード、タクシー、百貨店など多岐にわたる業種・業態に導入が進んでいる。
日本国内のオンライン決済市場規模は約14兆円。これに対してオフライン(店頭)決済市場規模は約140兆円。このオフライン市場のキャッシュレス化比率を、現状の20%程度から40%、さらには80%へと引き上げる牽引力となると期待されているのがスマホ決済だ。とはいえ、スマホ決済はキャッシュレス決済の中でもまだまだ比率が低く、市場に浸透するのはこれから。普及に弾みをつけるため、「国内外の多様な企業とパートナーシップを組んで、ともに事業を前に進めていきたい」と、康井氏は力を込めた。基本戦略として掲げる3つのキーワードは「オープン」「グローバル」「ローカル」だ。
経済産業省、内閣官房を経て同社 社長室ディレクターとなった桑原智隆氏は、「政府が『未来投資戦略2018』の中で掲げている未来の社会のあり方、『Society5.0』の担い手になりたい。日本の経済成長、社会問題解決に貢献することが重要です」と、Origamiのミッションについて補足する発言をした。
同社はミッション遂行に向け、財務基盤強化のため、3度目の大型投資であるシリーズC投資ラウンドとして、DG Daiwa Venturesが運営する投資ファンド「DG Lab1号投資事業有限責任組合」(DG Labファンド)からの66.6億円の資金調達を実施した。これまでの投資ラウンドの累計は88億円となる。
また、拠点も、これまでの東京、大阪に加えて、福岡、仙台、名古屋、さらに海外の香港、米国に開設する計画だ。
銀行・クレジットカードブランドとの連携を拡大
加盟店ネットワークは今年度中に国内10万店を目指す
同社 事業開発ディレクター 伏見槙剛氏は、事業拡大戦略の進捗状況として、銀行およびクレジットカードブランドとの新規の連携を発表した。
銀行については、すでに連携済みのみずほ銀行、三井住友銀行、大垣共立銀行、青森銀行に加えて、ゆうちょ銀行、SBJ銀行(10月以降開始予定)、じぶん銀行、静岡銀行(8月開始)、第三銀行(8月開始)、北越銀行、三重銀行(8月銀行)、みちのく銀行の8行と新たに連携。各銀行口座をOrigamiアプリに登録することで、店頭での「Origami Pay」決済の際、リアルタイムに預金口座から代金を引き落とすことができ、あらかじめチャージしておく必要がない。
クレジットカードブランドについては、すでに連携済みのVISA、Mastercardに加え、アメリカン・エキスプレス、JCB、Diners Club、Discoverの4ブランドと新たに連携する。Origamiアプリにこれらのクレジットカードを登録することで、「Origami Pay」とクレジットカードを直接結び付けることができ、ユーザーは「Origami Pay」での支払いで、Origamiのクーポンや割引などの特典を受けながら、クレジットカードのポイントなども同時に享受することができる。
一方、加盟店ネットワークの拡大にも力を入れており、今年度中に国内で10万店達成を目標としている。
デジタルイノベーションで地域商店街を活性化
グローバルでは銀聯の750万店の加盟店での利用が可能に
Origamiは、「Origami Pay」の導入を加速するため、新たな協業パートナーの獲得にも積極的だ。
例えば、加盟店の導入費用や月額固定費が無料、専用機器も不要なリクルートライフスタイルの「AirPAY QR」とのサービス連携を行い、導入のハードルを下げた。
また、全国261、店舗数7,341の信用金庫の業務支援を行う信金中央金庫と提携。信用金庫が持っている地域ネットワークを生かし、小規模小売、飲食、サービス業などで「Origami Pay」が使えるようにし、キャッシュレス化の促進を図る。「Origami Conference 2018」では信金中央金庫 専務理事の須藤浩氏が登壇し、「スマホを活用したデジタルイノベーションを推進することで、地元商店街の“にぎわい”を取り戻したい。Origamiとの連携はその一環」と意気込みを語った。
この信金の取り組みが、Origamiの基本戦略である「ローカル」にフォーカスしたものとすれば、一方の「グローバル」を強力に推し進める取り組みのひとつが、ユニオンペイインターナショナル(銀聯国際)との資本業務提携だ。Origami インターナショナル/法務ディレクター マックス・マッキー氏は、「2019年第一四半期までには、世界24の国と地域の750万超の店舗で、銀聯QR決済のネットワークを活用した『Origami Pay』での決済を実現します」と説明。国内においても、Origami加盟店での銀聯QR決済が可能となる。
協業パートナーの事例紹介として壇上に上がったユニオンペイインターナショナル プロダクト責任者・総経理 ボミー・シェン氏は、「日本でのビジネスチャンスの拡大に大いに期待しています」と語った。
インバウンドサービスとして、Origamiは、台湾のペイメントサービス、JKOPAY(街口支付)との連携も進めることにしている。
金融サービスプラットフォームをオープン化
パートナー企業とともにキャッシュレス化の早期実現を目指す
「Origami Conference 2018」で、Origamiはさらに、同社の金融サービスプラットフォームを幅広い企業に広く解放する「提携Pay」を開始すると発表した。
近年、便利・お得・安心に使えるスマホ決済サービスへのニーズが高まるとともに、事業者からは、各社がそれぞれ新たに決済サービスを開発するのではなく、共通して活用できるプラットフォームがほしいという声が多く聞かれるようになっている。こうした中、Origamiでは、独自に構築した加盟店ネットワーク並びに支払い手段等をオープンにし、パートナー企業とともにキャッシュレス社会の早期実現を目指す。
「提携Pay」では、Origamiが提供するSDK(ソフトウェア・デベロップメント・キット)をパートナー企業が自社アプリなどに組み込むことで、当該アプリのユーザーがOrigamiの加盟店ネットワークや支払い手段を活用して決済を行えるサービスを提供する。
今後は決済機能に加えて、新たな金融サービスを展開していく予定であり、これらの新機能についても広くパートナー企業に解放していくという。
それらの新機能のひとつは、BtoCのみならず個人間送金なども可能な「Origami Wallet」で、年度内にリリース予定。ほかに、リリース時期は未定だが、最適な販促策を提案する「Origami Coupon」、資産運用のための「Origami Trade」、与信機能を提供する「Origami Credit」などを開発中。これら多様なサービスを有機的に組み合わせ、総合的な金融サービスの展開を目指す。