2018年10月11日7:30
東京大学は、2018年8月1日付で「次世代個人認証・行動解析技術社会連携講座」を設置し、 10月10日の公開シンポジウムを皮切りとして、 2023年7月31日まで5年計画の活動を開始すると発表した。社会連携講座などの経費は約3億1,300万円。連携機関は、三菱UFJニコス、凸版印刷、三菱電機インフォメーションシステムズ、日立製作所となる。
知識・所持・身体的特徴に続く第4の認証技術
人の生活に寄り添った認証を目指す
「次世代個人認証・行動解析技術社会連携講座」は、2013年にソーシャルICT研究センターに設立された、三菱UFJニコス寄付講座である「次世代個人認証技術講座」における研究方針および研究成果を引き継ぎ、社会イノベーションの先導を目指すものだ。「次世代個人認証技術講座」は、安心・安全で、利便性の高いeコマースの実現等を目指して、 2013年4月~2018年3月末まで東京大学に設置された。
東京大学 ソーシャルICT研究センターでは、情報セキュリティはとても重要な位置を占めており、個人認証技術の確立が肝要と考え、知識・所持・身体的特徴に続く第4の認証技術の確立に注力している。現状の個人認証システムは、安全性や利便性に課題があると考えており、第4の認証技術として行動履歴データを活用した認証を提案している。その際に、多要素認証として複数の要素を組み合わせる必要があるとした。
AIの今後のあるべき姿として、個人の生活習慣(ライフスタイル)を解析することで、個人の生活を安全・快適にする必要があるそうだ。これにより、効率化重視の考え方だけではなく、人の生活に寄り添った技術を提供していきたいとしている。
ライフスタイル認証ではハンズフリーチェックインが可能
2018年はFIDO認証との連携を視野に
ライフスタイル認証では、パーソナライズサービスに加え、ハンズフリーチェックインが可能だ。例えば、 スマホの位置情報を使い、自宅や職場など普段の行動範囲から離れていないか、いつもと違う行動をしていないかなどを判定することで認証を行う。
東京大学大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センター 特任准教授 山口利恵氏によると、2018年は、スマートフォンデータによる認証に加え、FIDO(Fast IDentity Online)認証との連携、2019年は、認証局を活用した認証、ID連携・データベースを活用した認証などを検討する予定だという。すでにFIDOの関係者とは情報交換を行っている。
本人の行動を解析することで不正対策をより強化
2020年を契機に世界に発信する技術を目指す
例えば、インターネット上でのクレジットカード決済は、セキュリティの観点では万全とは言えない状況にある。三菱UFJニコス 常務執行役員兼チーフ・テクノロジー・オフィサー 鳴川竜介氏は、トランザクションの動きを見て不正な取引を判断する「リスクベース認証」や動的認証などに加え、本人の行動を解析するライフスタイル認証をプラスすることで、将来的に不正対策がより有効になると期待を寄せた。
今後は、東京大学での基礎研究をベースに、三菱電機インフォメーションシステムズや日立製作所がシステム研究所を行い、三菱UFJニコスや凸版印刷が実サービスの展開を検討していく。
山口氏は、2020年を契機に、「日本から発信して世界で利用される情報セキュリティ技術をつくれたらいいと考えています」と語った。