2018年11月5日8:00
Mastercard(マスターカード)は、2018年11月1日、同社ジャパンオフィスに設置されたペイメントテクノロジーがもたらすサービスを体験できるデモエリア「Mastercardイノベーション ショーケース」を公開した。
「Mastercard Labs」を2010年に立ち上げる
未来の決済シーンに取り込めるサービスを研究・開発
1966年に設立されたMastercardは、国際ペイメントブランドとして、これまでクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどのインフラを提供しているが、「イノベーションとテクノロジーカンパニーとして動いています」とMastercard イノベーションマネジメント マネージャー 福盛 雄也氏は話す。Mastercardでは、研究施設の「Mastercard Labs」を2010年に立ち上げ、決済関連企業やイシュア(カード会社)と連携して、市場でもいち早くイノベーションへの取り組みを行ってきた。
Mastercard Labsのグローバル統括本部はアイルランドのダブリンにあり、数百人単位で仕事をしている。また、世界中にテックハブがあるそうだ。Mastercard Labsでは、スマートフォンアプリ、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の活用、チャットボットへの決済機能搭載、車載での活用、店舗のオムニチャネル化など、将来の決済に取り込めるサービスの研究を行っている。福盛氏は、「日本でもアクティビティをどんどん展開して、得られた気づきを還元していきたいです」と意気込む。
自動販売機でのQRコード決済はシンガポールでローンチ
スワロフスキーとVRによる決済を公開
Mastercardでは、Mastercard Japanオフィス内にデモエリア「Mastercardイノベーション ショーケース」を設けている。自動販売機でのQRコード決済は、シンガポールのコンビニエンスストア「SPH」でリリースされたものを日本向けに展示している。利用者は、アプリを立ち上げ、自動販売機のQRコードをスキャンして商品を購入できるが、アプリの裏側にはウォレットが紐づいており、パートナーの銀行から自身が使うカードを選択可能だ。利用者の決済が完了すると、レシートがeメールで届く。Mastercard デジタルペイメント&ラボ担当副社長 デビッド・ケル (David Kell)氏は、「自販機とモバイルのペアリングはQRコードとなりますが、オーソリ後に飲み物を出す仕組みはBluetoothで行われます」とした。なお、同自販機に表示されるQRコードはEMVのグローバル標準となっている。
VRは、スワロフスキーと連携した取り組みを紹介した。これは、2017年に米国・ラスベガスで行われたイベント「Money20/20」で公開されたもの。VRをまとった人は、架空の部屋に表示された矢印に目の焦点を合わせるとページを遷移できる。スワロフスキーの商品が並んだ部屋で「+タグ」が付いている商品に目の焦点を合わせると、当該商品の説明が表示される。利用者が当該商品を気に入った場合、商品をバーチャル空間で購入可能だ。
「Dream Home」では、ARのアプリを利用したデモを実施。家具の購入のデモでは、まず自身の家のリビングの平面やサイズをスキャンして測定し、そこに椅子やテーブル、ソファなどを置いた場合のイメージを把握できる。家具はカラーの種類なども変更して試すことができる。ARを使用しているため、リビングを違う角度から見た場合の家具の配置イメージを確認可能だ。
試着から決済まで可能なスマートミラー
車載機ではドリンクの予約から店舗のルート案内まで可能に
スマートミラーのデモは、米国・カリフォルニア州のスタートアップであるオークラボと共同で構築した。ファストファッションのフィッティングルームなどに設置したスマートミラーを使って、シャツやネクタイの試着体験ができるものだ。商品には、それぞれRFIDタグが付いており、検知してミラーに表示。ミラーは、多言語対応となり、色やサイズなどを変更することも可能で、リクエストアイテムを押すと、店員が商品を持ってきてくれる。さらに、「ナイトクラブ」「夕暮れ時」等のシーンにおいて、どのような着こなしのイメージとなるかを把握できる。支払い時には、Mastercardコンタクトレス機能が利用可能なカード、モバイル、ウェアラブルなどで決済可能だ。
車載機によるデモでは、スマートフォンアプリを用い、車から飲食店のドリンクを予約したり、予約後にルートを表示させることが可能だ。また、給油、駐車場の支払いなども可能となる。なお、Mastercardでは、2016年10月にGeneral Motors(GM)との連携を発表している。
世界のスタートアップ企業をサポートする「MasterCard Start Path」を展開
スタートアップ企業とイシュアがWin-Winになれる関係を目指す
Mastercardでは、2014年から、設立間もないイノベイティブなスタートアップ企業をサポートするため、「MasterCard Start Path(マスターカード・スタートパス)」を世界規模で展開している。Start Path Global参加企業は、Mastercardネットワークから常時、バーチャルな支援を受けることが可能だ。
日本からもマネーツリー(Moneytree)が第一期生として同取り組みに参加した。Mastecard Labsでスタートアップに対し、実験の環境を提供することはもちろん、金融機関の要望に応えられるようなベンチャーを紹介し、両社がWin-Winになる関係を目指しているそうだ。