2019年2月27日8:00
レポート「キャッシュレス2020」では、オンラインプリペイドカードの動向を紹介している。今回はその中から、中国の動向の一部を紹介したい。
「単一用途カード」「多用途カード」に分けられる
中国のオンラインプリペイドカードは、「単一用途カード」と呼ばれるデパートなど個々の企業でのみ使えるクローズドループのプリペイドカードと「多用途カード」と呼ばれる複数の企業で使えるオープンループのプリペイドカードに分けられる。単一用途のクローズドループのプリペイドカードは日本の経済産業省にあたる商務省が所管し、多用途のオープンループのプリペイドカードは中央銀行である中国人民銀行の所管となっている。
「単一用途カード」「多用途カード」ともにバリューがリロードできない使い切りのディスポーザブル方式とバリューを再補充することができるリロード方式がある。クローズドループのプリペイドカードは本人の特定ができる記名式カードと特定ができない無記名式がある。従来の紙の商品券やギフト券と同様の機能や用途であるクローズドループのプリペイドカードは、無記名カードであるケースが多かったが、賄賂など不正な目的に利用されるケースが増加したために、現在法令で無記名式のカードの発行金額に上限が設けられている。また、中国でも従来デパートなどで発行されていた紙製の商品券やギフト券は、アメリカと同様に単一用途のクローズドループのオンラインプリペイドカードに取って代わられている。
中国の多用途のオープンループのオンラインプリペイドカードには、大きく分けて、ノンバンクのプリペイドカード・サービスプロバイダーがそれぞれのブランドで上海や北京、広州、重慶などの大都市や省単位、あるいは全国規模で発行する“得士カード”や“杉徳カード”、“万通カード”などのプリペイドカードと、銀行などの金融機関やノンバンクの中銀連などのプリペイドカード・サービスプロバイダーが発行する中国銀聯のブランディドプリペイドカードがある。
オープンループのプリペイドカードにもそれぞれバリューがリロードできない使い切りのディスポーザブル方式とバリューの再補充ができるリロード方式があり、ディスポーザブルのプリペイドカードには無記名式カードと記名式カードとがあり、法令で無記名式のカードの発行金額に上限が設けられている。また、リロードができるプリペイドカードは原則記名式で発行されている。中国人民銀行における2012年のマネーロンダリングや贈収賄防止のためのプリペイドカード規制に伴い、多用途のオープンループのプリペイドカードの購入に際しては、実名登録を求めている他、5、000元(約8万円)以上のプリペイドカードの購入においては現金による支払いは認められず、銀行振込などによるものとすると規定されている他、無記名式のプリペイドカードへの資金の移動は許可しないとされている。
従前の前払式証票規正法(プリカ法)が廃止され、2010年4月に新たに施行された日本の資金決済法のように、中国でも中央銀行である中国人民銀行が、2010年6月に非金融機関決済サービス管理法を定め、多用途のオープンループのプリペイドカードの発行を認可制にし、規制強化を図っている。中国の非金融機関決済サービス管理法は、法令の名前の通り多用途のオープンループのプリペイドカードのみならず、第三者型決済サービスビジネス全般の管理・監督の強化を図るもので、規制の対象は「オンライン決済」の他、「モバイル決済」、バンクPOSオンライン決済端末機やセルサービス キオスク端末機を用いたペイメントカードの決済サービス、オープンループの多用途プリペイドカードなど6つの決済関連ビジネス類型がある。
中国人民銀行は、非金融機関決済サービス管理法に基づいて、2011年5月に第1次許可事業者として代替オンライン決済サービスの支付宝(Alipay)や、オンライン決済端末機やセルサービス キオスク端末機を用いたバンクカードの決済サービス事業を行っている拉カ拉(Lakala)など27社を認定したのを皮切りに、以降100社を超える事業者が認定を受けている。
非金融機関決済サービス管理法の第三者決済業務の規制対象外であるクローズドループの単一用途のクローズドループのプリペイドカードについては、商務省が2012年9月に単一用途商業プリペイドカード管理法を施行し、カード発行企業の類型に応じてプリペイドカードのバリュー残高の20%から40%を預託金として特別の商業銀行の口座に引き当てておく措置などの規制を行っている。単一用途のクローズドループのプリペイドカードの発行事業者が事業の中断によるプリペイドカード利用の停止などの消費者問題を引き起こしているケースも少なくなく、中には額面より安くプリペイドカードを短期間に売って資金を集め、その後店を閉じる計画的で悪質な例も多いといわれている。