国内の決済サービス、セキュリティ対策の動向を紹介 支払いツールとして、さらなる浸透が鍵に

2019年3月7日10:00

国内において、2018 年はかつてないほどキャッシュレス決済が盛り上がりをみせた1 年だった。2019 年以降は、この流れをブームで終わらせないように、その支払い手段を根付かせていく必要があるだろう。総論では、国内のペイメントサービスの動向について概観する。

QR/バーコード決済が乱立
電子地域通貨への活用も

政府発表の民間最終消費支出に占めるキャッシュレス化比率の公表数値において、日本のキャッシュレス化比率は諸外国より低い2割程度とされている。そんな中、2017年に発表された内閣府の「未来投資戦略2017」では、2027年までに国内のキャッシュレス比率40%を目指すとした。また、2018年4月には、経済産業省から「キャッシュレス・ビジョン」が発表。未来投資戦略のキャッシュレス化比率40%の目標を2025年と2年間前倒しし、将来的に80%を目指すとした。さらに、業界横断組織として「キャッシュレス推進協議会」が2018年7月に立ち上がった。

ペイメントサービスでは、三本の矢として、前払いの「プリペイド」、即時払いの「デビット」、後払いの「クレジット」に分類される。国内のキャッシュレス化の動向をみると、最も利用されているのはクレジットだが、近年ではデビットやプリペイドサービスを展開する発行会社も増えている。各支払い手段の市場動向については、「第5章 国内のキャッシュレス・ビジョン最前線」を参考にしてもらいたい。また、リアルでの支払い時のインターフェースとして、磁気、接触IC、非接触IC、QR/ バーコード、生体認証などが挙げられる。

インターフェースの動向をみると、2018年以降は“QR/バーコード決済サービス”が話題をさらった。QR/バーコード決済サービスでは、中国のモバイル決済サービス「Alipay(支付宝)」、「WeChat Pay(微信支付)」への対応が数年前から大手加盟店や観光地などで行われていたが、国内企業も積極的に参入。NTTドコモの「d払い」、LINE Payの「LINE Pay」、PayPayの「PayPay」、楽天の「楽天ペイ(アプリ決済)」、Amazonの「Amazon Pay」、Origamiの「Origami Pay」、pringの「pring」などの汎用的サービスが登場している。多くの事業者が、利用者の拡大に向け積極的なキャンペーンを展開。20%還元で話題となったPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」はその最たる例だろう。

2019 年2 月20 日には、みずほフィナンシャルグループが地方銀行など60 行の預金口座と連携したスマホ決済サービス「J-Coin Pay」を提供すると発表
 

QR/バーコード決済サービスには、POSに接続したバーコードスキャナーやタブレットのカメラで利用者のQRコードやバーコードを読み取って支払いを行うタイプがまず1つある。国内のQR/バーコード決済が登場した当初、タブレットを用いたシステムを中心にQR/バーコード決済サービスのアクワイアリングが行われていたが、最近ではPOSの大手加盟店向けに複数の決済手段をとりまとめるスイッチングサービスを展開する企業も登場している。すでに、コンビニエンスストア大手のファミリーマート、ユーシーシーフードサービスシステムズ(UFS)の主力業態の上島珈琲店などでは、数多くのQR/バーコード決済サービスを導入している。

KDDI は、2019 年2 月12 日に記者説明会を開催し、スマホ決済サービス「au Pay」等を含め、スマートフォンで金融サービスを強化すると発表。KDDI では、楽天やメルペイと連携

また、QRコードを印刷したPOPをレジなどに設置し、利用者がそのQRコードを読み取ることで支払いを行うタイプも登場しており、中小規模の加盟店にとっては、決済端末の設備投資を抑えることができる。さらに、LINE Payは2021年7月末まで限定で、通常2.45%必要な決済手数料を条件つきで無料、PayPayも2021年9月30日まで無料としている。

Origamiでは、銀行やクレジットカード会社との連携を強化するとともに、同社の金融サービスプラットフォームを幅広い企業に広く解放する「提携Pay」を提供している。「提携Pay」では、Origami提供のSDK(ソフトウェア・デベロップメント・キット)をパートナー企業が自社アプリなどに組み込むことで、当該アプリのユーザーがOrigamiの加盟店ネットワークや支払い手段を活用して決済を行えるサービスだ。

銀行でもQR/バーコード決済の展開に力を入れる。GMOペイメントゲートウェイでは、「銀行Pay」(旧称:銀行口座と連動したスマホ決済サービス)の基盤システムを提供。同基盤システムを横浜銀行、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行・熊本銀行・親和銀行)、りそなグループ3行(りそな銀行・埼玉りそな銀行・近畿大阪銀行)、 ゆうちょ銀行、沖縄銀行、ほくほくフィナンシャルグループ(北海道銀行・北陸銀行)に提供している。

QR・バーコード決済の状況

さらに、BASE子会社のPAYでは、情報処理センターを介すことなく決済サービスと銀行口座直結でQRコードの即時支払いが可能になる更新系APIにおいて、住信SBIネット銀行と連携した。また、エムティーアイの「&Pay」も更新系APIを利用しており、常陽銀行と連携し、北洋銀行とはキャッシュレス実証実験を展開している。

そのほか、岐阜県飛騨・高山地域の「さるぼぼコイン」、木更津市の「アクアコイン」といった電子地域通貨の展開もQR/バーコード決済サービスで展開されている。さらに、近鉄グループホールディングスの「ハルカスコイン」では、ブロックチェーンを活用した電子地域通貨を2度にわたってテストし、実用化に向けた動きを進めている。

なお、乱立するQR/バーコード決済の規格を整理する動きも進んでいる。ジェーシービー(JCB)は、キャッシュレス推進協議会の規格に準拠したQRコード・バーコード決済スキームである「Smart Code」の提供を、今春より開始すると発表した。

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