2019年5月28日8:00
Repro、FROSK、ロケーションバリュー、モンスター・ラボは共同で、2019年5月15日、イベント「アプリの虎 Vol.4 〜有名企業のアプリ活用最前線〜」を開催した。当日は、ファンケル、QVCジャパン、スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイルカンパニーの各担当者がアプリを活用した施策について紹介した。
顧客のLTVを押し上げた「FANCLお買い物アプリ」
アプリの虎は、今回で4回の開催となった。アプリを活用する企業が、アプリ制作に踏み切った背景、開発・運用体制、マーケティングにおけるアプリの役割やその効果を交えながら紹介するイベントとなっている。
最初の講演では、ファンケル 通販営業本部 販売企画部 サイト管理G 萩山 智也氏が登壇した。ファンケルでは、2014年から顧客のライフタイムバリュー(LTV)向上を図るため「FANCLお買い物アプリ」、2016年からオムニチャネル化を目指して「FANCLメンバーズアプリ」を運用している。そのうち、FANCLお買い物アプリでは、EC機能を極限に絞り込み、顧客が簡単に商品を見つけて、素早く購入できる作りこみを意識している。導入後は、ヘビーユーザの利用が圧倒的多数を占め、LTVがアプリ利用前と比較して10%超増加し、単価が高まった。アプリでは、プッシュ通知とアプリ内配信をワンセットで行い、配信数を工夫するなどして、アクティブユーザーは3倍超になったそうだ。
ファンケルでは、アプリはコストを極力抑えたプラットフォームとして位置付けている。また、プッシュ通知は、分散通知にすることで、サーバの負荷がかからないようにした。アプリのプッシュ通知・マーケティングツールとして使用しているReproとは、導入前から何回も打ち合わせをして、どういったシナリオを組めるか、コンバージョンにつなげられるかを議論している。また、クラスタや年代に応じた最適な商品の訴求を実施しているという。
萩山氏は、アプリを運営していく中で会員が求めているものは、「商品のわかりやすさ」「買いやすさ」「キャンペーン情報」だとした。アプリでは、プッシュ配信、タイムセールによる短期での訴求、機能を絞った売り場を提供できるため、LTVの押し上げ効果があるとした。今後は、マーケティングオートメーションでシナリオを作ってプッシュ配信するなど、全社購買データを活用したコミュニケーションを図っていく方針だ。
アプリの売上とユーザー数増加を達成した「QVCアプリ」
続いて、QVCジャパン eコマース&カスタマーマーケティング マーケティングプランナー 平瀬 真子氏とアシスタントマーケティングプランナー 奥原 真理子氏が登壇した。QVCジャパンでは、24時間365日放送のテレビショッピング・総合通販を運営。同社では、2011年からテレビで商品を見ながらスマホで購入したいカスタマー向けに「QVCアプリ」を展開している。2016年以降は、スマホの普及率も加速して、アプリの売上増加、ユーザー数増加がミッションになったが、当時はプッシュ通知でお得な情報を配信することが中心だった。
同社では、安定的なアプリの提供によるカスタマーの体験向上を目指し、エラー管理が可能な「Smartbeat(スマートビート)」を導入した。また、プッシュ通知により有益な情報の提供、新規アプリカスタマーの獲得をすることでコミュニケーションを強化させたい考えだ。
アプリの管理面では、これまでIT部門の担当者が時間をかけて影響範囲や影響端末、バージョンを特定していたが、2017年にスマートビートを導入したことで、リアルタイムにエラーが把握でき、改修もスムーズにできるようになった。また、開発担当者、ビジネス担当者間のコミュニケーションも円滑に行えるようになったそうだ。
さらに、カスタマーに有益な情報を提供するためReproを導入。導入後は、A/Bテストを実施することでカスタマーのニーズに合ったPush通知が可能になった。例えば、QVCは毎日夜中の12時にその日に一番お得な商品をオンエアしていて、コアなカスタマーは同時間帯にアプリを起動している。そのため、12時にアプリを起動していないカスタマーで絞って、ランダムにテストを繰り返した結果、夜の時間帯に配信するPush通知の開封率が4.4%高いことがわかった。また、アプリで好きな商品をお気に入り登録したカスタマーに対して、一つ一つ商品に合わせた訴求文言と、定型文で配信するテストを実施したところ、約1.7%定型文で配信した通知の開封率が高まったそうだ。
さらに、電話で購入するカスタマーに対して、アプリのメリットを訴求したチラシにクーポンをつけて配布し、インストールを訴求した。アプリを利用するカスタマーになると約2.1倍1年間の購入金額が高くなる。その理由として、電話で購入しているカスタマーは基本オンエアを見て電話で購入するため、それを見ていなかった商品を知りえないためだ。一方、アプリは、オンエアしている商品はもちろん、それ以外の商品も掲載しており、Push通知やアプリ内メッセージで即時性のある通知が可能になり、売り上げを高めることができるとした。
使いやすさとデザインを重視した「PLAZAアプリ」
最後は、スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイルカンパニー マーケティング本部 テクノロジー推進室 担当課長 佐々木 透氏が「PLAZAアプリ」について紹介した。PLAZAやMINiPLAなどを展開する同社では、2018年11月に「PLAZAアプリ」をリニューアルした。同アプリでは、「PLAZA PASS 会員証」(バーコード)、PLAZA PASS ポイント&ステージの表示、商品ビジュアルによる情報配信、店舗検索、オンラインストア、クーポン機能を実装している。24時間365日 PLAZAに触れることが可能なアプリを意識し、集客・販促施策の情報をまとめている。開発に向けては、使いやすさとデザインを重視した。例えば、表示されるデザインでは、PLAZAのキャラクターの表示、人気を博しているインスタグラムの画像を活用している。また、134店舗のスタッフにアプリの機能をわかりやすく伝えることで、顧客に使用してもらいやすいように、情報共有、サポートを行っている。
アプリリニューアル時には500円オフのインセンティブをつけ、目標値を大幅に上回る結果となった。また繁忙期に300円オフのインセンティブを付け、ダウンロード数は当初目標の倍の数値で伸長。さらに、アプリからオンラインストアへの流入の平均伸長率も大きく上回り、ダウンロードから流入へと続く一連の施策となった。
今後は、店舗での在庫取り置きやBOPIS(Buy Online Pick up In Store)対応、店舗フリーWi-Fiの設置拡大とアプリからのWi-Fi接続など、アプリをプラットフォームとして、さらにリアル店舗との連携を強めていきたいとした。