2020年4月14日8:00
スタッフ作業の90%をセルフ化し、経営の効率化につなげる
「焼肉じょんじょん」などを展開する十六が、完全セルフシステムを進化させている。日本で初めて、アルコール飲料を「Suica」などで電子決済ができる自動販売機を設置し、テーブル上にもモバイルオーダーができるQRコードを設置。注文などの作業を利用者自身でサービスしてもらう仕組みを構築した。高円寺店に続き、川崎、東新宿店をオープンし、今後はフランチャイズチェーン(FC)展開も視野に入れている。
キッチンとホール各1人での営業
モバイルオーダーによる注文を実現
「焼肉じょんじょん」の完全セルフシステムでは、「オーダー」「テーブル準備」「配膳」「お会計」「片付け」「洗い物」が必要なくなり、自販機やモバイルオーダーで管理コストも含めた人件費の削減を実現している。通常スタッフが行う作業の90%を来店客に負担してもらうことで、70席の店舗でもキッチン1人、ホール1人での営業が可能だ。
十六 代表取締役の大西淳氏は「コンセプトは一貫していて、お客様にご協力いただき、セルフ化を進めることで人件費を下げ、安いお肉を提供することです。決済の仕組みについては、食券機から始まり、タブレットへと移行しましたが、キャッシュレスの浸透に合わせて、2019年9月、モバイルオーダーシステムに切り替えました」と話す。
「焼肉じょんじょん」は、十六が恵比寿カウンター焼肉専門「焼肉おおにし」の兄弟店として2016年4月に東京都杉並区高円寺で業界初の完全セルフサービス店舗としてオープンした。セルフ化により、「焼肉おおにし」と同じ品質の肉を同店の半額で提供することを実現している。飲食店舗が抱えるさまざまな問題を解消するため、既存の業態を刷新した新しい店舗運営の形としてセルフ店を展開。現在、セルフ焼肉「焼肉じょんじょん」は3店舗を運営している。
電子決済付自販機の設置店舗も
セルフ注文は個人客にも好評
「焼肉じょんじょん」のセルフ焼肉の楽しみ方はこうだ。まず、入店時にドリンクを自動販売機で購入し、席に座りQRコードでお肉や料理をモバイルオーダーする。自販機は、電子決済付自販機を設置している店舗もあり、Suicaなどを利用可能だ。おしぼり、紙皿、エプロンなどの備品は来店客が自分で席まで持っていく。料理ができたらアナウンスで呼び出し、自分の料理をカウンターまで取りに行く(スタッフの手が空いている時は席まで届ける)。セルフ注文では、自身の端末に加え、同じテーブルの4人が共用で仕組みを利用可能だ。全員で注文内容を確認でき、自身が好きなメニューを選べるため、利用率は高い。また、「店員とお客が会話することはほとんどなく、メニューの提供と乾杯の速度は速いです」と大西氏は成果を述べる。セルフシステムの導入により、自分の飲みたい・食べたいものを自らのペースで購入できるため、個人客にも好評だという。
会計は現在、レジカウンターのタブレットPOSで行っているが、「春にはモバイルオーダーと同じ仕組みの中でキャッシュレス決済する機能を予定しています。これが実装されると、スマホ端末ですべてが完了します」(大西氏)。食事が終わると、顧客が席で使ったカップや紙皿などのゴミを自分でゴミステーションに捨てた後で会計を済ませ、帰る仕組みだが、将来的にはレジ待ち時間もなくなる予定だ。
スタッフも短期間で即戦力に
セルフ焼肉のFC展開も見据える
「焼肉じょんじょん」では、セルフ化によって人件費を全体の10%に抑えることにより、食肉原価に最大50%までかけることができる。実際、原価45%を実現し、コストを下げて良質な肉の提供を実現した。大西氏は「高級焼肉店の約半額でリーズナブルにおいしい焼肉を食べることができます」と説明する。
また、スタッフ教育の内容もより簡素化し、短時間で即戦力として活躍できる。店舗の9割方の作業を、利用者自身がセルフサービスで行うため、ホールスタッフの主な業務は、鉄板の交換と火入れのみで済む。店舗管理・売上管理がアルバイトで可能になり、コスト圧縮も同時に実現。売上は、飲料自販機に加え、モバイルオーダーでキャッシュレス化が実現する予定で、現金の授受がなくなり、売上の間違いやスタッフによる不正ができない仕組みだ。
大西氏は「入店して、乾杯するまでの時間は、焼き肉店の中では最も短いと自負しています。今の若い人たちにとっては『待たせない』ということが非常に重要です」と話す。同氏はセルフ注文システムは焼肉店に合っていると考えており、今後はフランチャイズチェーン(FC)展開として、200店舗への拡大を視野に入れている。
カード決済&リテールサービスの強化書2020より