2020年5月25日19:12
ブレインパッドは、ディノス・セシールが運営する通販ブランド「セシール」のオンラインショップにて、ダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組みを推進したことを発表した。
ブレインパッドは、アパレル業界のビジネス課題に注目し、その解決策となるダイナミックプライシングの研究開発に注力してきた。同社は「セシール」との取り組みにおいて、訪問者予測・購買確率予測の2つの予測モデルを構築するとともに、これらのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を算出する数理最適化アルゴリズムを開発した。同アルゴリズムは、さまざまなECサイトに適用可能な拡張性・汎用性を考慮して構築している点が特徴だという。
現在、日本では、ホテル業界や航空業界などを中心に、需給に合わせて価格を変えるダイナミックプライシングの手法が広がりつつあるが、アパレル業界への適用事例はまだ少ない状況だ。また、アパレル業界では、「衣服ロス」と呼ばれる衣料品の余剰在庫・大量廃棄が深刻な問題となっている。ブレインパッドは、今回のダイナミックプライシングの実用化に向けた同プロジェクトを通じて、自社のミッションかつこれからの時代に求められる「持続可能な未来をつくる活動」を推進したいと考えている。
アパレル業界では、シーズンごとに直近のトレンドを取り入れた商品を企画・販売し、そのシーズン内にできるだけ多くの商品を売り切りたいと考えるのが一般的だ。「セシール」は、これまで、熟練した担当者のノウハウに基づき価格変更(値引き)のタイミングや値引き率などを設定していたが、場合によっては適切に需要を捉えきれずに在庫が残るという課題があり、その解決に向けてダイナミックプライシングの手法に着目した。
世の中には自動的にダイナミックプライシングを実施できるツール類も存在していますが、ホテルの宿泊費や航空券などのチケット料金に特化したものが多いのが実情だという。加えて、アパレル業界では、商品の独自性が強くトレンドも加味しなければならないため、SKU(Stock Keeping Unit)単位での需要予測が必要となるなど、既存のツールでは対応が難しいのが現状だ。
そのため「セシール」は、自社サイトおよびアパレル業界特有の制約条件を加味したダイナミックプライシング実現のためには独自にモデルを構築するほうが良いと考え、ブレインパッドがその開発を担当した。
ブレインパッドは、まず、ダイナミックプライシングの実現に向けて必要なデータを準備するところから着手した。「セシール」として整備していなかったデータは、自社開発の「Rtoaster(アールトースター)」や「 Google Analytics」を用いて過去の購買履歴データ等を調査し、その結果を元にデータを補完・推計し独自のモデル構築に活かした。
そして、商品ページへの訪問者数を予測するモデル、商品ページ訪問者の購買確率を予測するモデルの2つの予測モデルの構築と、この2つのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を求める数理最適化アルゴリズムの開発に成功し、一定の効果創出が見込めることを確認しているとした。
今後、「セシール」とブレインパッドは、この2つのモデルと数理最適化アルゴリズムを元に実地検証を行い、モデルの改善・多機能化、システム化を進め、実用化に向けた取り組みを段階的に進めていきたいとしている。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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