2020年8月21日10:23
横浜銀行は、スマホ決済サービス「はま Pay」を Apple Pay /おサイフケータイに対応させ、全国約114万カ所のiD端末での決済が可能となる新たなサービス「はまPayタッチ決済」を2020年8月20日より開始した。同日には、記者説明会が開催された。
全国のiD加盟店で利用可能
三井住友カード、GMO-PGの協力を得て開発
横浜銀行では、取引先加盟店とのリレーション強化、地元商店街や施設との連携強化に向けて、2017年7月から、スマホ決済サービス「はまPay」を展開している。現在、ゆうちょ銀行や福岡銀行など、連携先の9行と合わせて15万店舗でサービスが利用可能だ。
横浜銀行では、スマホ決済サービスのさらなる普及を考えるため、横浜国立大学の協力を得て、2019年に商店街ではまPayを使ってもらう取り組みを行ったが、「金融機関ならではの機能を付けていくこと」「非接触のような多くの人々が利用して機能を提供することでUI(ユーザー・インターフェース)、UX(ユーザー・エクスペリエンス)を向上させたほうがいい」という声があったそうだ。今回のサービスは、横浜銀行がイシュア(カード発行会社)となり、プリペイドカードシステムを三井住友カード、アプリの構築を「銀行Pay」の基盤を提供するGMOペイメントゲートウェイが担うことで実現させた。
「はまPayタッチ決済」では、銀行口座と紐づいたプリペイドカードをiPhone もしくはApple Watchで発行する国内初の取り組みとなる。利用者は、銀行口座と紐づくプリペイドカードをスマートフォン内で即時発行するとともに、Apple Pay(iOS)、おサイフケータイ(Android)にプリペイドカードを登録し、全国のiD加盟店で利用可能だ。
プリペイドの即時発行と同時にApple pay/おサイフケータイにも紐づけ
即時決済のQRとは別の仕組みとして運用
横浜銀行デジタル戦略部室長 島山幸晴氏によると、カードと銀行口座の紐づけは手間がかかるが、プリペイドカードの即時発行と同時にApple Payやおサイフケータイと紐づけされるサービスは利便性が高いとした。また、QRコードとコンタクトレスを1つのアプリで提供できるのは金融機関初であり、両方を1つのアプリで提供することで、利用者が使いやすくなるとともに、「法人のお客様にとって、個人のユーザーが多くなることで、取引先のお店で使っていただけるようになります」と島山氏は期待した。
利用者は、はまPayのチャージマークをタップ後、チャージ金額を入力すると即座に銀行口座から資金がチャージできる(1日10万円以内)。さらに、オートチャージ機能では金額指定、特定日指定で金額のチャージが可能だ。利用者の中にはチャージが面倒という声もあるが、オートチャージ機能を利用すれば、デビットに近い利用が可能となり、利用者の負担が軽減できるとした。さらに、iD利用者は、決済金額の0.25%がチャージ残高に付与される特徴もある。なお、プリペイドの有効期限は4年間に設定しているが、利用されている場合は更新される。
今回の仕組みは、口座からの即時引き落としとなるQRコード決済とは別の仕組みを用いている。その理由として、銀行口座から使う分だけ残高を引き出して買い物をするような、キャッシュレス化を求めていない人にとっては、プリペイドのような商品性の方がシフトしてもらえると考えたそうだ。また、デビット取引の場合、国内インフラの問題上、使えない時間帯が発生する可能性があることも理由として挙げた。
三井住友カードが着目した3つの点とは?
タッチ決済とQRの両輪でサービス活性化へ
三井住友カードは従来からクレジットカードの戦略的パートナーとして横浜銀行とかかわりがあったが、今回はシステムパートナーとしての業務受託、および戦略パートナーとなっている。
三井住友カード受託開発部部長 楠木康弘氏は、今回のサービスのポイントとして、①カスタマーベース、②オープンループ、③コンタクトレスの3つを挙げた。1点目のカスタマーベースでは、横浜銀行の口座保有者であればワンストップで従来のQRコード決済の加え、iDによる支払いが可能になり、使いやすさも向上する。2点目のオープンループは、全国114万のiD加盟店で幅広く利用できる点を強調した。3点目のコンタクトレスでは、タッチするだけで支払いが完了する。現在は、Withコロナとしてコンタクトレスそのものが、現金のやり取りや端末に触れることのない、安全なサービスとして認知されている。楠木氏は「圧倒的な使いやすさ、加盟店規模、安全性が特徴となります。全国の地方銀行様に共同で拡大していければと考えており、パートナーシップを広げていきたい」と意気込みを見せた。
横浜銀行では、はまPayのQR決済の加盟店開拓も行っているが、地域で利用できるシーンは限られる。横浜銀行 デジタル戦略部 決済戦略室 決済ビジネス企画グループ 調査役 河原隆史氏は「利用単価は少額な支払いはもちろん、車などの高額な支払いでも利用されていますが、今回iDが利用可能となったことで、利用者が日常生活の中で幅広く利用できるようになります」と期待する。はまPay利用者の場合、時間外のATMの引き出し手数料が無料となる取り組みをスタートしているが、iD開始によってさらに利用者が拡大することで、地域のイベント情報をプッシュ通知した際の反響が高まるなどの効果を期待している。
横浜銀行では、今後5年間でタッチ決済の導入目標を10万件以上に設定している。また、QRコード決済の加盟店開拓では、低い手数料率であってもビジネスは成り立つため、今後も両輪でビジネスを展開していきたいとした。