2020年8月28日7:50
ランドデータバンク(LDB)は、2020年8月26日に記者説明会を開催し、「建設業界向け立替・決済サービス」を9月1日に開始すると発表した。同サービスは、IT・AIを活用した金融プラットフォームにより、建設会社と資材・協力会社間にビジネススキームの変革をもたらすという。
中堅・中小が中心の建設業界
デジタルを導入して建設現場の生産性を高める
記者会見では、ランドデータバンク 代表取締役社長CEO 徳永順二氏が登壇し、「建設業界向け立替・決済サービス」の概要について紹介した。
建設業界は、自動車業界に次ぐ大きな産業であり、社会のインフラをつくる安心・安全な基盤をつくるために影響は大きい。その市場はバブル期以降小さくなったが、60兆円まで回復している。業界構造として、全国各地に現場は点在しており、元受け、第一次下請け、第二次下請けと、階層的なピラミッド構造になっている。その結果として、99%の会社が資本金1億円以下の会社だ。
そうした構造もあり、德永氏は2つ課題を挙げた。1つは、深刻な労働力と低い生産性だ。労働環境が改善しておらず、就業人口が下がっている。また、IT導入などの生産性が向上していない。2つ目は資金先行と限られた資金調達方法だ。工事資金の持ち出しが先行しており、また、その調達手段も少ない。大企業であれば資金調達手段があるが、中小の場合は限られた調達手段しかないそうだ。こうした課題への解決策は、デジタルを導入して建設現場の生産性を高めることだとLDBでは考えている。
立替金額は最大1億円、最長10カ月
手数料は建設会社、資材会社共に1%
LDBは、INCJ、三井住友銀行、三井住友ファイナンス&リース、三井住友カードの5社共同で2019年7月に設立した。その役割は、データと金融を掛け合わせて、建設業界の生産性を向上させて、社会に貢献することだ。建設業界にはさまざまなデータがあるが、それを集めて、DX(デジタルトランスフォーメーション)により、さまざまなサービスが受けられるようにする。
「建設業界向け立替・決済サービス」は、建設会社、資材・協力会社双方が利用できるサービスだ。建設会社は、工事受注後に、資材・協力会社に資材等の発注・支払いを行う必要があるが、その支払いをLDBが立て替える。これによって工事会社はスピーディーに立て替えができる。立替金額は、最大1億円、立替期間は、最長10か月となる。手数料は建設会社、資材協力会社共に1%で、資材会社は最短2週間で現金で、100%受け取り可能だ。
同サービスは、建設業界に特化しており、同業界以外はサービスを受けることができない。これにより、スピーディな立替ができ、担保や連帯保証も不要となる。また、手数料も「金額規模」「立替期間」に関わらず一定だ。
同モデルにより、受注が増えても、タイミングが変わっても対応可能だ。それを実現させるため、過去20年のデータを参考に、建設の財務・非財務データを用いて、LDB独自の与信・分析モデルを構築した。同モデルにより、建設会社の93~94%は安心して立て替えができるという。残りの6~7%はステップ2でリアルタイムな建設現場のデータを取得することで、100%に近い会社にサービスを提供していきたいとした。
昨年12月から京都の西村住建商事や新和建設をはじめ、福岡、静岡の企業が実証実験に参加し、実際にサービス運用を行ったという。
少額貸付、保険、リース等の機能も提供予定
建設現場のICT化で取得できるデータも増加
今後は、建設現場のさまざまなデータ、天気のデータを集めることにより、さらにサービスをブラッシュアップさせたいとした。2021年~2022年には、金融プラットフォームの拡張機能として、少額貸付、保険、リースなどの機能を提供する計画だ。2023年には、建設業界の標準的な共通プラットフォームを目指す。
当日は、建設現場を可視化するIoT技術などを提供するランドログ 代表取締役社長 井川甲作氏が登壇。ランドログでは、車両や人の行動データ、 日々アップデートされる動的なデータを中心に、建設生産プロセスに関する各種データ等を提供することで、LDBの与信管理に役立ててもらう予定だ。
また、2020 年7月から、既存の建設機器にキットを付けることでデジタル化が可能な「SMARTCONSTRUCTION retrofitkit」を販売しているが、ソフトウェア使用のサブスクリプション契約でLDBの協力を得ているという。