2020年9月9日7:00
ソニーとニーイメージングプロダクツ&ソリューションズは、FeliCa Standard非接触ICカード向けの次世代ICチップを開発した。同ICチップおよび同チップを搭載したカード製品の量産開始は、2020年11月頃を予定している。
FeliCaは、交通乗車券や電子マネー、アクセスコントロール兼用の社員証など高いセキュリティーと性能が重視される市場で広く普及しており、これまで累計14億個以上(2020年6月末時点)のカード向けICチップおよびモバイルFeliCa ICチップを出荷している。
次世代ICチップは、現行のFeliCa Standard ICチップの機能(チップ内で電子的な金銭情報や権利情報などのバリューデータを管理する機能)との互換性を確保しつつ、クラウド連携が可能で第三者の不正利用を防ぐFeliCaセキュアID機能を新たに搭載した。ISO/IEC 9798-4に準拠したアルゴリズムを実装し、同ID読み出し時に改ざん検知が可能だ。これにより、各種電子決済や会員サービス等のオンライン型サービスなどの用途において、各サービス事業者が顧客情報の管理やサービス内容の変更・更新をクラウド上で柔軟かつ安全に行えるという。
ソニーはFeliCaセキュアID機能の有効活用に向けて、クラウド側で本IDの認証や管理を行うプラットフォーム環境の整備についても検討していく。
また、クラウドサービスでFeliCaを利用するためのソフトウエア開発環境の1つとして、2020年4月に発売のFeliCaリーダーパソリ向けSDK for NFC Web Client『ICS-DCWC1』も提供している。SDK for NFC Web Clientを使用することで、パソリで読み取ったIDの認証後に、勤怠管理や経費精算などをするためのWebアプリケーション開発を行うことが可能だ。
さらに、カードとリーダー/ライター端末間の相互認証と暗号通信において、既存サービスとの互換性を備えたDES(Data Encryption Standard)暗号方式/AES(Advanced Encryption Standard)暗号方式をサポートしつつ、内部構造や記録されたデータの外部からの解析、読み取りを回避する最新の耐タンパー技術を搭載し、さらに高いセキュリティーを実現している。また同ICチップはセキュリティーに関する国際標準規格ISO/IEC 15408の評価保証レベルであるEAL6+を2020年6月に取得している。なお、同ICチップは、PTPPに準拠している。
さらに、異なるサービス事業者間で、それぞれの既存システムを生かしながら互いのサービスを追加し、データ連携ができる機能(拡張オーバーラップ機能)を新たに搭載した。また、FeliCaの標準機能を備えるFeliCa Standardの機能に加え、セキュリティー機能を簡易化しファイルシステムを最適化したFeliCa Lite-S機能も搭載している。
従来は、異なるサービス機能を統合する場合、システムの改修等の新たな投資が必要だったが、これらの機能により、既存のインフラを生かして、開発負担を抑えながら統合したサービスの提供が可能だ。
そのほか、従来のセキュア通信機能における通信データの暗号化および改ざん検知に加えて、通信データの改ざん検知のみをサポートするセキュリティーオプションを追加した。これにより、要件となるセキュリティーニーズを満たした上で高速トランザクションを重視するユースケースにおいて、コスト等とのバランスをとったシステムソリューションの選択肢が広がるとしている。