2015年5月19日8:00

ポイントプログラム最新動向

「Tポイント」「楽天スーパーポイント」「Ponta」といった共通ポイントの利用が伸びる中、ANAやJALのマイレージ、非接触の電子マネー、携帯キャリアのポイントプログラムとの相関はどのようになっているのだろうか? 本項では、ポイ探の菊地崇仁氏に、メジャーなポイントプログラムやマイレージの関連について解説してもらった。

株式会社ポイ探 代表取締役 菊地 崇仁

ポイント業界再編の幕開け

2006年、日本発のポイント交換案内サイト「ポイ探」が誕生した。ポイントブームの到来だ。2007年、3月に「PASMO」がサービス開始、4月には「nanaco」と「WAON」のサービスが開始され、「電子マネー元年」と呼ばれる。2008年、長引くデフレもありポイントブームがピークを迎える。2009年以降は、利用者のポイントリテラシーも向上し、徐々にポイントブームも落ち着いていった。

そんな中、2012年6月にポイント業界を大きく変えるニュースが飛び込む。2013年春頃から「Yahoo!ショッピング」の利用で貯まるYahoo!ポイントが廃止され、Tポイントに統合すると言うのだ。Yahoo!ショッピングで貯まるポイントがTポイントになり、Yahoo!ショッピングでTポイントを使えるようになる。この1つの発表が、2013年以降のポイント業界を大きく再編させることとなる。

なぜ、このニュースがポイント業界を揺るがすニュースとなったのだろうか。

(図1)のポイント交換図を見て欲しい。これはYahoo!ポイントとTポイントの統合が発表される前の図となる。“↕”はポイントを相互に交換できることを、“→”は一方にポイントを交換できることを表している。

図1 Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が発表される前のポイント交換図
図1 Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が発表される前のポイント交換図

「Yahoo!ポイント・JAL・Pontaポイント」連合に対して「楽天スーパーポイント・ANA・Tポイント」連合という構図となっていることがわかるだろう。Yahoo!ポイントに対して楽天スーパーポイントが、JALマイルに対してANAマイルが、Pontaポイントに対してTポイントが、というように、それぞれのライバル企業が、それぞれ別陣営としてバランスをとってきた。

しかし、Yahoo!ポイントとTポイントは別陣営にもかかわらず提携する。当然、大きくバランスが崩れ、一気にポイント業界の再編が起こることになったのだ。

Yahoo!ポイントとTポイントが統一された場合は(図2)のようなポイント交換図となる。

図2  Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が行われた場合のポイント交換図
図2  Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が行われた場合のポイント交換図

そのまま提携が行われた場合、2つの問題が出てくる。

1つ目は、Tポイントを介してJALマイルとANAマイルの相互交換ができるようになる。そのため、発表から約半年後にYahoo!ポイントとJALマイルの相互交換終了が発表された。

2つ目は、nanacoポイントとYahoo!ポイントの相互交換。Tポイントの最大の加盟店はファミリーマートだ。Yahoo!ポイントがTポイントに切り替わると、nanacoポイントとTポイントの相互交換が可能となる。ファミリーマートで貯めたTポイントをセブン-イレブンで利用、逆も可能となるため、こちらも2013年3月に終了が発表された。

Yahoo!ポイントとの提携終了後のnanacoポイントは宙に浮くことになる。結局、別陣営のANAとの相互交換に落ち着いた(図3)。

図3 2013年4月1日時点でのポイント交換図
図3 2013年4月1日時点でのポイント交換図

ネットとリアルの融合で共通ポイントの再編も

ポイント交換先の見直しはポイント業界再編の序章にすぎない。Yahoo!ポイントがTポイントに切り替わったことで、ネットで貯めたポイントをリアルで使う、リアルで貯めたポイントをネットで使うということが可能となった。

Yahoo!ポイントのライバルとしては楽天スーパーポイントとなるが、この発表があるまでは、楽天スーパーポイントがYahoo!ポイントを圧倒していたと言えるだろう。

2013年4月時点で、楽天市場の加盟店舗数が約4万店、Yahoo!ショッピングの加盟店が約2万店。ポイントキャンペーンを毎日のように行う楽天はポイントが貯まりやすく、加盟店が多ければポイントは使いやすい。貯めやすさ・使いやすさ、どちらをとっても楽天スーパーポイントに分があるだろう。現に、ポイ探で毎年行っている「ポイントオブザイヤー」では、楽天スーパーポイントが5連覇を達成している。

しかし、Yahoo!ショッピングの加盟店に加え、Tポイントの加盟店がポイントの利用先として使えることになった。2012年6月時点でTポイント加盟店は4万7,339店。Yahoo!ショッピングの加盟店と合計すると約6万7,000店での利用が可能となる。一気に楽天スーパーポイントよりも使いやすいポイントとなったのだ。

筆者は雑誌などの取材の時に必ず言うことがある。「貯まりやすいポイントを貯めるのではなく、使いやすいポイントを貯めるべきだ」と。どんなに貯まりやすいポイントがあっても、使える先が少ないと貯めるメリットは無い。

使いやすさでTポイントの後塵を拝することとなった楽天は、2013年3月、共通ポイントサービスへの参入を発表し、再度使いやすいポイントNo.1を目指すこととなる。Tポイントと楽天スーパーポイントの全面対決の開始だ。

この争いに取り残された共通ポイントがある。Pontaポイントだ。

Pontaポイントに触れる前に、じゃらん×ホットペッパーポイント(現リクルートポイント)に触れておく必要がある。

2013年3月にリクルートのオンラインショッピングサイト「ポンパレモール」がオープンした。楽天市場やYahoo!ショッピングと同じタイプのショッピングモールだが、商品購入100円につき3ポイントと2社よりもポイント還元率を高くし2社の追撃を図る。4月にはリクルートポイントに名称を変更し、5月に年会費2,000円(税抜)の還元率2.0%のリクルートカードプラス、年会費無料の還元率1.2%のリクルートカードを投入。貯まりやすさを武器に、楽天市場、Yahoo!ショッピングの追い上げを開始する。しかし1年経った2014年4月時点でポンパレモールの加盟店は約1,000店舗。楽天市場、Yahoo!ショッピングと差は開くばかりだ。

先に書いたとおり、”貯まりやすいポイント”よりも、”使いやすいポイント”が重要ということがわかる事例だろう。還元率が高くても、使い勝手が悪いポイントを貯める者はいない。

ネットでも貯まり・使えるようになりたいPontaポイントと、使いやすいポイントに生まれ変わりたいリクルートポイントが提携するのは当然の流れといえる。2014年夏頃から両社のポイントの相互交換が開始し、2015年春頃からリクルートポイントはPontaポイントに統合される。もともと、2012年11月から2カ月間と期間限定だが、じゃらん×ホットペッパーポイントとPontaポイントのポイント交換が行われていた時期がある。提携の下地はできていたのだ。

「Yahoo!ポイント・JAL・Pontaポイント」vs「楽天スーパーポイント・ANA・Tポイント」という構図から「Tポイント (Yahoo!ポイント)」vs「楽天スーパーポイント」vs「Pontaポイント(リクルートポイント)」という共通ポイントを軸とした構図に変化した(図4)。

図4 共通ポイントが主軸に
図4 共通ポイントが主軸に

ケータイ、航空マイレージ等も使いやすさへの転換を開始

今まで独立していたケータイ電話会社のポイントにも再編の波が来る。ドコモポイントは2014年4月以降、ANAマイルへの交換を終了し、JALのマイルと相互交換を開始。同時に、ドコモポイントの付与率を改悪するが、ドコモのクレジットカード「DCMX」契約者を優遇する方針を打ち立てる。

ソフトバンクポイントは2014年7月以降に通信料の支払いで貯まるポイントがTポイントへと切り替えとなる。ケータイの端末・料金等、自社でしか使えないポイントを付与するより、還元率が悪くなるが、どこでも利用可能なTポイントに変更することで、顧客満足度を上げる作戦に出たのだろう。

また、auは2014年2月「au WALLET構想」を発表。2014年5月から電子マネー「au WALLETカード」を提供し、ケータイの通信料だけでなく、「au WALLETカード」を利用することで、リアル店舗でもauのポイントを貯めることが可能となった。貯まる「WALLETポイント」は再度au WALLETにチャージ可能のため、今までの閉じたポイントから、使い勝手の良いポイントへ切り替えた形だ(図5)。

図5 共通ポイント・ケータイ会社のポイント動向
図5 共通ポイント・ケータイ会社のポイント動向

使い勝手の良いポイントへの切り替えは、使い勝手の悪いポイントの代表例であるクレジットカードのポイントや航空マイレージにも波及している。

ANAは同社の航空券購入やツアー料金に利用できる電子クーポン「ANA SKYコイン」への交換を2014年4月から、1マイル単位で1マイル=1コインとして交換できるように変更。

また、JCBは同社のクレジットカードで貯まるOki Dokiポイントを1ポイント単位で交換できるサービスを開始。2014年12月より、「スターバックス カード」へのチャージに1ポイント=3.5円として、1ポイント単位でチャージできるように変更され、今後は他のギフトカードも同様のプログラムを用意する予定となっている。

現在、使い勝手の悪いポイントを発行している企業も、今後は使いやすいポイントへの転換を迫られるだろう。

ポイントプログラムもオムニチャネル時代へ

これまで、共通ポイント、オンラインショッピングモールのポイント、航空マイレージ、クレジットカードのポイント、電子マネーのポイントなど、さまざまなカテゴリで解説してきた。しかし、すでにこれらのカテゴリは意味をなさなくなってきている。

例えば、auはケータイ電話会社のポイントだったが、2014年5月に「au WALLETカード」を発行し、電子マネーのポイントにもなった。2014年10月には「au WALLETクレジットカード」を発行することで、クレジットカードのポイントとも考えられる。auショッピングモールでもWALLETポイントが貯まり・使えるため、ネットショッピングのポイントとも言えるだろう。

同様に、楽天は2014年10月から「Rポイントカード」を発行し「共通ポイント」になり、Tポイントは2013年7月にYahoo!ショッピングでも貯まるようになったため「オンラインショッピングモールのポイント」、2014年11月から「Tマネー」サービスを開始し「電子マネーのポイント」にもなった。

つまり、従来はサービスや業種に対してポイントプログラムを考えてきたため、ポイントプログラムをカテゴリで分けられていた。しかし、最近はポイントプログラムの上にサービスを載せるため、ポイントプログラムをカテゴリで分類することができなくなってきている。日常のあらゆるサービスで同じポイントを貯め・使えるポイントプログラムのオムニチャネル時代とでも言うべきだろうか。ポイントプログラムをプラットフォーム化し、あらゆるサービスで簡単に利用できるようにすることが、ポイント戦国時代を生き抜く鍵となるだろう。

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