2021年4月2日8:00
自社ブランド「アキュア」の認知度向上、売上増へ
JR東日本グループの飲料事業会社、JR東日本ウォータービジネスは2019年10月から、日本初の自販機のサブスクリプションサービス「every pass(エブリーパス)」を展開している。毎月一定の金額を支払えば、1日1本所定のエキナカ自販機でドリンクを受け取れるサービスだ。
毎日届くQRコードでドリンクを購入
初回抽選は当選倍率18倍
JR東日本エリアのエキナカ飲料自販機の企画運営を担い、自社ブランド「acure<アキュア>」を展開、オリジナル商品なども手掛けるJR東日本ウォータービジネス。同社の自販機サブスクリプションサービス(サブスク)「every pass(エブリーパス)」は、エリア内の駅に約400台設置された「イノベーション自販機」から、1日1本ドリンクを受け取れるサービスだ。
2019年10月からのサービス開始を前に、利用者500人を抽選で募ったところ、9,000人弱の応募が寄せられ、話題となった。2020年9月に第2弾(募集枠2,000人)、同12月に第3弾(同3,000人)の利用者を募り、サービスの浸透を図っている。
サービスの利用には、専用のスマートフォンアプリ「acure pass(アキュアパス)」のインストールや、アキュアの会員サービスを利用できる「acure members(アキュアメンバーズ)」の登録が必要だ。アプリに1日1度配信されるQRコードをイノベーション自販機にかざし、事前に選択したプランの対象商品の中から好みの商品を選ぶ。
プランは2種類。月額980円(税込)の「アキュアメイドプラン」は、同社のオリジナルブランド「アキュアメイド」の商品の中から選択する。月額2,980円(税込、最初の半年は2,480円)の「プレミアムプラン」は、イノベーション自販機で扱う全商品が対象となる。アキュアメイドプランを利用できるのは1カ月間で、その後は自動的にプレミアムプランに移行する。
例えば「アキュアメイドプラン」を1カ月30日間、毎日1本欠かさず利用したとすると、1本あたりのドリンク代は32円となる。なぜこのようなサービスを始めたのか。同社 営業本部 自動販売機事業部 東野裕太氏によると、背景には、消費増税やキャッシュレス決済の広がり、サブスクの台頭などがあったという。自販機サブスクは、利用者が世の中全般の価格に対して厳しい目になるのではという考えから、自販機価格の新しい考え方を提案しようという試みだった。
サブスクをフックに、アキュアの商品に触れてもらおうという狙いもあった。サブスク応募のためにアキュアメンバーズに登録してもらえれば、新商品情報やアプリ内でのタイムセールをはじめとしたキャンペーン情報、ECサイトでのギフトセットなどの情報を届けられるからだ。
それでは、実際にどのように利用されているのだろうか。東野氏によると、利用頻度に個人差はあれ、これまでの平均利用率は約70%と高い。当初から予想されていたことだが、平均単価も高めだ。継続利用率は、国の緊急事態宣言が出る前の2019年10月から5カ月の数字で見ると45%と、同社の想定よりも多くの人が利用を続けている。
高まるキャッシュレス決済比率
コロナ禍でもECサイトは売上増
サービスが利用できるイノベーション自販機に対応したアプリ「アキュアパス」では、決済手段の多様化にも力を入れる。クレジットカード、「モバイルSuica」、「LINE Pay」での決済に加え、2021年2月からは「PayPay」での決済も可能になった。東野氏は「自販機の交通系電子マネーをはじめとする電子マネーの決済比率は、日に日に高まっています」と話す。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークが浸透し、駅の利用者は減少。エキナカ自販機の売上は苦しい状況だが、アキュアのECサイトの売上は伸びているという。アキュアメンバーズの登録者数は現在18万人を超え、順調に増加中だ。自販機サブスクをフックにアキュアの認知度を上げるという取り組みは、一定の成果を上げている。
「エブリーパスに当選されても、スタートのタイミングはお客様の自由ですし、解約後の再利用もできます。アキュアパスに関しては、購入から180日間以内なら、いつ商品を受け取ってもらってもいいです。どんどんアキュアのファンを増やして、新型コロナが明けたら、自販機の方にも戻ってきてほしいですね」(東野氏)
アキュアのフックの1つとして、自販機サブスクへの期待は高まっている。
※カード決済&リテールサービスの強化書2021より