2021年12月28日7:00
東京海上日動火災保険、NTTデータ、スタンデージおよびトレードワルツは、新たな貿易決済の仕組みの実現に向けた実証実験を実施した。
同実証実験の結果を踏まえ、貨物の代わりとして用いる電子B/L(船荷証券)とデジタル通貨(または暗号資産)を同時に交換する、世界で初めての仕組みの実用化を目指す。2023年度中の事業化に向けて取り組むそうだ。
貨物と代金の交換を行う貿易取引においては、旧来から貨物の代わりとして用いるB/Lと代金の交換が行われてきたが、海外取引の場合、輸出者と輸入者は離れていることから、B/Lと代金を同時に交換することができず、いずれかの債務不履行のリスクが発生し、銀行、保険、ファクタリング等によるリスクヘッジのコストが必要になる。
近年、国内では電子B/Lを認めるよう法改正を求める動きが進んできており、海外諸外国においてもB/L等の電子化のための法整備を行う動きがある。
また、デジタル通貨についても国際的な実用に関する議論があり、中国やカンボジアなどを中心にCBDC(中央銀行デジタル通貨)の実用化に向けた動きが活発化している。
電子B/Lとデジタル通貨(または暗号資産)が今後国際的に普及すると、デジタルデータである双方を同時に交換できる可能性が生まれる。東京海上日動・NTTデータ・スタンデージ・トレードワルツの4社はこの「同時交換」を実現する新たな貿易決済の仕組みの構築に向けて、実証実験を実施した。実証実験では、ブロックチェーン技術を活用し、貿易プラットフォームで電子化された「B/L」と「デジタル通貨(または暗号資産)」の同時移転が可能であることを確認した。
B/Lや保険証券、Invoice等を電子化する貿易プラットフォーム「TradeWaltz」と複数のブロックチェーンを連携するインターオペラビリティ技術をNTTデータが提供し、暗号資産の移転技術をスタンデージが提供した。また、同実証実験の検証には、松尾産業、ウィル・ビーをはじめ、複数企業が参加・協力したそうだ。
電子B/Lの移転とデジタル通貨での支払いの同時実行が確認できたことにより、従来になかった貿易決済の仕組みを提供することが可能となるとしている。貿易代金を前払いする場合には、買い手が貨物を受け取れないリスクがあり、一方で後払いであれば、売り手が代金を受け取れないリスクがあったが、電子B/Lとデジタル通貨(または暗号資産)であれば、同時交換が可能となり、これらのリスクがなくなるとしている。
また、貿易代金に関するリスクを回避するには、第三者(銀行、ファクタリング会社、保険会社など)がリスクを引き取り、その対価としてのリスクプレミアムを収受するが、同時交換が可能になれば、リスクプレミアムは不要となることが想定される。
さらに、中小企業には、技術力や特色があるにも関わらず、代金前払いに応じてもらえないために、海外の新規顧客開拓が進まないという課題がある。こうした問題を解決し、中小企業へも貿易取引の裾野を広げることができるとしている。
また、債権債務の同時履行によって貨物の所有移転が明確になることで、債権債務履行の時間差ゆえに生じていた、国際売買契約や法律上の問題を解消するという。