2022年8月30日8:30
パルコでは、自社クレジットカードの割引サービスから、決済手段を拡張したポイントサービスに移行して約3年が経過した。2022年7月15日に開催した「キャッシュレス・カード戦略フォーラム2022」では、パルコでのCRMの取り組みについて、CRM推進部部長 北山隆造氏が紹介した。
「ALL PARCO CRM」を構築・運用へ
利用者のID顧客化、稼働を高め、維持を目指す
パルコは、J.フロント リテイリンググループの傘下で、ショッピングセンター運営を中心とした事業を行っている。全国18店舗のショッピングセンター「PARCO」に加え、ゼロゲートを中心とした中小型施設、映画や劇場のエンターテイメント施設などを運営している。
パルコのCRM推進部では、キャッシュレス決済、デジタル顧客コミュニケーション、オンラインストア、カスタマーサポートの4つのミッションに加え、全社横断の会員基盤構築と顧客コミュニケーションを図る「PARCOメンバーズ」、オンラインストア「PARCO ONLINE STORE、OMO(Online Merges with Offline)の実験、店舗のスタッフの業務を削減して稼働顧客を増やすテーマのPoC(実地検証)等に携わりつつ、親会社J.フロント リテイリングのデジタル戦略コミッティの一角を担っている。
パルコでは、「ALL PARCO CRM」を構築・運用し、顧客の新たな体験を創造するために、デジタルの活用を強化している。デジタルを前提とした新たなビジネスモデルを創造したり、データを起点としたビジネスに取り組んだり、デジタルを活用しビジネスを推進できる人材を育成している。北山氏は「どこで何かを売るというよりは、誰にどうやって買ってもらうか、体験してもらうのかが核であると考えています」と話す。パルコは大切な人と過ごすための場所・チャネル・サービスを創造し続けているとした。
4段階のランクアップで顧客関係を強化する「PARCOポイント」
「ポケパル払い(コード決済)」で実店舗の接点強化
パルコでは、店頭、オンラインストア、Web・SNS広告などで顧客との関係を築いている。利用者は、非ID顧客としてパルコを訪れるが、ID顧客に引き上げ、再来店につなげている。中長期的にパルコファンの顧客として維持していくことを目指してCRMに取り組んでいる。コミュニケーション手段として、メールマガジン、スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」、コード決済の「ポケパル払い」、クレジットカードの「PARCOカード」のサービスを提供している。
ID顧客に対する経済メリットとして自社運営の「PARCOポイント」がある。「PARCOポイント」は、1ポイント=1円としてPARCOおよび自社オンラインストアで利用可能だ。110円ごとに2~7ポイント貯まるが、「PARCOカード」に加え、「ポケパル払い」を利用する顧客には上乗せでポイントを付与している。「PARCOカード」での支払いの場合、ランクに応じて2・4・5・6ポイント貯まるが、「PARCOカード」を「ポケパル払い」の決済元に登録した場合、3・5・6・7ポイントと1ポイント多く貯まる。
2019年から開始した「ポケパル払い」は「PARCOカード」に加え、2020年から自社サービス扱いとしてセゾンカードも登録が可能となった。また、110円ごとに2ポイントが貯まり、ランクアップもないが、外部のクレジットカード会社として楽天カードやジェーシービー、大丸松坂屋カード等5社も2021年から登録可能となった。従来の「PARCOカード」から決済手段やカード登録の幅を広げることで、顧客接点の強化を図り、稼働につなげている。「ポケパル払い」のコード決済では、自社クレジットカード1枚と他社クレジットカード1枚の計2枚登録が可能だ。北山氏は「例えば、普段は『PARCOカード』をメインに使い、楽天様がお得なポイントアップ企画を行った際は、お客様の方で切り替えて使っていただけるようになっています」と説明する。「PARCOポイント」が付与される決済データは、パルコが自社で取得しており、ショッピングセンターに加え、エンターテイメント事業などの顧客の購買行動の把握に広げていくことも構想している。
パルコでは、顧客管理の基盤として「CAFIS Explorer」、「ポケパル払い」はコード決済プラットフォーム「CAFIS Pitt」と、NTTデータのシステムを使用している。ハウスカード「PARCOカード」のID顧客管理をクレディセゾンに委託しているが、現在はPARCOカードも含めた「PARCOポイント」顧客の行動データを自社でID管理している。
「ポケパル払い」は、パルコのスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」において、顧客の来店中の接点を構築するためのものだ。コード決済の読み取りは、CPM(ストアスキャン方式)方式を採用している。PARCOは、テナント企業に出店いただく形式で構成されており、原則は出店テナントが自社で用意したレジを使用するため、パルコは自社のPOSレジを持たない。そこで各テナントには、iPhone(ポイント端末)を設置してもらい、業務用アプリ(Pittタブレットアプリ)で読み取りを行うことで行動データを取得している。取得できる行動データは、いつ、どのショップで、だれが、いくら購入したかとなる。
現状は店頭決済のみだが、今年中に「PARCO ONLINE STORE」を「ONLINE PARCO」としてリニューアルするが、「ポケパル払い(オンライン決済)」がネットショッピングで利用できるようになる。また、パルコでは新規事業の医療モール「Welpa(ウェルパ)」、ワーキングスペース「SkiiMa(スキーマ)」を展開しているが、利用者の買い物の行動を一貫して把握できるようにしていくそうだ。
来店前後のデジタル接点を高める「POCKET PARCO」
「ONLINE PARCO」にリニューアルしてECの取り組み強化
「POCKET PARCO」は、来店前後のデジタル接点として、「PARCO ONLINE STORE」での商品購入、PARCOの楽しい情報を伝えるオウンドメディア「PARCO Journal」を閲覧できる。「PARCO Journal」では、PARCOの館内だけではなく、周辺も含めた情報を提供している。「POCKET PARCO」アプリを開くとまずは「PARCO Journal」が開き、買い物以外でも閲覧してもらうことで、PARCOとの接触頻度を高めている。
「POCKET PARCO」利用者は、PARCOに来店中、「WALKING COIN」と「Wi-Fi CHECK IN」機能を使うことができる。PARCO館内でWi-Fiにチェックインしたり、館内を500歩歩くとコインを獲得可能だ。また、買い物後は、ショップの評価が行える。
また、「PARCO ONLINE STORE」はアプリに加えて、Webでも閲覧が可能だ。今後、「ONLINE PARCO」として、パルコグループの全事業での活用を見込んでいる。また、出店テナントのスタッフが事業を問わず、楽しさを顧客に伝えるチャネルに進化させていきたいとした。テクノロジーとしての処理性能も向上し、多言語化対応、「ポケパル払い(オンライン決済)」対応などを行う。これにより、実店舗とオンラインをつなげることで、OMOへの取り組みにつながるとした。
「PARCOポイント」起点にCRMを強化
テナント企業ECでのPoCで顧客維持、再来店強化
このコンテンツは会員限定(有料)となっております。続きを読むには「Paymentnavi Pro 2022」のお申し込みが必要となります。
詳細はこちらのページからご覧下さい。
すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。