2022年10月31日9:00
GMOメイクショップは、2022年10月26日にECサイト構築SaaS「MakeShop byGMO」(以下、MakeShop)のシステムリニューアルと今後の展開について記者説明会を行った。同社では、「MakeShop」をオープンプラットフォーム化させることで、外部企業との連携をより強化し、さらに豊富な機能を提供していく。また、ECショップ(EC店舗)は、国内のECサイト構築SaaSで屈指の実績を誇る「MakeShop」からECサイト構築のシステム「GMOクラウドEC」へのスムーズな移行も可能になる。
「流通額ファースト」をバリューに掲げる
稼働店舗数は1万1,623社
説明会ではまず、GMOメイクショップ 代表取締役社長CEO 向畑憲良氏がEC業界の歴史、創業からの歩み、昨今のECトレンドについて紹介した。
同社はこれまで戦略説明会を行ってこなかったというが、システムのリニューアルを通じてオープンなプラットフォームに変革していく予定であり、多くのパートナーとEC業界をともに作り、発展させていきたいとした。
GMOインターネットのグループ企業であるGMOメイクショップは2004年9月22日に創業し、ECプラットフォーム事業、システムインテグレーション事業を展開している。「流通額ファースト」をバリューに掲げており、それが行動指針として浸透しているとした。ショップの売上の最大化させることで、事業者である同社もより成長できるという。
「MakeShop」は月額1万円で、BtoBの卸サイト、単品通販サイト、産直型のECモール、宅配など、事業モデルに沿ってさまざまなビジネスを形にできるECシステムだ。スタートアップから大企業までアクティブに稼働している店舗数は1万1,623社。APIエコノミーが叫ばれる前から100社以上のパートナーと連携して売り上げ支援を行ってきた。
GMOメイクショップは、創業した2004年当時、韓国・コリアセンターが「MakeShop」を 日本市場に向けて展開し始めたのを知り、同社から出資を受けて事業を開始した。創業時は秋葉原において社員数5名で展開していたが、新聞記事を見たGMOインターネット 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷正寿氏から連絡があり、GMOグループにジョインすることとなった。
ECは“無くてはならないモノ”へ変化
より良い買い物体験を提供へ
設立から約20年経ち、ECは“あると便利なモノ”から“無くてはならないモノ”へ変化したという。現在は嗜好性が多様で価格が一意でないものが売れるようになってきた。かつお米や水といった日常的な買い物もECで行われるようになっている。
例えば、2011年3月に起こった東日本大震災により、宮城、岩手、福島、茨城の注文件数は一時的に大きな影響を受けたが、4週間後には回復しており、「ECの底強さを感じました」と向畑氏は話す。
一方で、ECがまだ担い切れていない役割として、さらにより良い買い物体験を提供していく必要があるとした。ECはまだセレンディピティが弱く、意思決定情報が不足している。また、一部のモールでレビューの信頼性低下が見受けられるなど、安心と信頼の買い物体験が求められる。さらに、リアルとの融合によって、もっと買い物しやすいより良い体験ができるとした。
流通取引額の成長率はShopifyを上回る
「to High to Wide戦略」を掲げる
続いて常務取締役COO 古屋智久氏が「MakeShop」事業と今後の展開について紹介した。
「Makeshop」の稼働店舗数は18年連続で成長しており、高い成長を維持している。また、流通額は2,749億円となり、2022年は3,000億円に達する見通しだ。22年上半期の流通取引額の成長率は13.6%でコロナバブルを維持している。
矢野経済研究所のデータをベースに同社で作ったEC市場のポジショニングマップとして、より高価格で拡張性の高いSIerが提供する仕組みで890億円となる。また、同社のECパッケージ「GMOクラウドEC」が当てはまるパッケージが470億円、「MakeShop」などの高機能型のSaaSが260億円、低価格SaaSや0円から利用できるカートが150億円の市場規模となる。SIer型は店舗数が少なく、低価格SaaSなどは店舗数が多いが、売り上げは逆三角形の関係だ。同社では、高機能型のSaaSを軸にしながら、GMOクラウドECに戦略的に展開していくことを意識している。
ECが成長するに従い、大手モールや0円カートなどから利益を得やすい「MakeShop」などの本店カートに移動することが多いという。
GMOメイクショップでは、2020年にGMOシステムコンサルティングを子会社化。また、retroのEC受託 サービスを事業譲受。さらに、インフルエンサーマーケティングのライスカレー、ECに特化した製作会社であるこれから、越境ECサービスを提供するジグザグなどに出資している。M&Aや出資を通じ、次世代を担うECの起業家を支援している。
同社では、「MakeShop」を軸に「GMOクラウドEC」でさらなる事業成長を提案する「to High」、集客、広告管理、CRM、決済、配送などのサービス領域を広げる「to Wide」による「to High to Wide戦略」を掲げている。
「to High」では、「MakeShop」をリニューアルするとともに、「GMOクラウドEC」の開発を強化する。また、「to Wide」では、API(Application Programming Interface)を整備・拡充するとともに、オープンプラットフォーム化を目指す。
さらに、解決したい課題として、ECは東名阪を中心とした利用が中心のため、地域でのDX(デジタルトランスフォーメーション)と地方創生を後押ししていきたいとした。「ヒト・モノ・カネ」を活用した多層的な地域活性化プログラムで地域での利用を促していく。例えば、香川銀行、百十四銀行と業務提携を行い、四国・香川県全体のDX化に向けた取り組みを開始した。また、旅行代理店、県商工会議所、地方銀行、道の駅などとの事例が進行しているそうだ。
拡張性やスピード感などが課題に
よりオープンなプラットフォームへ
続いて、事業推進部部長 石井貴氏が「Makeshop」リニューアルの背景と、「次世代EC開発プロジェクト」の概要について紹介した。これまで、「MakeShop」は18年運営しており、国内SaaSサービスとしてさまざまなショップが利用しているが、柔軟な拡張性やスピード感のある機能デリバリーなどが課題となっていた。GMOメイクショップでは、2020年より「次世代EC開発プロジェクト」を立ちあげ、「MakesShop」のシステムリニューアルを推進している。
開発は、「テセウスの船」を合言葉にしながら複数のフェーズに分け、「Face」・「Join」・「Bridge」・「Merge」・「Spread」とフェーズごとにテーマを設けてリニューアルを行う。プロジェクトの約束として、「ショップを止めない」、「ショップの移行の手間、作業を発生させない」という約束を掲げている。テセウスの船は、ギリシャ神話を由来とした同一性を問うパラドックスの一つであり、ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、同一の物体だと言えるのか否か、という問題を指す。ECショップの運営者は、普段通り「Makeshop」を使いながら、新サービスに移行が可能だ。
2022年には一部のショップでβ版を検証しており、2023年2月中旬にリニューアル版を一般ユーザーにリリース予定。また、API開発ベンダー向けのDevelopersサイトやアプリス トアがオープンするという。2024年には新たな買い物体験ができる体制を整える。
開発ベンダー向けのデベロッパーサイトでは、APIのリファレンス、サンプルコード、開発のガイドライン、サンドボックス環境を用意することで開発のハードルを下げることが可能だ。開発ベンダーは、作ったアプリを掲載する場合は申請が必要であり、同社が審査する。また、APIの専任担当によるAPIサポートの相談も可能だ。
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