2022年11月10日18:20
ふくおかフィナンシャルグループ傘下の国内初のデジタルバンク、みんなの銀行と、その基幹システムを開発・運営するゼロバンク・デザインファクトリーは、2022年11月8日に記者説明会を開催し、フルクラウド型の銀行システムの外販を開始すると発表した。
3大事業ドメイン戦略を推進
みんなの銀行では、iBankマーケティングの「Wallet+」で得られた知見をベースに、日本で初となるチャレンジャー・デジタルバンクを確立するとともに、BaaS(Banking as a Service)によるエコシステム連携を通じてバンキングシステムを搭載した。
具体的な事業領域として、B2C事業、B2B2X事業、バンキングシステム提供事業の3つのサービスを提供している。B2C事業では全国のデジタルネイティブ世代にサービスを提供しており、これまで108万ダウンロード、40万口座、30代以下で7割のユーザーを有している。また、国内の利用者の分布をみても、概ね人口動態と同様の比率で、利用ユーザーが偏在している。
B2B2X事業は、パートナー支店として2021年9月にサービス開始した。すでに、pixivやテンプスタッフが利用している。2022年10月からは順次、みんなの銀行の金融機能やサービスを、APIを介してパートナー企業などに提供しており、今回新たに勘定系のバンキングシステムをアクセンチュアと共同で開発し、「1つのソリューションとして提供できる体制が整いました」とみんなの銀行 取締役頭取/ゼロバンク・デザインファクトリー 取締役社長 永吉健一氏は説明する。API 提供モデルでは、家計簿アプリを提供するマネーフォワードと参照系APIの連携を開始した。また、デジタルブランド「ignica(イグニカ)」を提供するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスとのBaaS事業に関しての基本合意書を締結している。同連携では、セルフスキャン型の買い物アプリ「Scan&Go」と連携した口座直結型の新決済サービスの共同開発を皮切りに、さまざまな検討を進めるという。
Google Cloud上でシステム構築、AzureやAWSも活用
みんなの銀行は、クラウドネイティブなソリューションをコンセプトとしており、Google Cloud上にシステムを構築している。また、Microsoft AzureやAmazon Web Service(AWS)などのマルチクラウドで動作する。パブリッククラウド上で実現されたバンキングシステムであり、バンキングシステム提供事業では、システムそのものを他事業者に販売していくことができるとした。
金融機関では、DX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けてチャレンジしているが、レガシーシステムによる制約が課題となっている。また、金融サービスでのデータ活用時に、月次でのバッチシステムによる仕組みなどにより、タイムリーに結合して使えない課題もあるとした。永吉氏は「我々のサービスはフロント、ミドル、バックごとに条件提示ができるようになっています」と話す。金融機関の幹部の88%がオープンAPIは重要と回答しているが、さまざまな外部企業との接続が簡易かつ、柔軟に可能な「オープンAPIアーキテクチャー」を採用しているとした。さらに、銀行のシステムをクラウドに移行する検討をはじめている金融機関もあるが、可用性と拡張性を担保したパブリッククラウドの利点を生かせるとした。
内部・外部のすべてのサービスをAPIで提供へ
具体的なサービスについては、みんなの銀行 執行役員CIO/ゼロバンク・デザインファクトリー 取締役CIO 宮本昌明氏が紹介した。
クラウド化のメリットとして、クラウド上で必要な機能をオートスケールし、突然の負荷集中や障害に備えることができる。また、DevSecOpsの仕組みにより、サービスを稼働させたままアプリケーションのリリース、障害時に自己修復が可能だ。
既存のシステムでは、データベースは一カ所に集約し、有事に振り替えるなど、維持費用・労力・サービス再開に時間がかかるとしたうえで、Google Cloud の Cloud Spannerの機能を用いて、エリアで処理を完結させて戻すことができる。同仕組みはクラウドを活用することで、1年半で構築することができたという。オンプレミスの場合、サーバ保守期限切れに伴う大規模なシステム更改などが考えられるが、システムをスケールに応じて拡張できるため、攻めの投資に振り分けられるとした。
また、すべてをマイクロサービスで構築し、さまざまな業界の基幹ビジネスロジックを他と疎結合な形で構築可能だ。さらに、すべての顧客データをリアルタイム分析し即時アクションを実現するハイパーパーソナライズとなり、これまでの銀行基幹系では提供しにくかった顧客中心のサービス・エコシステム構築を実現できるとした。
セキュリティ面では、クラウドの設定ミスによるセキュリティ懸念対策、コンテナベースアーキテクチャのセキュリティ、多要素認証、世界レベル基準のFAPI(Financial grade API)認証を取得といった特徴があり、各社のセキュリティへの置き換えもできるという。
なお、FAPIは、金融データをサードパーティがセキュアに使用するために、既存の二要素認証(OAuth2.0)に加え、セキュリティを強化するためのAPIの仕組みとなる。全国銀行協会が事務局を務める「オープンAPIのあり方に関する検討会」にて、OAuth2.0に加え、FAPIへの準拠が望ましいという報告書が出ている。
そのほか、オートメーション銀行として、システム運用を可能な限り自動化可能だ。
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