NFCフォーラム元議長の田川晃一氏、約20年間の活動を振り返る

2023年1月30日7:00

■決済・カードビジネス直球インタビュー
田川晃一氏は、近距離無線通信となるNFC(Near field communication)の業界団体「NFCフォーラム」に2004年の設立当初から携わり、2008年~22年までチェアマン(議長、Co-Chairman<共同議長>も含む)を務めた。チェアマン時代には、テクノロジの基盤となる 28 以上の仕様と標準の策定を主導してきた。今回は、田川氏に近距離無線技術として世界中で使われているNFCの標準化活動を振り返ってもらった。

田川晃一氏。現在はVirtualの日本代表として、日本企業も加盟している複数の国際標準化団体にローカルサポートを提供している。NFCフォーラムから特別功労賞(NFC Forum Lifetime Achievement Award)を受賞

記事のポイント!
①NFCフォーラム設立時から携わる
②2008年に会長に選出
③VisaとMastercardの指導力に感謝
④約12年間チェアマンを務める
⑤オープンで中立な組織としての位置づけを保つ

⑥『Adopter Membership』により会員数は約260に増加
⑦リーダー/ライターモードでの決済端末の活用に注目
⑧NFCフォーラムから特別功労賞を受賞
⑨Virtualで複数の国際標準化団体にローカルサポートを提供
⑩産業を作れる競争力を持った国に

現在はVirtualで会員団体のマネジメントを担う
NFCフォーラムには設立から携わる

田川氏は、現在、技術アライアンス、標準化団体、コンソーシアム、オープンソース グループ等にマネージメントサービスを提供する米国企業である米国・Virtual(バーチャル)社の日本代表を務める。Virtualは、決済セキュリティ、近距離無線の標準化団体など、約100のグローバル展開している会員制団体にサービスを提供している。

田川氏は、現在は九州大学に併合された九州芸術工科大学を卒業後、ソニーの研究所でスピーカーの研究開発を経て、ソニー本社のR&D部門で業務用の新規事業の立ち上げに携わった。また、DVD関係の規格の制定、および普及促進を目的とする「DVDフォーラム」にもソニーを代表して参加した。

その後、フィリップス(現NXPセミコンダクターズ)、NOKIAとともに、NFCフォーラムの設立に向けた担当に就任。田川氏は「正直な話、それまでコンタクトレスの技術にかかわったこともありませんでした」と振り返る。当時、ソニーのFeliCa事業部は大手鉄道のIC乗車システムのローンチ等の重要案件を控えており、人員を割けなかったため、田川氏がソニーの代表として2004年のNFCフォーラムの設立に携わった。

その後、FeliCa事業部や研究所のメンバーもNFC Forum活動に加わり、2007年にはFeliCa事業部 グローバル標準化渉外部 統括部長に就任。NFCフォーラムでは当初、副会長を務めていたが2008 年に会長に選出されている。

世界で最初にNFC機能が搭載されたNOKIAの携帯電話。日本のおサイフケータイは「iモード」の中で動くのが特徴だが、インターネットに直接つながる端末として注目を集めた

VisaとMastercardのリーダーシップに感謝
JR東日本やGoogle/Appleなども積極的に活動

NFC技術は、NFCフォーラム設立当時、ISO 18092、ECMA 340、およびETSI TS 102 190で標準規格として承認されていた。また、ISO 14443 Type AのMIFARE 、ソニーのFeliCaと互換性を持っていた。ISO14443はファイル構造など上位のレイヤーも定めているが、18092はTypeA、FeliCaといった通信インターフェースのみの実装仕様を決めている(その後、TypeBや15693も加わる)。設立当初の加盟企業は23社だったが、その後参画企業が急激に拡大。特に、2010年前後は次世代の技術としてNFCが社会的な関心を集めた。

現在は、決済、家電、医療などさまざまな分野で活用されているNFC技術だが、メンバー企業が協力して仕様と標準の策定を進めたことが大きい。田川氏は「特に、初期の段階でのVisaとMastercardの指導力は忘れてはいけないと感じています。両社ともエンジニアを大量に送り込んでいただき、規格の骨格を積極的に提案していただきました。クレジットカードの視点で見て、将来コンシューマー(消費者)の手にNFCが入った端末が渡った時、『何ができればみんな一番幸せだろう』というような視点に立ったスペックづくりをしてくださいました。こういったリーダーシップは規格の策定においてかけがえのないものでした」と感謝を述べる。

前述のようにNFCは通信インターフェースの実装を中心に規格を定めていたが、その上のデータ構造がTypeA/B、FeliCa、15693で異なると上手く通信ができなくなる。そのため、「NDEF(NFC Data Exchange Format)」によりデータフォーマットを共通化したり、「NFC Record Type Definition (RTD)」としてNDEFのレコードタイプを定義するなど、各社が骨格を提案し、2大国際ブランドのリーダーシップも加わって合意が形成されたそうだ。

田川氏はNFCフォーラムで約12年間チェアマンを務めた。在任中には、NXPセミコンダクターズのアレキサンダー・レンシンク(Alexander Rensink)氏とのCo-Chairman(コーチェア)を務めた時期もあった。田川氏は「局面で運に恵まれました」と振り返る。初期にVisaやMastercardがリーダーシップを取った後は、JR東日本がトランスポーテ―ションの規格策定に力を入れたり、OSの世界的企業であるGoogleやAppleがボードメンバーとして参加し、積極的に貢献してくれた。

インタビュアーの池谷貴(右)と

歴史の中ではNFCチップ搭載で
一部プレイヤーが利権主張も
無料会員の制定で会員数が増加

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