2024年7月2日8:42
インフキュリオンは、2024年6月18日に2024年上期の決済動向セミナーを開催した。同社では2015年より年に2回程度「決済動向調査」を実施している。同セミナーでは、7月3日から開始の新札発行による影響も念頭に、2024年4月に実施した最新の調査結果を基に、国内の決済動向の変化および消費者の行動変容について解説した。
65%がキャッシュレス派に
「都度BNPL」は現金派の利用が目立つ
日本のデジタル社会を目指した取り組みとしてキャッシュレス化が進められている。政府は2025年までにキャッシュレス決済比率4割程度という目標を設定している。政府では象徴的な目標として、「決済のフルデジタル化」を掲げている。2023年のキャッシュレス比率は39.3%となり、業界の期待を裏切らない伸びを見せている。2019年に比べ2023年の民間最終支出は5%の成長となった。キャッシュレス決済比率はその伸びを上回っており、1.5倍に成長。構成比ではクレジットカードが8割以上を占めるも減少傾向だ。また、コード決済が存在感を発揮している。
インフキュリオンでは、ただ単にキャッシュレス決済が使われるようになったことだけではなく「お金はアプリで動かす」という行動変容が拡大したとみている。決済アプリでの決済はもちろん、送金、振込などが増えている。チャージもクレジットカード、銀行口座、「ことら送金」での銀行口座間の資金移動が行われている。また、デジタル給与払いなども制度化されており、今後事業者での取り組みが行われる予定だ。
インフキュリオンの「決済動向調査」もそういった決済動向を捕捉する目的で実施している。2万人を対象にインターネット調査の全体調査を実施。2段階目で824人を対象とした詳細な行動把握に努めているという。インフキュリオン コンサルティング マネジャー 森岡 剛氏は「2万人を対象に全体的な動向を調査、把握したのち、小規模なサンプルを対象に具体的な決済行動に関するデータを得ることで、効率的に決済動向データを得られるよう調査設計しています。決済行動はライフスタイルに変化するという考えから、824人の内訳も、勤労状況・世帯年収・生計上の立場の3つの観点を組み合わせ、それぞれの立場に立つ回答者を均等に抽出し、サンプルに偏りが出ないような設計にしています」と説明する。また、インターネット調査のため、回答者は一般消費者よりもITリテラシーが高い傾向がある。決済に関する質問についても、キャッシュレス決済やデジタルチャネル利用が高めに出る傾向はあるとした。
キャッシュレス派の進展として、「『現金派』と『キャッシュレス派』に分けるとしたら、あなた自身はどちらになると思いますか」という2択の質問に対し、65%が「キャッシュレス派」と回答した。1年前は61%だったため、4%上昇している。
35%の現金派の89%は何らかのキャッシュレスサービスを利用しているが、「都度BNPL」では9%と現金派の方がキャッシュレス派の4%より利用率が高いという。また、現金派もキャッシュレスサービスの利便性を体感しているといい、「決済利便性やポイント以外の現金の優位性を崩していかなければいけない」と森岡氏は話す。
約4割が現金利用減少
現金比率が高い業種は?
消費者と現金のかかわりとして、「1年前とくらべて、あなた自身の現在の決済方法に変化はありますか」という質問に対しては、コード決済アプリやFeliCa型電子マネーの利用が増えている。特に59%がコード決済アプリの利用が増えたと回答した。一方で、約4割の人は現金利用が減少している。
物価高の中で、お金を効率的に使っていくうえで、現金とキャッシュレス決済のどちらかが便利かを各場面で尋ねた質問では、キャッシュレス決済は多くの点で現金より優れるが、「使えるお金がどのくらいあるかを把握するとき」だけは現金に劣後した。森岡氏は「キャッシュレス派ですら現金を選んでいる人がいるということです」と説明する。
現金派も家電や旅行など、大きな買い物やサービスを利用するときにはキャッシュレスが便利だと認識している。
各業種における決済手段について尋ねた質問では、現金比率が高い業種は、1位病院、2位処方薬局、3位美容サービスだった。前述の家電は現金利用が少ないが、業界によって偏りがある。また、「学校・自治体・職場などで集金」、「ガシャポン、クレーンゲーム、ゲームセンター」「お小遣い、お祝い金、お見舞金」などでは現金利用が多い。
QRコード決済アプリへのチャージは半数以上、電子マネーでも42%が現金を全く利用していない。
「お小遣い、お祝い金、お見舞金」といった個人間での現金利用は、お小遣いを渡すことに意義を感じており、必ずしもキャッシュレスにしたくない人もいる。また、集金や謝礼も、現金にコミュニケーションの媒介という価値を見出しているとした。
キャッシュレス派が給料日などで口座からお金を引き出し、別の口座に入金することが多い「五十日(ごとうび)」に現金を引き出す理由は、別の口座にお金を移動させる資金移動が42%となった。
新紙幣発行に伴い注目されるのが、ATM・券売機・両替機・現金機・セルフレジなどの現金取り扱いによる新紙幣対応状況だ。特に中小企業などでは費用が要因となって更新が遅れるところが多いとした。経済産業省のデータを見ると、キャッシュレス決済利用者の4割はキャッシュレスが使えない店舗の利用を避けるという。キャッシュレス推進においては、キャッシュレス利用に移行するプラスになる可能性が高いそうだ。
PayPay続伸、楽天ペイも成長
タッチ決済の利用拡大、スマホ送金も注目?
「利用している決済手段」を尋ねる質問ではコード決済アプリの利用率が過去最高値の68%となった。
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