2024年7月16日8:50

ビザ・ワールドワイド(Visa)は、30年以上前からAIを活用し、より安心・安全で快適な決済体験を提供するための取り組みを行ってきた。Visaでは2024年7月11日にAI活用の取り組みを紹介した説明会を実施した。Visaは1993年から約30年にわたり不正検知システムなどでAIを活用してきたが、現在は消費者の未来を予測するターゲティングや企業の戦略検討支援、パートナーのソリューション開発などへの展開も強化しているそうだ。

左からコンサルティング&アナリティックス 部長 クリストファー ・ビショップ氏、コア・プラットフォームソリューションズ 部長 田中 俊一氏

予測AIを用いたイノベーション
VCASやVAAで不正削減

当日は、コア・プラットフォームソリューションズ 部長 田中 俊一氏、コンサルティング&アナリティックス 部長 クリストファー ・ビショップ氏が登壇し、VisaのAIへのこれまでの取り組みを具体的なソリューションの事例と共に紹介した。

Visaは、ベーシックな決済の改善に加え、イノベーションにもよりフォーカスしており、デジタルアイデンティティ、生成AIの活用に力を入れている。また、決済エコシステムのあるべき将来像として、フリクションレス、セキュア、ユビキタス、相互運用性なども意識している。Visaでは、5年後の目標として、日本の決済エコシステムが世界で最もスマートでパーソナルなものとなり、消費者の日常生活の主役となることを目指しており、AIも同目標に沿った形で開発を進めている。

Visaでは1993年に決済ネットワークとして初めて、不正検知モデルを活用したAIを紹介したという。同モデルは現在も継続して使用している。2013年以降は予測AIを用いたイノベーションを加速しており、新たなデータやマシンラーニングを用いたプロダクトを提供している。2023年からは生成AIの活用に注力している。

2013年以降はさまざまなAIが活用できるAIプラットフォームを導入しており、それに伴い社内の開発環境のユーザー数が550名まで増えた。顧客セグメンテーションを自動的に行う「Segmentationエンジン」、クレジットマスター攻撃に対応する「VAAI(Visa アカウント アタック インテリジェンス)モデル」、旅行の行先予測モデルの「Travel Predict」、カードの有効性の確認が可能な「SmarterAV」、リアルタイム決済向けの不正検知モデル「Visa Protect for A to A payment」を提供している。

VisaにおけるAIの位置づけとして、責任あるAIの使用と高い水準のデータガバナンスの維持が必要だと考えている。同社では、300以上のAIモデルに加え、100以上のプロダクトを提供している。田中氏は「AIの決済のリーダーとして今後もAIを活用していきたい」と話す。

VisaではAIのプロダクトとして、「セキュリティ」「利便性」「業務効率」の3つの柱があるとした。「Visa Consumer Authentication Service (VCAS)」は3-Dセキュアのイシュア向けサービスで、さまざまな機能を搭載している。同社が持っているAIのモデルを利用してグローバルで不正のパターンを検出している。リスクスコアを2桁の数字で紹介することで、イシュアが利用しやすくしているそうだ。また、同モデルは定期的に更新し、VCASリスクモデルの 改善と新機能やコンセ プト、アーキテクチャを定期的に評価している。

VCASはEMV 3-Dセキュアの上で動いているが、加盟店からイシュアにより多くのデータを送り、そのデータをAIで処理することで、より正確かつ取引時間の短い、フリクションレスなユーザー体験をリスクベース認証で実現している。利便性の向上やモバイルを含めたより多くのチャネルに対応しており、85%の決済時間の短縮、70%のかご落ちの改善を実現しているそうだ。

Visa Advanced Authorization(VAA)は、約30年間動いているAIを用いた機械学習スコアリングエンジンだが、年間280億の不正取引を削減するとともに、1ミリ秒で500以上の取引処理を行っている。イシュア向けのシステムで、オーソリゼーション判定時にVisa Netとの連携でリスクスコアを判定し、グローバルデータと不正アルゴリズムを用いて不正な取引を防止する。過去2年のアカウント履歴によるデータプロファイルを使用するとともに、クラウドベース不正リスクモデルを活用している。田中氏は「VCASとVAAは国内でかなりの数のイシュア様にご利用いただいています」とした。

Smarter STIPで代行オーソリ処理
Smarter Settlementで財務状況の最適化

2020年から提供する「Smarter STIP」は、イシュアがシステム障害時に代行オーソリ処理を行う、Visa初のリアルタイム 決定を行う深層学習モデルだという。これまでは決まった金額や件数の中で処理をしていたが、例えばイシュアの過去の承認状況、PANごとの取引パターンを利用して、仮にイシュアのホストが落ちたとしてもこれまでに近い形で取引が可能だ。すでに数百のクライアントがサービスを利用している。

「Smarter Settlement」は、正確な決済見積を提供し、財務業務の最適化を支援するものだ。これにより、イシュアの決済プロセス中の資金利用を最適化し、アクワイアラの加盟店に事前に資金を提供する際の流動的なニーズを予測する。また、加盟店の決済量を見積もることで、キャッシュフロー管理を支援するという。

「Smarter STIPはかなり多くのイシュア様でご利用いただいております。Smarter Settlementはそれに比べると比較的新しいプロダクトで、日本の場合、金利が安いなど市場環境としてニーズが少ないというのはあると思いますが、大手のイシュアは資金需要が必要となりますので、これから普及させていきたいと思います」(田中氏)

同社のAIはセキュアであるとともに、世の中で責任のあるものを提供し、高水準のデータガバナンスを維持しているという。

通話型コマースやパーソナライズで活用
AIとデータインフラに 30億ドル以上を投資

ビショップ氏は、Visaが目指すAIと決済の未来について紹介した。

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