2026年7月29日8:30
日々の支出を記録でき、無理なく続けられることを目指した家計管理アプリ「ワンバンク(旧名称:B/43)」を展開するスマートバンク CEOの堀井翔太氏は、ペイメントナビのインタビューで、銀行などの預金取扱金融機関以外で「為替取引(送金や資金の移動)」を業として営む資金移動業者の立場を活用し、生活費の決済だけではなく、お金を増やすために便利な機能などを拡張する構想を明らかにした。

銀行口座、クレジットカードに加え、証券口座とアプリの連携も
「ワンバンク」は、独自のVisaプリペイドカードを発行するとキャッシュレス決済にも使え、使いすぎを防ぎながら安心してお買い物ができるのが特徴だ。家計簿機能にはAIが搭載されており、レシート整理から改善提案までさまざまな家計管理の手間をAIアシスタントがサポートする。2021年4月のリリース以降、2025年7月時点で累計ダウンロードは200万件にまで拡大している。
家族やパートナーとふたりでひとつの口座で家計を一緒に管理したり、子ども用カードで親子の支出をリアルタイムに把握したりと、家族のスタイルに合わせた使い方も可能だ。アプリケーションは、銀行口座とクレジットカードと連携することができるほか、セブン銀行ATMからの入金、BNPLの「あとばらいチャージ」、コンビニエンスストア、Pay-easyに対応している。セブン銀行と連携した「あとばらいチャージ」の未回収率の正確な数値は非公表だが、「データを見ながら細かくチューニングを重ねてきた結果、安定的に提供できています」と堀井氏は話す。
家計簿機能では、利用中の銀行口座・他のクレジットカードの情報に加え、2026年7月23日からは証券口座とも連携できるようになり、利便性が向上した。既存ユーザーからも「証券資産を見るために別のアプリも併用している」という声が寄せられていたが、今回の連携により評価額を銀行残高・ワンバンクのポケット残高と合算した「総資産」を貯金タブで確認可能となった。
「ワンバンク」の利用目的別の種類は、ひとりの支出管理や趣味の予算管理用の「マイカード」、夫婦やカップルでひとつの残高を共有できる共有財布用の「ペアカード」、18歳 未満の子ども用で、親が管理し子が決済する小遣い管理用の「ジュニアカード」がある。堀井氏は「特にペアカードは、カップルで共有の財布を持ちたい若者世代に好評です」と話す。
新規顧客取り込み強化へ「お金を貯められる」機能を検討
ワンバンクの独自の機能に魅力を感じた若いカップルなど中心とする既存ユーザーの満足度は高く、継続率は高い水準で推移している。しかし、金融機関がさまざまな機能を盛り込んだアプリを競う中で、ワンバンクがより多くの新規顧客を取り込み、成長を持続させていくのは、さらなる進化が求められるという。
堀井氏は「今後は、ユーザーに預けていただく残高をいかに増やしていくかが大事であると考えています。今はカップルが生活費として今月生活する分のお金としてお預かりして、決済機能を提供したり、家計管理をしていますが、その額を増やしていく必要があります」と話す。
ワンバンクでは、ポケットというお金を貯めたりする機能があり、高額の買い物をするユーザーなどがそこにお金を貯める。最近、ペアカードのユーザーが2人で旅行の費用や引っ越しなどに、まとまったお金を使えるように、お金を貯める機能を強化している。銀行に近い領域にまでビジネスモデルを広げて行きたいと考えているそうだ。
堀井氏は「銀行ではないので、預けて頂いたお金に金利を付けることは法的にできません。しかし、例えば、ポケットに毎月積み立てていただいたユーザーには、何%分のキャッシュバックや、ポイント還元があるといったことはできるはずです。「現在、法令上可能な範囲で具体的なインセンティブを検討しているところで、実現に向けたマイルストーンも引いています」と構想を明かす。
また、スマートバンクのような資金移動業者は、ライセンスを満たせば、給与のデジタル払いなどのサービスも展開することが可能だ。コード決済事業者などの給与のデジタル払いを手掛けている業者は、グループ内に銀行を抱えているケースも多いため、デジタル給与払いを選んでもらおうというモチベーションに欠ける傾向があるという。さらに、給与所得者にとっても、デジタル給与払いを選ぶインセンティブが十分とは言えない。堀井氏は「デジタル給与払いを受けることに価値を感じてもらえるような新たな仕組みを検討しています」と話す。
「マネタイズしやすい」BtoBの強化で収益力向上目指す
さらに、スマートバンクはBtoB向け事業の強化にも乗り出している。同社はファクタリングサービスを手掛けており、個人事業主やフリーランス向けの「ワンバンク請求書買取」に手ごたえを感じている。ファクタリングとは、売掛債権(将来入ってくるはずの代金)を買い取り、より早いタイミングで現金を渡すサービスだ。
堀井氏は「ファクタリングは、売掛債権の額面金額から差し引かれる手数料の割合であるテイクレート(割引率)は比較的高く、決済の情報なども取得できるので、有望なビジネスです。個人事業主やフリーランスだけではなく、中堅の法人向けに展開することも検討していきたいです」と話す。
このほか、金利が上昇する局面に入り、銀行の業績が向上している機会を捉え、地方銀行などにワンバンクカードのOEM(相手先ブランドによる提供)に興味がないか打診している。フィンテックのスタートアップは、大規模な経済圏を形成するグループに入る動きも進んでいるが、現状、スマートバンクは経済圏入りせず、独自路線によって存在感を高める方針だ。
同社がBtoB向けのビジネスを強化する背景には、BtoBのほうが、BtoCに比べてマネタイズがしやすいことがある。堀井氏は「数年で黒字化し、IPOも含めて、目指していきたいなと思っています」と話している。

















