2012年3月27日8:00
セキュリティと年会費無料を売りに「ワンタイムデビット」を推進
利用申込者の2割がスマートフォンユーザー
ジャパンネット銀行は、Visa加盟店のECサイトで利用できるインターネットショッピング限定のデビットサービス「ワンタイムデビット(JNBカードレスVisaデビット)」を提供している。サービス開始から2年が経過したが、外部広告などのPRも新たに行い、ユーザー数は順調に伸びているという。
ジャパンネット銀行
1回使い切りカード番号により不正利用はゼロに
広告展開では他のカード会社や銀行のカード告知と違った訴求を行う
ジャパンネット銀行では、インターネット決済専用の1回限りのカード番号使い切りVisaデビットサービスである「ワンタイムデビット(JNBカードレスVisaデビット)」を提供している。
「『即時払い』というデビットのメリットに加え、無料でセキュリティが高いサービスを提供したいと考え、カード番号使い切りのワンタイムデビットを開発しました」(ジャパンネット銀行 マーケティング本部 商品企画部 決済商品グループ 小谷卓氏)
ジャパンネット銀行では、口座開設者に対し、ワンタイムデビットを審査不要、年会費無料で提供している。また、口座の開設者全員にトークンを無料で配布するなど、従来からセキュリティを重視しているが、原則一回限りの使い切りとなるカード番号の生成についても、自社でシステムを構築している。1度しか利用できないカード番号を発行することで、第三者にカード番号が盗みとられたとしても悪用されるリスクを軽減している。小谷氏は、「サービス開始から2年間、第三者による不正利用は1回も確認されていません」と自信を見せる。
また、発生するコストと収益のバランスを考えた際に、「カード券面を発行しないことで、印刷や送料などの費用を抑えることが可能となりました」と小谷氏は説明する。
同社では、対面の店舗を有していないため、ワンタイムデビットの認知については、230万人の口座ホルダーに対して主にメールでアプローチを行っていた。また、Webサイトでの紹介ページを複数のパターンに分け、漫画形式でも説明することで、サービスへの認知向上を図っている。新たな展開として、2012年からはGoogleのアドワーズ広告などを利用した広告展開を強化している。広告出稿以降、ワンタイムデビットへの申し込みは、従来の1~2割程度は伸びたそうだ。
「例えば、ECサイトでクレジットカード番号を入力することに不安を感じていらっしゃられる方などに対し、無料でセキュリティを重視した使い切りのカードを発行できることを売りに、広告展開を行っています。アドセンス広告のキーワードとしては、セキュリティソフトを販売する企業などと類似していると思われます」(小谷氏)
ただし、「弊社では口座を開設後、認証用のトークンを配布していますが、お客様のもとに届くまで1週間程度の期間がかかります。ワンタイムデビットのサービス申込みにはトークンが必要なため、ワンタイムデビットの広告を見て口座を開設した方の約半数にはお申し込みをいただけていません。今後は口座開設と同時にワンタイムデビットの申し込みを行えるような仕組みを検討しています」と小谷氏は話す。
口座が活性化する15日、25日の利用が多い
スマートフォンユーザーは夜間の利用が中心
現状、ワンタイムデビットは、口座からの原則、即時引き落としとなるため、銀行口座が活性化する毎月15日、25日の利用が多い。稼働率は、会員の帰属意識が高い流通系クレジットカード会社とほぼ同じ数字を維持している。申し込み後、決済を行った人は5割超となっており、ヘビーユーザーの稼働率が高いのが特徴だ。また、決済単価は約6,000円となっている。
なお、利用金額の上限は10万円だが、一定の利用がある会員に対しては、上限金額を30万円まで高めている。年齢層としては30~40代の男性が多いが、「若年層や女性に対しての告知も強化していきたい」(小谷氏)としている。
同社ではWebサイトのスマートフォン対応にも力を入れており、すでにスマートフォンユーザーは、全体の約2割を占めている。PCの場合は、昼の12時~13時と夜間に利用されることが多いが、スマートフォンユーザーの購入の傾向としては、21時~翌日1時までの4時間が利用のピークとなる。夜間での利用が多い理由として小谷氏は、「スマートフォンをパソコン代わりに夜間に使用している方が多い」と分析する。
キャッシュバックモールを利用した販促を実施
新規参入企業へのシステム提供を検討
ワンタイムデビットは、Visa、MasterCard、JCBが推進する「3-Dセキュア」に対応していないため、「3-Dセキュアが必須なオンラインゲームなど、一部のサイトで利用できないといった課題はあります。導入については慎重に検討したい」と小谷氏は説明する。
利用者に対しては、購買動向などから会員をセグメントし、メールでアプローチを行っている。2012年1月には同社が運営する常時決済額の1%をキャッシュバックするキャッシュバックモールでキャンペーンを実施したが、それぞれの会員の嗜好に合わせたECサイトや商品を案内することで、売り上げは前月比で10%アップした。
販促については、割引やポイントなどのサービスは行っていないが、「キャッシュバックモールに特典を集約し、会員の稼働率を活性化させていく方針です」と小谷氏は説明する。
同社では今後も決済による手数料やキャッシュバックモールでのアフィリエイトフィーなどを収益の柱にしていく方針だ。また、「弊社のセキュリティを重視したワンタイムデビットのシステムを、機会があれば新規にサービスを展開する企業などに対し提供できればと考えています」と小谷氏は力強く語った。