年間決済総額1兆円を突破し、3年後に2兆円超を目指す電子マネー「WAON」(イオン)

2012年6月4日8:00

年間決済総額1兆円を突破した「WAON」の次なる展開は?
グループ内での非現金化、地域カード化を推進し3年後に2兆円超を目指す

イオンが発行する電子マネー「WAON」は、2011年度の年間決済総額が1兆円を突破した。WAONの加盟店には、イオンリテール・イオンモールやマックスバリュ、ミニストップなどのイオングループ企業をはじめ、ファミリーマート、マクドナルド、吉野家、ブルースカイ、ヤマト運輸、ビックカメラなどの全国チェーンの外部加盟店が名を連ねる。イオンでは、WAONの発行によりグループ内でのキャッシュレス化を実現。また、「地域WAONカード」による地域の商店街など、外部加盟店開拓にも積極的に取り組んでいる。

会員の構成比は40代以上の主婦層が中心

月間利用単価は1,700円を超える

イオンが発行する電子マネー「WAON」は、2012年4月30日現在、累計発行枚数が約2,500万枚、月間利用件数5,120万件(前年比114%)、利用可能箇所は14万4,000箇所となっている。

イオンが発行する電子マネー「WAON」

WAONは、「イオン」や「マックスバリュ」といったスーパーで利用するユーザーを中心にサービスをスタートしたため、会員の構成比は40代が約25%、50代以上が約50%と高い数字となっている。また、利用シーンはGMSやスーパーが中心のため、月間利用単価は1,740円と、他の電子マネーに比べ、約2倍高いのが特徴だ。

イオンでは、グループ一体となってWAONの事業拡大に注力。そのため、2011年度年間決済総額は他社に先駆け1兆円を突破した。イオン(株)グループ電子マネー事業責任者 上山政道氏は、「WAONは4月27日に発行5周年を迎えましたが、年間決済金額も1兆円を突破し、全体戦略を見直す節目にきています。当面は、3年後に2兆円という数字が目標となりますが、イオングループの小売りや専門店事業にどう活用し、決済ソリューションだけではなく事業構造の改革の視点も考えていきたい」と今後の狙いについて説明する。

現在、WAONカード全体の月間の稼働率は約25%。同会員の月間利用金額の平均は約1万2,000円と、他の電子マネーよりも高い数字を示している。中でも65歳以上を対象とした「ゆうゆうWAONカード」の稼働率は高く、60%を超えているという。

「イオン店舗では、年齢が増すとともにクレジットカードの利用が減り、電子マネーにシフトする傾向が顕著に表れています。そのため、65歳以上の方にはゆうゆうWAONをお勧めし、足元の商圏内で保有率を高め、来店頻度を高める努力をしていきたいです」(上山氏)

グループ内でのキャッシュレス化に成功

WAON導入後は30%から55%のキャッシュレス化を実現

WAONの導入により、グループ内でのキャッシュレス化の促進にもつながった。例えば、イオンリテール店舗のGMS業態では、WAON発行前は現金以外の決済が約37%だったのに対し、導入後はWAONが25%、クレジットカードが37%(うちイオンカード30%)の比率を占めている。今後もご高齢者のWAON利用が増えると考えており、この数字はさらに高まると同社では期待する。それと共に、イオンペット、イオンバイクなど、イオングループ専門店各社でも独自のWAONカードを発行し、会員を組織化していきたいとしている。

日本航空およびビックカメラと提携して発行する「BIC CAMERA JMB WAONカード」

イオンでは、イオングループ以外の加盟店開拓も積極的に展開。現状、WAONの87%がイオングループ内での利用となっているが、ファミリーマート、マクドナルド、吉野家、ヤマト運輸など、大手加盟店の開拓をイオンクレジットサービスおよび三井住友カードが行ってきた。最近では、決済端末の低価格化も進んできたため、Suica、iDなど他の電子マネーとセットでWAONの導入を進めるケースも増えているという。シンクライアント端末へのWAONの対応については、処理速度などのレスポンスを含め、対応を検討している。ただ、POS加盟店については改修が必要となっており、その部分は依然として業界の課題となるそうだ。

また、吉野家の「吉野家WAONカード」、藤田観光の「藤田観光グループ・メンバーズカードWAON」、日本航空およびビックカメラと提携して発行する「BIC CAMERA JMB WAONカード」など、会員組織を持つ企業のカードにWAONを搭載することで、会員の利便性を高め、イオンが弱いとされる客層を送客する取り組みも行っている。すでに、既存のグループ外の提携先からは一定の評価を得ているが、さらに提携先とのコラボレーションによる稼動率の向上が課題であるという。

WAONカード平均の2倍の稼働率を誇る“ご当地WAON”

「めぐりんWAONカード」のモデルの水平展開を狙う

地域加盟店の開拓に向けカギになるのは、「ご当地WAON」の展開だ。同社ではWAONを通じて、地域の活性化や子育て支援・観光振興などに役立ててもらう取り組みを全国各地で進めている。すでに、各地域で発行する“ご当地WAON”は5月18日現在で73種類、100万枚を発行しており、稼働率は50%を超えている。これは他のWAONカードの2倍以上の数字となっている。提携する道府県は38となっており、2012年度中には全都道府県に広げる方針だ。

「地域WAONは、多くのお客様に支持されていますので、全国のイオンやマックスバリュ全店舗に販売を拡大する方針です。まずは、この1年で200万枚を新規発行し、中長期的にはWAON全会員の約20%の発行を視野に入れています」(上山氏)

さまざまな機能を搭載した香川県高松市の「めぐりんWAON」

地域WAONカードには、複数のアプリケーションを格納できる「FeliCaポケット」の機能を搭載。各地域の代理店を中心に同機能を活用した独自サービスを展開している。

その中でも香川県高松市の「めぐりんWAON」は、高松兵庫町商店街振興組合など3つの商店街で利用できる。上山氏は、「地域で個店ごとにWAONの加盟店を開拓してもあまり売り上げは伸びません。まずはめぐりんWAONをベストプラクティスに育て、それを有力商店街に水平展開していきたいと考えています」と説明する。

高松市の人口は約42万人だが、めぐりんカードは12万枚発行されている。カードの利用者は、地域加盟店約300店舗、香川県内のイオングループ各店への来店や利用で独自のポイントが貯まり、貯まったポイントは1マイル=1円として加盟店で利用可能だ。また、めぐりんマイルをWAONに交換することもできる。さらに、スポーツ観戦、武道館や体育館の公共施設利用、バス乗車、ボランティアなどでもポイントを発行している。めぐりん事務局では、イオングループの「幸せの黄色いレシートキャンペーン」に参画してイオンで寄付ができる取り組みも実現した。

将来的には100万店規模まで加盟店の拡大を狙う

FeliCa機能を活用し、多くのサービスを提供へ

WAONでは、2012年から13年にかけ、地域スーパーやドラッグストア・大手専門店などが加盟店として名を連ねることが予定されている。これにより、地域単位での広がりも期待できることから、加盟店については最終的に100万店規模まで拡大していきたいとしている。そのためには、「弊社だけではなく電子マネー業界全体が努力していかなくてはならない」と上山氏は見解を示す。

イオン(株)グループ電子マネー事業責任者 上山政道氏

また、インターネット上のポイント連携を強化していきたいとしている。「Gポイント」のポイント交換先ランキングを見るとWAONは常にベスト3に入っているという。利用者からするとネットで貯めたポイントをWAONに交換してもらい、イオングループ店舗において日々の買い物に利用することは魅力があると同社では捉えており、今後もポイント交換先の拡大に努めていく。

なお、最近ではNFCベースのTypeA/B決済が注目されているが、「国内はFeliCaが普及しており、その機能も現在は一部しか活用できていない。これからさらに多くのサービスを提供し、真の『地域通貨』を目指したい」と上山氏は話す。TypeAベースの決済については、イオンクレジットサービスが展開する東南アジアやイオングループが出店している各国での展開を検討する。

同社では2012年も会員数や稼働会員の拡大に継続して取り組んでいきたいとしている。

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