2013年2月7日8:00
ICクレジットカード対応と携帯POS導入による売場の状況と変化について(上)
東武百貨店では2004年2月26日、セキュリティレベルと接客サービスの向上を目指して、接触型ICクレジットカード対応と、顧客の面前で決済が可能な携帯型POSの導入を行いました。
顧客の面前で決済できる仕組みの構築が必要
サインレスの食品売り場でもPIN入力が必須に
東武鉄道グループの百貨店として、株式会社東武百貨店運営の池袋本店、船橋店、東京ソラマチ店、株式会社東武宇都宮百貨店運営の宇都宮店、大田原店の2社5店舗を展開しています。店舗の運営方針は、「親切一番店」で、お客様を第一に考え、お客様の立場に立って「奉仕」させていただくという考え方を基本に、品揃え、サービス、店づくりを通じて”東武は「親切」な店”と言っていただける、感じていただける店を目指しています。
ICクレジットカード対応と携帯POSを導入したのは、この経営方針への一貫性と環境への適応性からです。
セキュリティレベルの高いICクレジットカードへの対応は時代の趨勢と考えました。また、お客様の面前で決済できれば、「クレジットカードを持ち運ばない」安心と「決済時間短縮」の実現もできます。さらに、販売員がお客様との会話を途絶えさせず、接客から販売・決済までを一連の流れで捉えられます。
一方、POSを入れ替えると、ある程度の期間を使っていきます。よって、導入当時のシステム的な価値「現在価値」を高くし、長期間使い続けた時でも、価値のある「将来価値」もある事を仕組みとして意識しました。これらを会社に上申し、その結果「取り組もう/導入しよう」と、意思決定していきました。この「私たちが求めるPOS」を、POSメーカーさんにお声がけしその実現に向けて東芝テックさん、「是非やりましょう」と弊社のパートナーになって頂きました。
2012年11月現在、5店舗で約1,000台のPOSと携帯POSが500台稼働しています。POSの設置形態は商品特性に応じて、「個別ショップ型(衣料・雑貨)」、「個別ショップ型(食料品)」、「レーン型(生鮮)」、バックヤードにある「入金専用POS集約型」、カウンターとPOSが一緒になったタイプである「カウンター式POS集中型」、商品の包装スペースを多く必要とするタイプの「カウンター式POS集約型」の6種類に分類し運用しています。
「ICクレジットカード対応」について、この取り組みに際して、考え方を当時、整理しています。これは変えるべき常識として、磁気ストライプからICチップへ、サインから暗証番号へという流れです。その一方で、変えてはいけない常識として、セキュリティを高め、安全性向上に努めていくことが挙げられます。
サインではなく暗証番号を入力していただく理由としては、9年前の当時、カード会社がセキュリティの高いICクレジットカードを発行し、お客様のカードが徐々に切り替わっていました。こうした「文脈」から、弊社の店舗は「これに対応する、IC決済が出来る環境を用意しました」と言う事になります。ここの整理が重要だと思います。
「安全な環境を用意する」と、掲げる以上「店舗としての整合性」も求めて行かなくてはなりませんでした。これがトレードオフの部分があるんです。 百貨店の食品売り場では、「簡単、便利、スピーディ」な運用のサインレス決済が一部導入されていましたが、ここでもPIN入力をしていただく必要がありました。当時、この課題をどうするのかという議論がありましたが、一方で、安心・安全で、セキュリティの高いカードであるがゆえに食品でもPINを入れていただくという事につながっていきました。
システム的な機能に加え、販売員への認知が必要に
顧客にはICチップ搭載によるセキュリティ向上を訴求
求められる柔軟性と対応力の確保については、暗証番号をご存じでない方には、PINバイパス機能をご利用いただくため、システム的な機能に加え、販売員への認知が必要となりました。お客様にICクレジットカードの利用方法についてご説明する必要があったり、その対応力強化のため、延べ90日間、6,000人への研修を実施いたしました。その推進に向けては、ユーシーカードからICクレジットカード対応の実務面のサポート、Visaから利用促進のキャンペーンなどのサポートをいただいています。
ICクレジットカード対応当初、店頭においては、「お客様のクレジットカードは、『ICチップ』付きで『セキュリティの高いカード』でございます、暗証番号を入れて頂くことにより、お買い物が出来ます」といったように、お客様自身にICクレジットカードを説明し、カード自体を認識してもらう必要がありました。また、暗証番号をご存知ない方については、PINバイパス機能をご案内し、場合によってはカード会社に連絡する必要もありました。 私どもの力不足もありましたが、一つの決済を完了させるために非常に時間が掛かったことは事実です。また、売り場からも、「商品よりもICクレジットカードを説明する時間の方が長い」という声もあがってきました。
しかし、お客様にICクレジットカードをご説明する上で、カードにICチップが搭載されていることは見てわかりやすいです。また、チップの色が金色のため、イメージ的に高級感やステイタスがあり、現場でも分かりやすさがあったと思います。
改めて加盟店からみたICクレジットカードについては、それ自身が持つ安全性やチップの持つ機能があります。お客様はICチップ付きカードを持つ安心感、本人のみが知り得る暗証番号で買い物ができます。また、POS端末はチップと会話し、ご本人が直接入力される番号で決済が可能です。加盟店にとっては、サインレスになりますので伝票レスが実現できます。カード会社は、セキュリティの高いカードを発行し、ICチップへの思いを埋め込んでいると推察します。それらは、結果としてセキュリティの向上につながっていくと言えるでしょう。
※本記事は2012年11月15日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム」の株式会社東武百貨店 情報システム部 マネージャー 井上 直樹氏の講演をベースに加筆を加え、紹介しています。