2013年5月13日8:00
NFCスマートフォンを活用した「大阪e-お薬手帳事業」を実施
日常的に「お薬手帳」を持参しない6割の人に利便性を提供へ
大阪府薬剤師会は、NFC(FeliCa)対応スマートフォン等を活用し、お薬手帳を管理する「大阪e-お薬手帳事業」を実施している。現在、日常的にお薬手帳を持参する人は約40%だが、スマートフォンを活用したシステムを提供することで、残りの約60%の利用者のニーズを満たしていきたいとしている。また、日本薬剤師会などと連携し、将来的には全国展開につなげる方針だ。
JAHISで電子版お薬手帳の標準化を策定
NFCもしくはQRコードを利用して情報を読み取る
大阪府薬剤師会は、平成22年度の国の補正予算「都道府県地域医療再生基金の拡充」により、平成24年度~平成25年度末までの補助事業、平成24年度大阪府地域医療再生基金を活用し、「大阪e-お薬手帳」を実施することとなった。
目的は、スマートフォンなどの携帯端末を活用し、「お薬手帳」の記載内容の一部である調剤日、投薬に関わる薬剤の名称、用法、用量等の「服薬情報」を電子化することで、府民の健康増進を図り、災害時などへの対応力を向上することだ。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、服薬情報を管理できる「お薬手帳」の重要性が再認識された。大阪府薬剤師会では当初、利用者が常に持ち歩く携帯電話に着目。その中にお薬手帳の情報の一部を格納することを目指し、同事業を計画した。準備を進める中、近年、急速に普及するスマートフォンのアプリを開発することでさらに便利にサービスを提供できると考えた。
2012年8月に「大阪e-お薬手帳事業」プロポーザル選定委員会が事業者としてSTNetを選定。2012年9月にレセコンベンダーを対象として同事業についての説明会および協力を依頼した。服薬情報配信システムの構築に向けては、NFC(FeliCa)に対応したICカードリーダを利用した「服薬情報取り込みシステム」を開発。利用者はおサイフケータイ対応のスマートフォンもしくはQRコードを利用して「お薬手帳」の管理が可能だ。
スマートフォンはiOSとAndroidに対応。JAHIS(ジェイヒス)のデータフォーマット仕様を活用しているため、どの薬局でも同様のサービスを受けられる点も特徴だ。
「JAHIS(ジェイヒス)で電子版お薬手帳の標準化ができたことと、総務省でNFCが採用されたことにより、情報量の管理と規格整備が整いました」(一般社団法人大阪府薬剤師会 理事 堀越博一氏)
スマートフォンに格納する情報は、薬剤名、用法、用量、医師名などのデータとなる。リーダライタは、携帯電話の識別が難しいため、ソニーの液晶画面搭載のICリーダライタを使用している。iOSなど、NFC/FeliCa非対応のスマートフォンの場合は、QRコードを利用して情報の読み込みを行う。QRコードの掃出しは文字ベースで行っているため、容量の関係で複数の2次元コードを読み取る必要がある。
2月から大阪府箕面市で実験がスタート
家族で情報の一元管理が可能に
また、携帯電話に対応したメール配信システムも考え、できるだけ多くの人に参加してもらうことを目指している。同システムについては現在開発中だ。
NFC対応としては、薬局で運用している「レセプトコンピュータシステム(レセコンシステム)」(診療報酬明細書を作成するコンピュータ)に、ICリーダライタを接続。ICリーダライタ経由で府民が所持しているスマートフォンに服薬情報を転送し、ダウンロードしたアプリで、格納された服薬情報の参照を可能としている。
すでに2月から大阪府箕面市で実験がスタート。NFCの読み取りについては、ソニーから20台のNFCリーダライタの提供を受けている。箕面市は、同プロジェクトに合わせて箕面市薬剤師会と協定を締結。2月10日には三歳半検診、19日は二歳半検診の場で「大阪e-お薬手帳」の広報を実施。また、箕面市の広報誌で告知するなど、普及に努めている。
「『大阪e-お薬手帳』は、家族でデータを一元管理できる特徴があるため、全年齢分け隔てなく利用していただきたいと考えています。スマートフォンは若い主婦が保持しているため、便利なシステムとして広報していきたいです。特にお子さんは病院に通うことも多い年齢のため、訴求しやすいです。子供が複数いる家庭の場合、急に病院に行く機会も考えられるため、従来から持っているスマートフォンで管理できれば便利です」(堀越氏)
日本薬剤師会と連携し全国での展開を視野に
医療情報の共有化としても有用
現在は、箕面市での提供となるが基本的には全府民に利用してもらう形で告知に努めていく方針だ。利用者や薬局へのアンケートなども踏まえ、システムを改修し、利用者に便利な形で反映させていきたいとしている。今後の予定として、25年度は、9月から府下全域で展開を予定。また、日本薬剤師会にも協力してもらい、全国での展開を形にしていきたいということだ。
同実験により、多くの人に利用してもらうのはもちろんだが、有益な意見を提供してもらうことも目的となる。現在、お薬手帳を日常的に持参している人が40%となっているが、大阪府薬剤師会としては、残りの60%を「大阪e-お薬手帳」で補えればと考えている。
「同じようなお薬を飲んでいる人の飲み合わせなど、患者さまはお薬や名前を憶えていないことが多いです。そのため、医者や薬剤師が聞いた情報だけでは限界がありますので、お薬手帳の情報は重要です。医療情報の共有化としても今回の取り組みは有用であると考えています」(堀越氏)
今回の実験では、レセコンの各メーカーに協力してもらっているため、バージョンアップの際もフォーマットに沿って、容易にアップデートが可能であり、今後、全国展開の際もスムーズに展開できると考えている。堀越氏は、「今回の実験を機に、全国で同様のサービスを受けられる形につなげていきたい」と意気込みを見せた。