2013年6月20日8:17
「Yahoo! JAPAN」のネット基盤を活用し1万人を渋谷のキャンペーンに動員
地域と連動したO2O施策でカード利用率アップを狙う
クレディセゾンは、2011年11月にヤフーと包括提携を締結。クレディセゾンの持つ会員組織と、国内最大級の「Yahoo! JAPAN」のネット基盤を活用し、ネットからリアルへ送客するO2O(Online to Offline)施策を強化している。すでに池袋や渋谷で施策を行っており、着実な成果を生んでいる。
「池袋フェスタ」ではYahoo!ロコ上での店舗のキープ数が最大7倍に
ヤフーIDとクレディセゾンIDの連携数も約3倍に伸びる
クレディセゾンでは、2012年8月17日~9月30日まで、池袋エリアの消費拡大を目的として、同社が主催する地域活性キャンペーン「池袋フェスタ」と連動し、O2Oビジネスの可能性を検証する実証実験を実施した。池袋の大規模店舗のほとんどが参加した同キャンペーンでは、国内最大級のジオサービスである「Yahoo!ロコ」からの誘導のほか、ポスターの掲示による告知を実施しており、ポスターにはNFCタグを添付するとともに、QRコードと透かし技術の「QUEMA」を活用した「スマートポスター」を展開した。
その結果、Yahoo!ロコ上での店舗のキープ数が最大約7倍にまで伸び、ヤフーIDとクレディセゾンIDの連携数が約3倍になるといった成果があった。ただし、NFC等を利用したスマートポスターについては、利用者への認知等の部分で課題が残ったそうだ。
そのため、2013年4月12日~5月12日まで渋谷で開催した地域活性キャンペーン「街カドフェスタ渋谷」については、利用者がわかりやすいオペレーションを意識してシステムを構築した。
同企画は、期間中に対象店舗での対象のカード(セゾンカード、UCカード、セブンCSカード、エポスカード、TOP&カード)を利用して1万円(税込)以上の買い物をした人の中から、抽選で200人にカード会社商品券(総額200万円)をプレゼントした(エポスカード利用はマルイ商品券)。また、対象店舗でカード利用をした人の中から抽選で480人に、参加店舗の商品券等を進呈。さらに、Yahoo! JAPANのページに掲載されている「お得情報」をクリックし、応募した人の中から抽選で3,000人にカード会社商品券(総額300万円)をプレゼントした。
「街カドフェスタ渋谷」ではO2Oサービス「ウルトラ集客」を導入
渋谷の各施設、関連するカード会社が協力
キャンペーン実施にあたっては、各店舗への集客と販売拡大の手法として、ヤフーとソフトバンクテレコムが共同事業で展開している、ネットを通じて顧客の来店促進と購買を拡大するO2O(Online to Offline)サービス「ウルトラ集客」を導入した。ウルトラ集客は、顧客をどこに集客するか、店舗にどのように案内するのかが肝になっている。これまで、ウルトラ集客が成功事例を築いているメーカーの製品をキーにした集客サービスは、コンビニエンスストアに送客して専用端末で引換券を発券し、レジで読み取ることで商品と交換できる導線ができている。
その点、「街カドフェスタ渋谷」として展開する際、顧客に対面で説明できること、店舗でのオペレーションが簡単にできることが大事になってくる。クレディセゾンでは、パルコと西武に顧客カウンター「セゾンカウンター」を有しており、専用端末の「CouponGATE(クーポンゲート)」を設置することで、オペレーション面も課題も解決できたそうだ。
また、今回の施策を行う背景として、各施設では、副都心線の開通により、渋谷が通過駅になる危機感があったそうだ。また、過去に丸井については池袋でも合同で施策を実施した背景があり、東急百貨店もO2O施策の展開に前向きだったため、カード会社のエポスカード、東急カードと連携したキャンペーンが実現した。
今回の対象店舗は、西武渋谷店、渋谷パルコ、無印良品(渋谷西武)、渋谷ロフト、LABI渋谷、ビックカメラ(渋谷東口店、渋谷ハチ公口店)、マルイシティ渋谷、マルイジャム渋谷、東急百貨店(渋谷ヒカリエSHINQS、渋谷・本店、渋谷駅・東横店)、渋谷ヒカリエ、東急プラザ 渋谷、東急ハンズ渋谷店、SHIBUYA109、109MEN’Sの計17店舗。今回、施策を開始する各店舗とも顧客カウンターを有しており、そこで利用者にキャンペーンの説明を行うことが可能だ。また、ギフトカードの原資については、参加する小売り各社、カード会社各社で配分している。
「Yahoo! JAPAN」バナーのクリック数は20万
そのうち1万件以上が応募
利用者に対しては、「Yahoo! JAPAN」のトップページ等に掲載するバナー広告を入口として、顧客にキャンペーンの参加を促した。その結果、クリック数は20万あり、そのうち1万件以上の応募があったという。
Yahoo! JAPANでは、掲載するバナーについて、首都圏近郊のユーザーで年齢層などを絞って掲出しているが、当初は10万程度のクリックを想定していた。しかし、想定の2倍のクリックがあり、「交換できる商品もギフトカードに絞り、分かりやすくシンプルな形で施策を展開できたため、お客様に受け入れられたと考えています」とクレディセゾン カード事業部付 兼海外事業部 海外戦略部 部長 水野克己氏は説明する。当初は、スマートフォンだけで告知を行うことも考えたが、百貨店や専門店は客層が異なるため、PCや従来の携帯電話も含めてサービスを展開した。
街カドフェスタ渋谷には、渋谷の大型施設のほとんどが参加しているため、今回の企画により、クレディセゾンでは、渋谷地域の前年比110%のクレジットカード決済を目標にしている。まだ、集計結果は出ていないが、福岡や札幌では昨年実施したが、110%の売上の伸びにつながったため、今回の渋谷でも同様の効果はあると感じている。
地域フェスタについては、6月1日~9日まで、横浜えきまつり対象施設で1回3,000円(税込)以上利用すると抽選で最大3万円分の共通買い物券が当たるキャンペーンを実施。また、今年度は新宿や池袋での展開を予定している。
新たな取り組みとして、地域フェスタでの登録型のキャンペーンの実施を想定している。これは、利用者が事前に来店登録を行い、実際に登録した施設で買い物をするとポイントが貯まったり、10%オフで買い物ができる仕組みだ。
将来的にはリアルアフィリエイトを収益の柱に
決済を提供するカード会社はO2Oビジネスの強みに
クレディセゾンでは、今期から新部門となる決済開発部を立ち上げて、O2O施策、スマートフォン決済ソリューションの拡販に力を注いでいる。今後は、クレディセゾンならではのスマートフォンを活用したO2Oソリューションを構築していきたいとしている。
カード会員などをネットからリアルへ送客させる「リアルアフィリエイト」による手数料を収益の柱にすることも視野に入れているが、「ビジネスとして成り立つにはもう少し時間が必要」(水野氏)であると見ている。レジの負担感を払拭し、顧客にとって分かりやすいサービスの導線を作れればビジネスとして形になると考えている。
水野氏は、「クレジットカードは定期的なコミュニケーションをとることが可能なことに加え、最終的にマネタイズできる決済が伴うため、O2Oビジネスの可能性は十分にあると思います。小売り全体で景気が上がっていると言われていますが、来年以降の消費税増税を睨むと、消費を下支えしていくのは決済機能が付いたものであると考えています。国内では、現金で決済されている人が56%いますので、クレジットカード会社としては電子決済に結び付けることで、消費喚起に結び付けていきたいです。プッシュ型で我々が情報提供することが消費喚起の大きなファクターであると思います」と意気込みを語った。