2014年3月24日8:00
ネットでもリアルでも簡単、安全で、付加価値の高い決済を提供
「MasterCard PayPass」は将来的に「MasterPass」へ統合
国際ペイメントブランドのMasterCardは、「easier, safer, more rewarding」というコンセプトのもと、簡単、安全で、付加価値の高い決済ソリューションを提供している。同社では、デジタルウォレットサービス「MasterPass」の提供等を通じ、ネットでもリアルでも便利に決済可能な世界の実現を目指している。同社の非接触決済やウォレットサービスへの取り組みについて、数多くのモバイル非接触型サービスの事業を手掛けたMasterCard プラットフォーム部門 グループ・エグゼクティブ マン・キー・ウー氏に話を聞いた。
HCE機能を利用した2つのパイロットが動く
MasterPassは2014年夏までに20カ国以上でローンチ予定
――MasterCard様ではデジタル決済サービス「MasterPass」をはじめ、スマートフォン決済を強化されていますね。マン・キー・ウー:
弊社では「モバイル・ワールド・コングレス」開催の直近で3つのアナウンスを行いました。1つは「Android4.4(KitKat)」の「Host Card Emulation(HCE)」を利用して決済が可能になる技術を発表しました。これにより、セキュアエレメントやSIMカードがなくても非接触決済が可能になります。現在、非接触のHCE機能を使用したパイロットが2つ動いており、夏までに仕様をリリースする予定です。
次にモバイル・ウォレットサービスの大手プロバイダーであるC-SAM, Inc.(C-SAM)です。弊社では2012年にもC-SAMに投資していますが、より立場を強化するために買収しました。そして、3つめは、モバイル・アプリ内での安全な支払いを可能にする「MasterPassアプリ決済」を発表しました。
我々としては、全世界でデジタル化された決済の世界を実現するのが目標となります。モバイル、eコマース、リアルの決済などを別々ではなく、一緒になって提供していきたいです。デジタルは我々の将来でもあり、現在の戦略でもあります。今後、デジタル化した決済をどんどん強化していきたいです。
――現状のデジタル決済サービス「MasterPass」の浸透状況についてはいかがでしょうか?
マン・キー・ウー:「MasterPass」は当初、英国、アメリカ、カナダ、オーストラリアの4つで開始しましたが、2014年夏までに20カ国以上でローンチする予定です。日本でも現在、興味のある企業とお話を進めています。
――当初はオンラインの「MasterPass」からスタートされましたが、お客様の利用状況についてはいかがでしょうか?
マン・キー・ウー:採用については進んでいますが、具体的な数字は公開していません。現状、3万カ所以上のオンラインの加盟店で採用されています。
「MasterPass」はイシュアが直接クライアントに提供
トークナイゼーションにより安全な支払いが可能に
――例えば、「PayPal」、「Google Checkout」、「Amazon Payment」などのオンラインコマースサービスとの差別化はどういうところがるのでしょうか?マン・キー・ウー:
2つあります。1つめは、「MasterPass」は銀行(イシュア)が直接クライアントに提供するサービスであることです。お客様が銀行口座を持って、物理的なカードを保持しているため、理論的に「MasterPass」を使うのが自然な流れとなります。2つめは、少しずつセキュリティを強化しています。弊社では2013年6月にトークナイゼーション(カードの16ケタの数字を暗号化よりも強固な手法によって別の数字に置き換える)をアナウンスしましたが、その仕様が今年決まる予定です。そのため、安全な支払いが可能です。
――「MasterPass」は世界的にどの程度の加盟店数を目指しているのでしょうか。また、加盟店が「MasterPass」を導入する際の手間はどのくらいかかりますか?
マン・キー・ウー:加盟店数については非公開の情報ですが、現状のマスタカードのお客様と同じくらいの加盟店数を目指していきたいです。また、「MasterPass」の導入は非常に簡単です。チェックアウトボタンの設置は、APIによる提供が可能です。ボタンを押した時も従来のMasterCardのトランザクション同様となるため、加盟店にとってみれば、システムを大きく変更する必要がありません。
――「MasterPass」の特長として、自社のブランドで発行が可能な点があると思いますが、そういった企業は現れていますか?
マン・キー・ウー:MasterPassには2つオファーがあり、1つはホワイトラベルでの提供で、銀行が独自のウォレットサービスを提供されます。技術的な部分はMasterCardの責任になりますが、銀行のブランドで、その銀行のお客様にサービスを提供可能です。もう1つは、銀行に対してAPIを提供する方法です。現状、ほとんどの銀行がホワイトラベルでの提供となっています。
――現状、オンラインの「MasterPass」が中心ということですが、オフラインのサービス展開についてお聞かせください。また、将来的にMasterCard PayPassは「MasterPass」に統一されるのでしょうか?
マン・キー・ウー:現状は、オンラインの「MasterPass」と、NFCペイメントに分かれていますが、目標としては2つのサービスを統一することです。将来的には、お客様が同じ「MasterPass」のサービスを使って、モバイルペイメントもNFC決済もできるようにしたいです。そして、同じ銀行が提供している同じアプリ内で双方のサービスが利用できるようにしたいです。また、将来的に「Mastercard PayPass」は「MasterPass」に統一されます。「MasterCard PayPass」の名称は徐々に使わなくなってくると思います。
ロイヤルティやクーポンとの連携に力を入れる
NFC、QRコードなど加盟店のニーズに合ったサービスを提供
――新たに発表された「MasterCardアプリ決済」の技術について、お聞かせください。また、MasterPassと連携したCRMの展開についてお聞かせください。マン・キー・ウー:
アプリは銀行が提供します。「MasterPassアプリ決済」は、複数のモバイル・アプリで個別にカード情報を保存する必要をなくし、迅速で簡単な支払いが実現可能です。
MasterCardは、ロイヤルティやクーポンとの連携に力を入れており、昨年8月に「TRUAXIS」を買収しました。すでに米国でサービスを提供しています。MasterPassで、カスタマーエクスペリエンス、ユーザビリティを改善したいので、ロイヤリティプログラムを折り込んでいきたいです。各国ごとに銀行と話をして、ロイヤリティプログラムを追加していきたいと考えています。
――C-SAMを買収されましたが、ウォレットサービスを今後どのように展開していくかお聞かせください。また、NFCサービスについては、世界中で期待通りに普及していない状況です。
マン・キー・ウー:オンラインの世界とオフラインの世界は違います。オンラインの場合はより簡単ですが、オフラインは難しい。オフラインは、NFC対応スマートフォンの普及やセキュアエレメント、カードリーダなどが必要です。今後は「HCE」の採用によりセキュアエレメントの必要性がなくなります。ただ、NFC対応のスマートフォンとリーダライタが残ります。NFCスマートフォンについては対応端末が多くなっています。また、NFCを搭載したカメラなどの家電も増えてきました。リーダライタについても非接触対応端末は60カ国、200万のマーチャントが採用しており、成長率は2桁となっています。
MasterCardとしては、NFCなど、1つの技術だけに拘っていません。NFCはもちろんQRコードなども含め、銀行や加盟店のニーズに合わせ他の技術の提供も可能です。
※取材は「モバイル・ワールド・コングレス」にて