2014年6月27日10:00
イオン銀行が日本初、EMV仕様のATMを導入
MasterCardのEMV規格の認定を受けたことを記念し、認定式を開催
イオンフィナンシャルサービスの子会社であるイオン銀行のATMが、ICカード取引の国際基準であるEMV仕様に準拠した取引を導入し、サービスを開始した。2014年6月26日には、MasterCardの仕様にもとづいたEMV規格へ準拠し、認定されたことを受け、イオンモール幕張新都心において認定式を開催した。
EMV対応のカードは世界で12億枚発行
発行カードの半数がMasterCardもしくはマエストロ
イオン銀行のATMがEMV対応を行ったことにより、MasterCardやVisaブランドのキャッシュカード、クレジットカードでの日本円の引き出し、残高照会サービスがICカードを用いた取引で利用可能となり、高いセキュリティを確保できるようになった。
MasterCardの日本地区社長であるロバート・R・ルートン氏は、「EMVの暗号化の技術は現在130カ国で使用されています。そして世界に12億枚のカードが発行されていますが、その半分がMasterCardおよびマエストロカード(Masetro)です。セキュリティが高いことは重要で、特に日本は外国からの観光客が1,000万人を超えました。現在日本では、2020年までに外国からの観光客を2,000万人まで増やしていく方針です。外国人が日本でお金を払う際に安全な決済方法があることは大変重要です」と述べた。
日本政府観光局(JNTO)理事の神保憲二氏は、「今月17日に政府の観光立国推進閣僚会議が決定したアクション・プログラム2014、24日に発表された『日本再興戦略』改訂 2014には、外国からのお客様のキャッシングがより便利、安全、使いやすいように努力していくと記載されており、MasterCard様、イオン銀行様の取り組みは、日本全体の目標にも合致しています。外国のお客様に安心してカードをご利用いただき、口コミで世界に広がり、日本にお越しになられる方が増えるとありがたいです」と期待した。
海外からの観光客も安心・便利に利用可能
イオン店舗以外にも空港や駅などで設置が進む
イオンフィナンシャルサービスは、全国のイオングループ店舗を中心に、イオン銀行ATMの設置を進めてきた。イオン銀行ATMは、365日いつでも利用可能なイオンカードセレクトやイオンバンクカードによる取引、電子マネー「WAON」のチャージやポイント交換等に加え、提携金融機関のカードでの取引にも利用可能だ。今回のEMV仕様の導入により、海外発行カードでの日本円引き出しも可能となる。EMV仕様のATMは、イオングループ店舗に加え、成田空港や東武浅草駅などへ順次導入を進めている。
イオンフィナンシャルサービスの副社長である水野雅夫氏は、「イオン銀行のATMは全国に5,000台設置させていただいております。日本のメガバンクのキャッシュカードはもちろん約600の地方銀行のカードをお持ちの方もご利用いただけます」と話す。
また、同社は海外にも12カ国で展開しており、タイや香港、マレーシアでは上場している。海外でのクレジットカードも400万近い発行が行われているため、今回のEMV対応によりATMを便利に使用してもらいたいとしている。
なお、MasterCardでは、昨年から、ATM取引の不正利用について、カード発行会社(イシュア)やアクワイアラでIC化対応を行っていない企業に対して、ライアビリティー(債務責任)を課すルールをグローバルで適用している。MasterCardでは、国内の他の金融機関のATMについてもEMV対応を勧めていく方針だ。
EMV化によりATM利用時のセキュリティ向上を目指す
~MasterCard 日本地区社長 ロバート・R・ルートン氏
--ICカードの国際標準であるEMV規格についてお聞かせください。
ロバート・R・ルートン:EMVはすぐれた安全性を持つ決済の標準規格です。Europay、Visa、MasterCardの3社が規格してスタートしましたが、EuropayはMasterCardが買収しています。JCB、American Exprssなどのブランドも採用していますので、高いセキュリティを備えた業界標準となっています。EMVは毎回決済が行われる際に動的な認証が必要となり、不正にコピーしようとしても難しい技術です。したがって、セキュリティ・認証の観点から、もっともセキュリティの高いカード技術となっています。
決済の普及に伴い、偽造や不正が行われていますので、決済マーケット全体として不正を防止する試みが必要です。不正にあった場合、イシュア、アクワイアラも損失の負担コストがかかります。不正の負債そのものは消費者が負うわけではありませんが、巡りにめぐって消費者へも追加のコストになりますので、EMV化により不正取引を業界全体で減少させるのは、全ステークホルダーにとっていいことです。
--今回、イオン銀行でEMV化されることによるメリットについては?
ロバート・R・ルートン:外国人の訪日客数がかなり増えており、これからもさらに伸びると予想されます。海外を見ると日本よりもEMV化が進んでいる国もあります。そういった国から訪日される方にとって、日本でも同じように安全なカード取引を行っていただきたいです。イオンフィナンシャルサービス様は12カ国でビジネスを展開しており、この領域でリーダーとして先駆的にやりたいとおっしゃっていただきました。当然、イオン銀行様が最後になるわけではなく、他の金融機関も含め、将来的にすべてのATMがEMV仕様になると思います。
不正を働く側からすると“弱いところはどこなのか?”という脆弱なポイントを見つけます。EMV対応していないATMは狙われやすくなり、不正の損失コストがかかってしまうため、2020年より早いタイミングでATMのEMV対応が進むと思われます。
--MasterCard様のEMV化への取り組みをお聞かせください。
ロバート・R・ルートン:EMVを広げていく活動はBtoBの活動となります。MasterCardでは、イシュアとアクセプタンス側の技術的なサポートをしています。テストのサポートやガイダンスを行うことで、スムーズな移行を促しています。消費者からすると、“マエストロ、MasterCardブランドであれば安全だ”と感じていただけるようなプロモーションを行っていきたいです。昨年、非接触ICカード決済「MasterCard PayPass」ターミナルを国内に注力して設置すると発表しましたが、こちらも動的なデータを使っています。
我々の目標は、日本のすべてのATM、POS端末がEMV化することです。ATMの対応は順調に進むと思いますが、POSの対応については野心的な目標となります。ただ、2020年までに多くのPOSでEMV対応が進むと思います。また、コンタクトレス対応のPOSが広まればいいですね。