2015年3月10日8:40Tカード提示率8割の親和性の高さをベースに「Tマネー」導入顧客の利便性向上により1年後に全決済の20%を目指す
富士薬品ドラッグストアグループの一員であるユタカファーマシーは、近畿・東海エリアの8府県に直営店「ドラッグユタカ」162店舗(2015年1月31日時点)を展開する大手ドラッグストアチェーンだ。2014年11月25日から全国に先駆け、Tカードによる電子マネーサービス「Tマネー」を全店でスタートした。
1枚のTカードで支払い(決済)も可能に
Tマネーのチャージは近未来の売上を担保する
Tポイントの導入は、遡ること約2年半前の2012年7月。現在、来店客のT会員比率は約8割と特筆すべき高さだ。「メインのお客様は40代以上の女性ですが、Tカードの導入によって他の世代や男性にもより多くご利用いただけています」と、富士薬品グループのユタカファーマシー 営業ディビジョン 営業企画グループ グループリーダー 中根雅史氏は語る。Tポイントは当初から「貯まる」「使える」というスキームで展開。店舗スタッフのレジでの積極的な声掛けも功を奏し、現在ではほぼ毎月、ポイント付与より還元のほうがポイント数としては多くなっている。
Tカードを使うという風土が醸成された今、同じTカード1枚で支払いもできればさらに利便性が向上すると考え、導入に踏み切った。Tマネー社が2014年3月に行った調査では、Tマネーを利用したい業態の上位にドラッグストアが挙がり、潜在需要の高さがうかがえたことも後押しとなった。既存のTカードのインフラが基盤となるため、導入コストも当初見積もっていた半分程度に抑えられたという。
Tマネーのチャージは、レジにて1,000円単位で3万円まで可能だが、現在の客単価は3,000~5,000円が中心だ。店頭での月間利用額程度を入金する客が多いのではと推測されるが、リチャージが定着すれば単価増も見込まれる。また、有効期限が最終利用日から10年のため退蔵益は期待しづらいものの、中根氏は「Tマネーをチャージするということは、近未来の売上を担保するということ」と大局を見通す。
現状、来店客の約8割は現金決済だ。電子決済自体に不慣れな客も多いため、投入にあたっては店頭での案内のほか、ダイレクトメール等で地道に告知した。結果、一度試して便利に感じれば継続利用する傾向は強いという。リライトカードのように券面で残高等が確認できないものの、レシートに明記されることもあり、別段大きな問い合わせもなく順調に普及している。
「POSの処理だけですので、レジでのチャージも決済も非常に速い。お客様のレジ通過速度が高まりますので、待ち時間のストレスは緩和できるはずですし、同じ時間で対応できる人数が増えると思います」と中根氏は期待を寄せる。現段階ではまだオートチャージ機の必要は感じていないという。
多様な決済手段による利便性の提供でより足繁く既存客に
親しんでもらえる店づくり
競争の激しいドラッグストア業界。既存店舗の近くに他の出店があれば商圏は狭くなる。そのため、新規客獲得よりもむしろ、近くの既存客の利便性を高めて来店頻度を上げることが肝要となる。電子決済の利用者は来店頻度や翌月の来店率も高い傾向にあることなどから、今や集客に欠かざるべきツールとなりつつある。
同社でも2006年の「QUICPay」、2008年の「楽天Edy」導入を皮切りに、多様な決済手段を積極的に採用している。マルチ決済端末は2年半ほど前、コストがこなれてきたこともあり交通系電子マネーと「WAON」から投入を開始。交通系電子マネーは関西圏で比較的強い。同社の売上は滋賀や京都などの関西圏で全体の約6割を占めており、かつ駅前店における利便性も考慮した。顧客親和性の高いイオンのWAONもすでに80店舗超で導入し、いずれは全店で用いたいという。
そして今回のTマネー。一番手での攻めの投入だが、「日常の買い物には、チャージしてもらえばまだ弊社でしか使えない、そういった先行有利は考えました」と中根氏は自信をのぞかせる。もちろん、利便性向上のために加盟店増加やサービス拡充は歓迎だ。同氏は、「Tマネー利用率として、分母を末端の売上金額、分子をTマネー利用金額とした場合に、20%という数字が出てくると売上効果がはっきりわかるのではということで、1年後にはそこを目指しております」と笑顔を見せた。