2015年5月20日6:46世界に広がる国際標準規格「NFC」とは? 決済以外にも多くのアプリケーションを実現可能
NFC(Near Field Communication)は、近距離無線通信の国際標準規格。日本で事実上のデファクトとなった「FeliCa」や、世界中で利用されている「MIFARE」などの非接触ICカードの上位互換性となり、ポイント/会員証、家電、ヘルスケア、決済、航空・運輸など、さまざまな分野での活用が期待されている。
NFC(Near Field Communication)は、ソニーとNXPセミコンダクターズ(旧フィリップス)が共同開発した近距離無線通信の国際仕様である。NFCの開発は、2001年頃から本格化した。「非接触IC」は、カードをリーダライタにかざすだけの認証が可能であり、処理スピードの速さ、そして認証の正確性を実現している。加えて、接触型ICに近い安全性も確保で可能だ。
現在、FeliCaを使ったサービスは、交通カード、決済、セキュリティの主要分野において普及している。中でも交通と決済の領域では、「Suica」、「楽天Edy」、「nanaco」、「WAON」といったカードが国内の人口を上回るペースで普及している。
一方で、非接触ICのワールドワイド市場を見ると、FeliCaが普及しているのは、国内とアジアの香港など一部の地域で、主に「ISO/IEC 14443 Type A、TypeB」が浸透している。ISO/IEC 14443では、無線通信のプロトコル(通信規約)、電波出力などの仕様が決められており、動作周波数は13.56MHz。電磁誘導方式を用いて、ICチップがリーダライタの出力範囲内(実用上は概ね数cm以内)に入ったとき、リーダライタから電力の供給を受けて動作する。国際市場でもっとも普及している仕様は、ISO/IEC 14443 TypeAで、TypeA準拠のNXPセミコンダクターズの「MIFARE(マイフェア)」は、全世界の7割のシェアを占めている。
NFCは、FeliCaとMIFAREの上位互換の位置付けとなる。NFCの無線通信の仕様は、FeliCa、MIFARE(TypeA)を包含し、これが「ISO/IEC 18092(NFC IP-1)」として、2003年12月に、正式に国際標準として策定された。NFCには、「カード・エミュレーション」、「リーダライタ・モード」、「機器間通信」の3つのモードがあるが、それを活用したアプリケーションも徐々に生まれている。
スマートポスターはO2Oツールとしても期待
家電での活用が世界中で広がる
まず、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカードなどのアプリケーションはもちろんだが、認証分野の活用も期待できる。例えば、リーダライタ・モードを利用して、住民基本台帳カード(住基カード)、運転免許証など、個人認証ができるICカードのデータを読み取って認証に使うシーンも想定できる。
NFC搭載スマートフォンのリーダライタ・モードを活用した「スマートポスター」により、国内の至る所に「ICタグ(もしくはNFCタグ)」のタッチポイントが広がる可能性もある。代表的な活用例は、ポスターやカタログなどに添付したNFCチップにURLを仕込み、NFC搭載スマートフォンや携帯電話で読み取るとサイト誘導するアプリケーションである。具体的には、水族館や動物園などのエンターテイメントの活用、飲食店のクーポン、期間限定のセールを行うショッピングサイトなどが挙げられる。 近年はリアルの店舗にPOPを設置し、ネットに誘導して決済につなげるソリューションも生まれている。また、図書館では、書棚に添付したNFCタグを活用した図書案内サービスがスタートしている。
NFCタグとFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアとの連携も一時話題となった。リアルとデジタルを融合し、実際の行動が即座にソーシャルメディアに反映されるプロモーションを実現可能だ。
NFCでは、プロトコル・ハンドオーバーの技術を利用してペアリングを行い、データ通信はより高速のプロトコルに引き継ぐことが可能だ。この技術は今後、数多くのアプリケーション構築に生かされると考えられる。また、スマートフォンに加え、カーナビやゲーム機、テレビなどにNFCリーダが搭載されることにより、アプリケーションの幅が広がることは間違いない。すでにソニーやパナソニックといった企業は、NFCを搭載した家電製品を発売。家電での活用は世界中に広がっているそうだ。
NFCを活用した所在管理は注目の分野だ。現在、ある程度高額の商品には物品管理・不正対策としてNFCタグやモジュールが搭載されているそうだ。さらに屋外の用水路や電信柱などの劣化情報を管理することも可能になる。
また、物流分野の活用も焦点となる。例えば、UHF帯ICタグの場合、読み書きを行うリーダライタが必要だが、NFCスマートフォンを活用することが可能となる。さらに、BtoBに加え、BtoCの活用も見込めると思われる。